「プライバシーの保護と不利益な取り扱いの防止が、ストレスチェック制度を本来の目的に沿って適切に運用するための鍵になる」――。厚生労働省 労働基準局安全衛生部労働衛生課課長の武田康久氏は2015年12月15日、データヘルス・予防サービス見本市2015(主催:厚生労働省)のセミナーに登壇し、始まったばかりのストレスチェック制度の狙いと運営にあたっての注意点を解説した。

 ストレスチェック制度では、労働者数50人以上の事業所は常時使用する労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査を1年以内に1回ずつ、定期的に実施しなければならない。改正労働安全衛生法に基づいて、この2015年12月1日より義務化された制度である(労働者数50人未満の事業所は努力義務)。

 制度導入の背景には、メンタルヘルスの不調が原因で休業、退職する労働者が増えていることがある。厚生労働省の「労働安全衛生調査」によると、「過去1年間における、メンタルヘルス不調により連続1カ月以上休業または退職した労働者がいる事業場の割合」は2013年度には10%に達している。メンタルヘルスを要因とする労災補償は、2014年度の請求件数が1456件で認定件数が497件。うち99件が未遂を含めた自殺・自傷行為に至っているという。

 ストレスチェック制度では、「職場における当該労働者の心理的な負担の原因に関する項目」「当該労働者の心理的な負担による心身の自覚症状に関する項目」「職場における他の労働者による当該労働者への支援に関する項目」という3つの切り口で労働者のストレスを調査する。その上で、一定の要件に該当する労働者から申し出があったら医師による面接指導を実施すること、さらに面接指導の結果に基づき必要に応じて就業上の措置を講じることになっている。

厚生労働省 労働基準局安全衛生部労働衛生課課長の武田康久氏
厚生労働省 労働基準局安全衛生部労働衛生課課長の武田康久氏