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SaaSが透過する「日本IT界の脆弱性」見えてきた課題をいかに克服するか
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インターネット・アプリケーションによる次世代Webの実現

今や,どのWebサイトでも使い勝手に大きな違いはなくなった。トップページから入って,クリックしていくことで,必要な情報や機能にたどり着くというパターンに変わりはない。今やこの方法が一般的であり,慣れれば目的のWebコンテンツに容易にアクセスすることができる。

ところがGoogleマップのようなアプリケーションに出会うことで,全く新しいエクスペリエンスが得られるのである。Googleマップはオンラインの地図サービスで,HTML Webアプリケーションとは全く異なっている。事実,このサービスはRIA(Rich Internet Application)と呼ばれる新しいタイプのWebアプリケーションで,ベースとなっている一連のユーザー・インターフェース技術は,単なるHTMLよりもはるかに優れたユーザー・エクスペリエンスを提供することができる。一方RIAは,デスクトップ・アプリケーションのように機能が充実し,レスポンスも早く,導入も簡単なWebアプリケーションといえよう。

HTMLはインターネットの進歩に大きく貢献したが,初代のWebアプリケーション言語として,いくつかの制約もある。中でも,情報が更新されるたびに,サーバーに接続してページを表示し直さなければならないという点が最も不便な点だろう。

サーバーに依存するのではなく,ユーザーのコンピュータの処理能力やその他のリソースを巧みに活用することで,RIAでは優れたパフォーマンスを実現することができる。RIAではユーザーのコンピュータ上で演算処理が行われ,その裏では少量のデータが常にやり取りされているため,HTMLのようにユーザーが操作するたびに画面上でのレビューを行う必要がなくなる。その結果,簡単でスムーズな操作が可能になる。

RIAでは,HTMLのように文書全体を検索する必要はなくなるため,トランザクションを短時間に終えることもできるし,また,1つのアプリケーションから別のアプリケーションへの「ドラッグ&ドロップ」など,HTMLプログラミングにおける技術的な制約も克服することができる。

アクセンチュアが2005年後半に行った,2006〜2010年の新規テクノロジーに関する調査でも,Webベースのアプリケーションの使いやすさと生産性の改善,およびコンピューティング・プラットフォームとしてWebの有用性を高めるとして,RIAは重要な新規テクノロジーの上位10に数えられている。(以下の補足記事1を参照)。

RIAが最も有効活用された好例としては,GoogleマップにおけるB2Cアプリケーションの品質,レスポンス,信頼性が,RIAによって機能アップされたことが挙げられよう。ちなみにMINI USAも初期導入企業の1つである。顧客は同社のWebサイト上で,MINI Cooperを好みの仕様に変え,自分だけのドリーム・カーにすることができる。今やこのサイト経由の注文は,同社の総売り上げの半分以上を占めているという。さらに驚きなのは,オンライン画面で車をデザインした顧客が,そのデザイン通りに購入する確率が30%にも達するという事実だ。

セールス・フォース・オートメーション(SFA)の導入やインターネット上でのCRM用ソフトウェアの提供においてパイオニア的な存在であるsalesforce.comも,RIAを活用している。同社はOracle等の主要なパッケージ・ソフトウェア製品の豊富なグラフィック・インターフェースにも匹敵するソフトウェア・サービスを提供し,ユーザー・エクスペリエンスの向上に貢献している。,salesforce.comは,プロジェクト管理,スケジューリングの共有,ドキュメント管理,チーム内のコミュニケーション等,一連のチームワークプロセスの「自動化」機能アップをRIAによって実現している。この種のアプリケーションは,サーバーから入手したコンテンツの表示を主な目的としているHTMLには適していないが,RIAではアプリケーションをシームレスに配信し,ユーザーマシン上で実行させることができる。

アクセンチュア・テクノロジー・ラボは,常に新しいアプリケーションの動向を見極めることに努めており,RIAはSOA(サービス指向アーキテクチャ)のフロント・エンドに位置付けられている。SOAでは,独立した再利用可能で相互操作性のあるサービスによって,ビジネス・アプリケーションを構成する。特にハイパフォーマンス企業では,ビジネス・マネジャーがIT分野のパートナー企業が開発した再利用可能なコンポーネントを使い,新たな技術サービスを提供するというビジネス手法が普及していくと考えられる。

そうなれば,エンド・ユーザーはRIAを使用することで,膨大な技術作業を必要とすることなく,ビジネスニーズに応じたITサービスを再提供できるようになる。それにひきかえ,HTMLにはWebサービスのような複雑なコンポーネントの操作に必要な双方向性や機能性は備わっていない。

初期導入によるメリット

Webサイト上でトランザクションや,複数のステップから成る複雑な処理,たとえば,該当する情報や機能にたどり着くまでに,ユーザーが多数のコンテンツ内を経由しなければならない機能しか保有していない企業は,RIAを使用してアプリケーションを構築し直すことで大きな成果が得られる。その他にも,プロジェクト管理やビジネスインテリジェンスなどのデータ量の多いアプリケーションにも,RIAは適している。

現在RIAを構築するには膨大なコストと時間がかかるが,市場におけるRIAの価値が高まるにつれ,RIAに投資してプラットフォームやツールを改善しようとする企業が増えてきている(補足記事2を参照)。salesforce.comは,標準規格,ツール,メインストリームの開発作業が完全に整備されるまで待つことなく,RIAのような最先端の技術を自社のAppExchangeプラットフォームで利用することで,ビジネスモデルを提供するソフトウェア企業として確たる地位を確立した。同社のように,RIAを早期導入する企業は,市場での競争優位を獲得することであろう。

それでも各種のプラットフォーム上で機能するRIAを構築するには手間もコストもかかる。RIAがメインストリーム・システムの開発に取り入れられるようになるのは2010年の後半頃だろうとする予測も多い。RIA構築のフレームワークは各社ごとに異なり,ブラウザのプラグインやJavaアプレット,またはActiveXコントロールとして提供されることになるため,少なくとも初めてこのアプリケーションを実行する際にはダウンロードに時間がかかるだろう。また,他の新しい技術と同様に,現在のところ,高いスキルを備えたRIA開発者も不足している。

このように数々の問題を抱えたRIAだが,ユーザー・エクスペリエンスの向上とバックエンド・サーバーへの負荷軽減は大きな魅力であることは確かで,既にAJAXやDynamic HTML(DHTML)を使ってサイトを書き換え始めている企業もあるようだ。

アクセンチュアのCTOであるドン・リパートは,バージニア州レストンを拠点に活動している。



ブラウザーを取り巻く環境

今年前半のGoogle Spreadsheetsの発表と,Googleによるワード・プロセッサー「Writely」買収のニュースは,コンピューティングの世界を,オペレーティング・システム,特にMicrosofにとらわれないWebベースのアプリケーションに移行させようとする同社の新たな試みとして認識した者が多かった。これは,使いやすさや生産性が向上したWeb技術の新しい時代を意味する,Web 2.0の幕開けを示す動きといえよう。RIAはWeb 2.0を実現する主要な技術の1つで,インターネット,消費者および企業向けアプリケーションのみならず,ソフトウェア業界自体の進歩の上でも,新たなマイルストーンとなり得る。

業界のオブザーバーの中には,消費者が一斉にWebベースの無料アプリケーションに移行することで,Microsoft Officeは絶滅するだろうと予想している者もいる。しかしこれは,Microsoft製品の方がはるかに豊富な機能を持ち,操作性に優れているという重要な点を見落としている側面的な見解といえよう。

Microsoftが1998年に開発したOutlookのWebバージョンは,RIAのメインストリーム製品の1つだったが,Microsoftはその後も開発作業を積極的に行い,新しいWindows LiveやMicrosoft Office Liveのオンライン・サービスに継続的に投資することで,市場での優位性を確保している。このような状況を勘案すると,RIA構築のための代替プラットフォームを提供している2007 Microsoft Officeは,AJAX技法や,Adobe Flex RIA 開発プラットフォームと競合することは間違いないであろう。



新たなツールと標準規格が導入を促進

新しいツール,標準規格,開発技法もRIAの普及を後押ししている。現在,最もポピュラーなAJAX(Asynchronous JavaScript and XML)は,GoogleマップやYahooのFlickrフォト・シェアリング・サービスなどのサイトで利用されている。OpenLaszloは,RIA用のオープン・ソース開発プラットフォームの1つである(当初は,Laszlo Systemsが開発したものだが,現在はオープン・ソース・コミュニティが管理している)。

IBM,Oracle,Microsoftなどの業界大手も,RIAの普及に積極的に参画してきており,その導入はますます加速している。また,エンタープライズRIAの構築用プラットフォームを提供しているNexaweb Technologiesなどの新しい企業も参入してきた。エンタープライズ・アプリケーション・インテグレーターであるTIBCO Softwareは,既存の製品シリーズにRIAプラットフォームを統合している。



※本記事の内容は,「アウトルック日本語版 2007年1月号(Outlook January 2007,アクセンチュア株式会社発行)」からの転載になります


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