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「楽天」が打ち出すテクノロジー・ビジョンを追え!
連載第1回「何のためのテクノロジーか」
ビジネスと技術の密接な関係
――楽天におけるITやテクノロジーの位置付けについてお聞かせください。

 楽天では,昨年,今年と150〜200名ぐらいの新卒採用を行っていますが,たとえ営業職でも研修として1カ月間,イチからプログラムを書かせています(笑)。これは,「技術が分からなければ,これからこの業界で良いビジネスを創り上げていくのは厳しくなる」という三木谷の信念によるものです。このことからも,楽天にとってテクノロジーが重要視されていることは間違いありません。

 しかし,楽天がテクノロジー・ドリブンだけを考えているわけでは決してありません。私たち楽天は,あくまでもサービス業です。サービスを提供し,何よりも利用者に「便利だ」と思ってもらえることが大切です。楽天を使ってもらい,満足してもらうことではじめて,対価がいただけるわけです。

――ネット通販事業をされているのに,サービス業だと……

 確かに,インターネットを使った商品の販売やサービスの提供は,小売業のように対面による接客ではありません。しかし,システムを介して人と人のふれあいが起きています。その場合,システムが良いものでないと,対価を支払ってもらえません。サービスにシステムが織り込まれているわけです。クリックしたときのレスポンスの早さ,欲しい商品がすぐに見つかるかどうか……システムが顧客の考えているとおりに動けば動くほど,満足度は高くなります。その意味で,テクノロジーが楽天のサービスの重要な一部を担っているととらえています。

――先ほどの研修の例などもあるように,楽天においてテクノロジーの理解は重要なのですね。

 そうです。私たちはITをインフラに,インターネットでコンシューマーとサービス提供者を近づけるビジネスを展開しているので,技術とサービスは表裏一体の関係になっています。技術的な知識や実践経験がないと,次のビジネスを考えることができません。逆にエンジニアも単に言われたものを作るだけでは済みません。サービスをより良くしようという思いを根底に,テクノロジーを使っていくわけです。

「ネット企業」なんて枠はいらない
――そのサービスですが,楽天の目指すサービスの方向性として,「More Than Web」という言葉を掲げていらっしゃいます。これはどういったことを目指しているものなのでしょうか。

 これから,ユーザーが便利だと感じるサービスはどんどん変わっていくはずです。インターネット,リアルの垣根は薄れていくでしょう。例えば,店頭で一番安い商品を探すときに,少し前は家に帰ってPCで価格比較サイトを調べていたと思います。最近はちょっと進んで,店頭で携帯電話を使って調べることができるようになっています。さらにこれから先の世界を想像してみると,メガネがインターネットに接続されていて,視線の先の商品を検索サイトにクエリとして投げて価格を調べるようになるかもしれません。そうなればもう,私たちのサービスもPCという既成の枠組みで考えてはいられないのです。

 私たちは今,クレジットカード事業も手掛けています。例えば,ガソリン代を楽天カードで支払うとポイントがつき,ネットで使えます。これはユーザーにとって,嬉しいことです。私たちはユーザーが便利で,嬉しいと思うものを提供することが使命ですから,楽天カードのように,Webやインターネットという垣根を越えて,サービスを発想していく必要がある。自分たちの思考の制限をも越えなければならない。これが「More than Web」の考え方です。

安武弘晃氏 写真1
――それと少し重なると思うのですが「楽天経済圏」の構想をお持ちになっている。これとテクノロジーの関係はどうでしょうか。

 楽天経済圏とは,真ん中にIDがあり,周りに色々なサービスが散らばっていて,ユーザーは1つのIDで,Web関連の様々なサービスを便利に利用できることを意味しています。ポイントも商品の垣根を越えて使うことができます。

 しかし,楽天経済圏のメリットはポイントだけではありません。ユーザーが多くの商品から1つの商品を選ぶのは,大変です。適切なものを勧めてほしいというニーズは高まっています。そこで,楽天を使えば使うほど,ユーザーにとってベストな選択肢がレコメンデーションされ,良いサービスが提供されるということを目指しています。

 言葉を換えれば,コンシェルジュなどの富裕層向けのコストがかかるサービスを,同様の満足度で一般向けに行うことが可能にならないか,ということです。従来,高品質のサービスを享受するのに必要だったコストをカバーするのが,テクノロジーです。技術によって,パワーシフトを起こせるのです。
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連載第1回「何のためのテクノロジーか」
連載第2回「ほぼ“100%内製”の開発環境が実現するもの」
連載第3回「ネットビジネスのインフラを“原子力発電所”並に」
連載第4回「世界は『サード・リアリティ』を生み出す」
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ビジネスと技術の密接な関係
「ネット企業」なんて枠はいらない
提案型のサービスにこそ,価値がある
イノベーションを生み出す仕組み
連載第1回「何のためのテクノロジーか」
連載第2回「ほぼ“100%内製”の開発環境が実現するもの」
連載第3回「ネットビジネスのインフラを“原子力発電所”並に」
連載第4回「世界は『サード・リアリティ』を生み出す」

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