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IBMと日立が切り拓くエンタープライズサーバーの新たな世界

POWER6搭載エンタープライズサーバーが“攻め”の情報化投資を加速

企業の情報化投資に変化が表れている。複雑・肥大化するシステムの運用保守にかかるIT支出を圧縮し,ビジネス革新につながる戦略的なIT投資へと“攻め”の姿勢に転じているのだ。これを裏付けるように推移しているのが,エンタープライズサーバー市場の動向である。2007年半ばにPOWER6を搭載したエンタープライズサーバーをリリースした日本アイ・ビー・エム株式会社(以下,日本IBM)と株式会社日立製作所(以下,日立)は,顧客からの問い合わせが確実に増えてきたという。

POWER6搭載サーバーが市場に与えたインパクト

「組織内に分散・増大するサーバーを統合して全体最適化を図り,運用管理コストの低減や,新しいサービスを提供するといったビジネス強化に直結する活用事例がますます目立ってきました」(日本IBM)。

日本IBMは,2007年半ばにPOWER6を搭載したSystem pサーバー「System p 570」をリリース。ほぼ同時にエンタープライズサーバー「EP8000」の販売を開始した日立でも引き合いは強いようだ。「高い信頼性とパフォーマンスが求められるミッションクリティカルな業務を手がける企業からの引き合いが増えています。メインフレームで稼働する基幹業務システムについて,業務要件に最適なミドルウエアやソフトウエアを組み合わせて素早くシステム化できるオープン系のメリットが高いことから,金融機関をはじめとする幅広い企業で関心を集めています」(日立)。このように市場からの大きな反響について両社の意見は一致している。

図1 POWER6搭載エンタープライズサーバー

図1 POWER6搭載エンタープライズサーバー
システム構成は,4コアSMP(Symmetric Multi Processor:対称型マルチプロセサ)を必要に応じて,16コアまで拡張できる。

4GHzを超えるパワーを活用し基幹業務システムのリプレースに

POWER6が市場で注目される要因はいくつかあるが,「卓越したCPUの処理パフォーマンス」「革新的な仮想化技術」「メインフレームから引き継ぐRAS(Reliability,Availability,Serviceability)の高さ」,そして「TCO(Total Cost of Ownership)を下げる省電力性」の4つのポイントにまとめることができるだろう。

■卓越したCPUの処理パフォーマンス

なかでも,クロック周波数の上限と業界で囁かれていた「4GHz」を超えるパフォーマンスは,膨大なトランザクションをさばく必要がある様々な業種において極めて高いアドバンテージを提供。社内外に分散したサーバー群を物理的に1台に統合するという大がかりなプロジェクトにおいても,POWER6搭載サーバーは極めて高い威力を発揮する。この最大4.7GHzのクロック周波数は,POWER独自のアーキテクチャと半導体製造技術に基づくものだ。POWER6では,コア内の演算処理方法を全面的に見直して回路デザインを簡素化し,クロック周波数を向上させたテクノロジーが生かされている。

さらに,コア内に実装された10進浮動小数点数演算ユニットは,これまでのマイクロプロセサではソフトウエアで行っていた10進数から2進数への変換によって不可避的に生じる誤差の修正処理をハードウエア化。これによってボトルネックを解消し,スループット向上に大きなインパクトを与えた。メインフレームで中心的に行っていた金融計算や会計業務,さらには今後の拡大が注目される電子マネーなどの新しい分野における膨大な計算ニーズにも対応する性能を保有している。

革新的な仮想化技術に加え,信頼性や省電力性なども評価

■革新的な仮想化技術

POWER6搭載エンタープライズサーバーは,2007年後半から2008年にかけてさらにブレークしそうだ。そのきっかけになると注目されているのが,すでに開発意向表明されていた革新的な仮想化技術「Live Partition Mobility(LPM)」が2007年11月に正式にサポート開始されたことである。

LPMは,サーバーの筐体を越えて,LPAR(論理区画)を移動できる技術である。論理区画の移動に要する時間はわずかで,その間,OS,アプリケーションをまったく停める必要がない。しかも,それがファームウエア・レベルで実現されている。まさに,仮想化技術のパラダイムシフトを起こすインパクトがあり,このリリースを待ち望んでいるユーザーは多かった。

従来は,システムのメンテナンスなどに必要な計画停止時間を確保するため,同等のスペックのサーバーを2つ以上用意し,それを切り替えるための複雑な構成のクラスタを組むなど,多大な手間とコストをかけてきた。しかしLPMは,このような仕組みを使わずに瞬間的に切り替えることができる。このため,メンテナンス性と可用性の向上に加え,新しいビジネスを生み出すSOA(Service Oriented Architecture)やWeb2.0,あるいはイベントドリブンに動くアプリケーションを柔軟に処理するための次世代プラットフォームとしての期待も高まっている。

■メインフレームから引き継ぐRASの高さ

またPOWER6搭載サーバーは,ハードウエアの信頼性という点でもメインフレームクラスの高い水準をクリアする強化がなされている。POWER6プロセサにはメインフレームの設計思想を受け継ぐRAS機能が盛り込まれているのだ。そのひとつ,インストラクション・リトライ(リカバリ・ユニット)は,コアにおけるハードウエア・レベルのエラーの発生を抑える新しい技術だ。これによって,半導体の微細化に伴い今後増加すると思われる予期しない一過性のハードウェアエラーの大部分をリカバリできる。FFDC(First Failure Data Capture)もメインフレームで利用されている技術だ。システムエラー情報を発生時点で把握して重大な障害を未然に防ぐ機能である。

プロセサ以外にも,メモリおよびL2/L3キャッシュについては,POWER3から搭載しているECCと呼ばれる信頼性を高める機能が継承されている。このように,RASを高める個々の機能もさることながら,プロセサを作るための半導体製造技術からOSまでシステムとしての「全体最適化」が図られているからこそ,トータルでの信頼性が底上げされているといえる(図2)。

図2 一貫した設計思想による全体最適化=信頼性の高さ

図2 一貫した設計思想による全体最適化=信頼性の高さ

■TCOを下げる省電力

さらに省エネルギーなどで環境対応を考える企業にとっても有力な選択肢となり得る。POWER6は,POWER5の2倍以上のクロック・スピードを実現しながら同等の消費電力に抑えられている。これは,パフォーマンス向上のところで述べた回路デザインの簡素化が電流のロス・カットについても効力を発揮し,消費電力や発熱量を抑制しているためだ。データセンターやマシンルームの電源・空調設備を含めた設備投資や電力コストをセーブする場面で大きく貢献する。実際にサーバー統合により,電力コストを8割削減した企業の事例も出てきている。

企業の情報化戦略を変えるエンタープライズサーバーの嚆矢に

このようにPOWER6搭載エンタープライズサーバーは,サーバー統合や新しいビジネスを立ち上げて競合他社との差別化を図り,市場優位性を築きたいと考える企業にとってまさしく「渡りに船」だといえる。なお,日本IBMと日立では,それぞれPOWER6を生かしたソリューションをこれからも提供していくという。情報化投資の針路を“攻め”に変える製品として,今後の動向にも大いに注目したい。

※記載の社名および製品名は各社の商標または登録商標です。


お問い合わせ先
日本アイ・ビー・エム株式会社
http://www.ibm.com/systems/jp/p/
株式会社日立製作所
http://www.hitachi.co.jp/EP8000/



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