
ジュニパーネットワークスの大須賀雅憲氏は、利用者(顧客)・運用者(通信事業者)・国家の3 者を、NGNのステークホルダーとして挙げる。「利用者である企業は、ネットワークを事業インフラとして活用しているため、利便性をさらに向上させたいというニーズが強まります。高速・高機能・高信頼で、低コストの環境が要求されます」(大須賀氏)。
しかしこうしたニーズは、通信事業者にとっては大きな負担となる。高品質なサービスを実現するには、多額の設備投資が不可欠。機器単体の費用だけでなく、設置スペースや電力にかかる費用も加速度的に増加する。新たな収益源を確保するなどの対策を施さないと、適切な利益を計上することは困難だ。大須賀氏は「海外の通信事業者の中には、収益改善のために不採算地域の事業を売却するところさえあります」と語る。
国家レベルでも、今やネットワークが経済活動を支える重要な役割を担っている。例えば、日銀や金融機関のネットワークを通じて取り引きされる貨幣流通量は、年間1000兆円規模にも上る。「このためNGNには『国家経済を支えられる真の社会インフラに転換すべき』との圧力もかかっています」と大須賀氏は説明する。もちろん、全国展開を進めていくにあたっては、地域間格差の解消なども大きな課題となる。
この3 つのステークホルダーに加えて、もう1つ忘れてはならないのが地球環境の問題だ。今や世界中の国々において、環境面での規制強化が進んでいる。公的機関の入札の際に、環境への取り組みを条件として定めている国や地域も多い。
それではこれらのステークホルダーに対し、NGNはどのような解を与えていくべきなのだろうか。大須賀氏はこの点について「当社では『安心・安全』『インテリジェンス』『エコロジー』の3点が、重要なポイントと考えています」と説明する。

「安心・安全」と「インテリジェンス」については、可用性・セキュリティの確保が課題となる。大須賀氏は、「特に可用性については、ネットワークを点・線・面の3 つの側面から捉え、様々な対策を行うことが重要です」と語る。まず「点」だが、機器単体について障害時やメンテナンス時に自己で対応できることが必要になる。そこで同社のルータ製品には、稼働中にソフトウエアが更新できる機能や、機器が停止してもルーティングが止まらないような機能が装備されている。
次に「線」。ルータ間を結ぶ部分では、回線障害時の迂回機能や、障害の影響を最小限に止める機能が必須となる。これについては、GR やBDFなどの技術で対応する。最後の「面」については、独自OSの「JUNOS」やMPLSなどの技術を活用し、ネットワーク全体でエンド・ツー・エンドの可用性を実現している。
セキュリティにおいては、個のレベル・組織のレベル・会社のレベルの3段階の取り組みが必要になる。「当社は、市場で高いシェアを誇るファイアウォール装置のほか、IPS装置やSSL-VPN装置を提供しています。これらの機器によって、3段階それぞれのレベルに応じたセキュリティを実現します」と大須賀氏は説明する。
3番目のエコロジーを考えるうえでは、まずエコロジーを「ソフトエコロジー」と「ハードエコロジー」の2つに分けて考えるべきと大須賀氏は指摘する。「ソフトエコロジーとは、企業活動の効率化など人の活動にかかわる部分。これに対してハードエコロジーは、消費電力やスペースの削減など機器にかかわる部分です」(大須賀氏)。ここでの問題は、ソフトエコロジーとハードエコロジーが相反する関係にある点だ。例えば、ソフトエコロジーの例としては、時間的なコストの削減、労力的コストの削減、心理的コストの削減などが挙げられる。具体的には、海外拠点とのミーティングにテレビ会議システムなどを使用して時間や費用を節約する、企業が望むアクションをすぐに実行に移せる環境を構築するなどのケースが考えられる。
「ところがこのようなニーズに応えようとすると、必然的に大型のネットワーク機器が必要になります。そうした装置は、消費電力が大きいうえに重量もある。台数も1台では済まないので、投資金額も増加します」と大須賀氏。ソフトエコロジーの要求を満たそうとすると、インフラに多くの負担がかかるという問題が出てきてしまう。

高い省電力性・省スペース性を備えたコアルータ「T1600」。1.6Tbpsあたりの電力消費量は、
市場における従来製品の半分以下に収まっている

ジュニパーネットワークスでは、このような省電力のための課題を解消する製品群を提供している。例えば、データセンタなど向けに提供されているイーサネットルータ「MXシリーズ」だ。今年9月に発表された最新の「MX480」を3年間にわたって運用した場合、競合製品に比べて11 万キロワットもの電力を削減することができる。
また、こうした高い省電力技術は、MXシリーズ以外の製品にも生かされている。フラッグシップモデルの「T1600」は省電力だけでなく、省スペース技術も盛り込まれる。縦幅が標準幅ラックの2分の1というコンパクトなサイズであり、重量も軽量に仕上がっている。「重量級のコアルータを複数台設置しようとすると、床加重が施設の設計許容値を超えてしまう場合もあります。その点、T1600ならこうした問題は生じません」と大須賀氏は説明する。消費電力も非常に少なく「T1600を10年間運用したと想定した場合、電力コストで約138万ドル、ラックスペースで約104万ドルの削減が可能」と大須賀氏。IPバックボーンを従来製品で構築した場合とT1600だけで構築した場合を比べると、奥多摩の水力発電所相当の電力削減につながるとのことだ。
「製品の省電力・省スペース化を推進し、エコロジーへの取り組みを支援することが、メーカーの果たすべき役割だと考えています。当社では今後もこうした方針に基づく製品を提供し、NGNの実現を進めていきます」と大須賀氏は講演を結んだ。

ジュニパーのフラグシップモデル「T1600」とイーサネットルータ「MX480」。独自の省電力技術が高く評価され、
「INTEROPBEST OF SHOW AWARD」のグランプリと特別賞を受賞している