総務省
総合通信基盤局長
寺﨑 明氏
NTT
常務取締役 技術企画部門長
次世代ネットワーク推進室長兼務
橋本 信氏
KDDI
執行役員 技術渉外室長
沖中秀夫氏
ソフトバンクBB
ソフトバンクテレコム
ソフトバンクモバイル
執行役員 技術統括
ネットワーク本部 本部長
牧園啓市氏
初日の10月3日は、経営やビジネスの側面からNGN の最新動向を解説するBusiness Day。基調講演では、電気通信分野における政策動向を総務省幹部がポイントを絞って解説。その後、通信事業者3 社がそれぞれのコンセプト、ビジネスモデル、サービス内容をプレゼンテーションした。
NGN SummitのBusiness Dayは、基調講演「NGN時代に対応した電気通信分野の政策動向について」で幕を開けた。スピーカーは、総務省の寺﨑明氏。冒頭、スクリーン上にグラフを示しながら、電気通信事業分野の現状を「電気通信サービスの加入者数はブロードバンドとIP 電話で伸び続けているのに対し、移動電話は飽和しつつあります」と語り、ブロードバンドの中でもxDSLは減少、FTTHは急成長と好対照になっていることを説明した。また、2007年のxDSL月額料金は2001年の約3分の1にまで下がり、「通信速度あたりのブロードバンド料金は、今や世界で最も低額になっています」と指摘した。
このように国内では成長著しい電気通信事業も、ICT産業全体としての国際競争力に関しては、多くの課題が残っているようだ。情報化投資の伸び率では、米国が日本を10年以上連続して上回っているのに加えて、情報機器の世界市場における日本メーカーのシェアと輸出額は、年々低下の一途をたどっている。携帯電話などの売上高も、国内主要メーカーの合計額が、ノキアなど海外主要メーカーの1社分にも及ばない状況だ。
一方で、ネットワークの構造は集中制御方式の交換網から非集中・分散制御方式のIPネットワークへと移りつつあり、ブロードバンド化、IP化、モバイル化が並行して進んでいる。「こうした状況の変化に対応して、電気通信事業分野における日本政府の競争政策も変わってきました」と寺﨑氏は言う。電電公社が民営化された1985年当時は「独占から競争へ」だったが、NTT再編を間近に控えた1997年からは「公正競争の確保・促進」へと変化。2004年からは、多くの項目が「事前規制から事後規制」へとシフトしている。
さらに、2006年9月19日に総務省が発表した「新競争促進プログラム2010」では、ブロードバンド市場全体の包括的な競争ルールが打ち出されることになった。ブロードバンドゼロ地域の解消が実現する予定の2010 年までに、オープンで非集中・分散制御方式のIPネットワークに公正な競争をもたらすために、ルールを見直すことが必要になると考えられたからである。
この中の10 の個別プログラムのうち、寺﨑氏は「指定電気通信設備制度(ドミナント)規制の見直し」「NTT東西の接続料算定方法の見直し」「ネットワークの中立性の在り方に関する検討」の3つを、NGNに関係するものとして挙げた。寺﨑氏は「キーワードとなるのはネットワークの中立性です」と語り、ネットワークコスト負担の公平性とネットワーク利用の公平性の両方を確保することが、今後のブロードバンド政策の基本になるとの見方を示した。
同じ趣旨から、NTTが2007年度下期から商用サービスを開始しようとしているNGNには、新規参入を容易にするための公正競争ルールが適用される見通しだ。具体的には、SNI (アプリケーションサーバー・網インタフェース)、NNI (網間インタフェース)、UNI (ユーザー・網インタフェース)における接続ルールが、2007年秋に情報通信審議会に諮問され、2008年3月に同審議会から答申が得られる予定になっている。
基調講演を締めくくるにあたって、寺﨑氏は平成20年度ICT政策大綱についても言及。課題の解決に向けて、「国際競争力の強化」「ICT分野の構造改革」「情報通信に係る国際戦略体制の抜本的強化」「u-Japan政策による地域活性化」の4主要政策パッケージを進めていく方針を明らかにした。「問題はありますが、日本には潜在的な力があります」という言葉で、寺﨑氏は講演を終えた。
続いて登壇したのは、NTTの橋本信氏。「NTTにおける次世代ネットワーク(NGN)の取り組みについて」と題した講演で、橋本氏は「通信キャリアの持つ伝統的な良さを残しつつ、インターネットの自由度も担保します」と、ITU-T(国際電気通信連合電気通信標準化部門)とIETF(Internet Engineering Task Force)の両方に、精力的に協力していくと語った。
続いて、2006年12月に始まったフィールドトライアルの進捗状況を報告した。当初は10 社だった参加企業も、現在では30社に拡大。家庭や事業所を含む500カ所で、ホームゲートウエイ(HGW)を介した家庭内LANとの接続トライアルも行われている。また、NTTの常設ショールームでは、商用サービスのイメージとして、NGN for Society(介護支援や遠隔医療支援システムなどの公共分野)、NGN for Life(地上波デジタル放送IP再送信)、NGN for Business(高精細なハイビジョンのテレビ会議)などのデモンストレーションが行われていることも紹介した。
KDDIの考える「FMBC(Fixed Mobile Broadcast Convergence)」は、固定通信と移動通信の融合にブロードキャスト(ワンセグ)を加えたものである。このFMBCとの親和性が高い次世代ネットワークのコンセプトとして、2005年に同社が打ち出したのが「ウルトラ3G構想」である。KDDIの沖中秀夫氏は、「どのアクセス網からも接続でき、どのアクセス網にも同じサービスを提供することがウルトラ3G の特徴です」と強調する。
KDDIが手がけた、モバイルWiMAXフィールドトライアル(大阪市で実施)、IPover 地上デジタル放送(慶応大学・FM東京と共同開発・検証)、通信・放送連携サービス輻輳(ふくそう)制御(NHK放送技術研究所と共同開発)の3 事例を紹介。既に実用レベルに到達していることを、聴衆に印象づけた。
なお、現在同社が提供しているFMBCサービスでは、コンシューマー向けにはコンテンツマルチユースの多様性とサービスクロスセルの便利さを、ビジネス向けにはICTサービスをワンストップで提供できる点をアピールしている。
NGNという言葉こそ使わないものの、ソフトバンクグルーブ(ソフトバンクBB/ソフトバンクテレコム/ソフトバンクモバイル)も、ブロードバンド、固定通信、無線通信を統合する次世代ネットワークの実現に積極的に取り組んでいる。ソフトバンクグループの牧園啓市氏は、「次世代ネットワークのインフラには、ユーザー視点、オープンなアーキテクチャーとネットワーク、グローバルスタンダードへの適合が求められます」と語り、インタフェースだけでなく、網内でもオープンさが求められることを強調した。
講演では、同グループの次世代ネットワーク・サービス例として、家庭向け防犯・家電制御と家庭向け映像配信・放送を紹介した。携帯電話機を本人の認証鍵として利用する「SynLock」や、ヘルスケアサービスの「Life Carrier」も、サービス内容としては次世代ネットワークに向けた予行演習の色合いが濃いと思われる。
このほか、日経コミュニケーション編集長の林哲史が「NGNへの期待と課題―― 企業ユーザーが望むNGNの姿とは」と題して講演。同誌の読者モニターアンケート(2007年6月実施)と企業ネット実態調査(同8月実施)の結果を基に、NGN登場の意味・意義とNGNサービスの課題について語った。