
サーバー製品やPC、ネットワーク機器などのメーカーとして知られる富士通だが、ネットワークサービス事業者としても長い歴史を持つ。同社のサービス「FENICS」が初めて市場に登場したのは1985年のこと。「富士通のバックボーンとキャリアの回線を接続し、付加価値を付けてご提供するのがFENICS のビジネスです」と富士通の川妻庸男氏は語る。
NGN 時代を作る大きな流れとして、川妻氏は「端末や使い勝手の革新」「ネットワークを流れるものは、よりリッチに」「インターネット・イントラネットの境界がなくなる」の3点を挙げる。「現在は携帯電話やPCが主流ですが、そのほかにも様々な形の端末が登場します。また、NGNの高速性や品質を生かした新しいサービスも生まれてくるでしょう。ビジネスの現場においては、会社の中、外を意識せずに仕事をしたいというニーズも強まってきます」(川妻氏)。

こうした環境変化は、現時点でも様々な形で目にすることができる。川妻氏は富士通が手掛けた商談の中から、その事例をいくつか披露した。
「例えば、大型ショッピングセンター内で実証実験中の装置『UBWALL』(ユビウォール)では、大型ディスプレイパネルと情報提供機能を施設内の案内ボードに内蔵。普段は宣伝映像などが流れていますが、ユーザーの操作によって店舗の情報やバスの時刻表などを表示できます。また、携帯電話をUBWALLにかざして、地図やクーポン券を取り込むことなども可能です」(川妻氏)。
一方、ワンセグ専用配信システム「スポットキャスト」は、微弱電波で半径1 〜2m 以内に限定した放送が行える。この技術を応用すれば、美術館で展示物の解説放送を流したり、チェーン展開を行っている企業が自社店舗内で専用コンテンツを放送したり、様々な用途が考えられる。あえて電波をあまり飛ばさないことが、このケースでは逆にメリットになるわけだ。
さらにユニークなのが、機械設備の保守業務などに威力を発揮する「ウェアラブル情報装備」だ。ヘルメットに装備されたヘッドマウントディスプレイと骨電動マイク、手元のハンディタイプのポインティングデバイスなどを備えることで、工事現場などでも、身軽な作業を実現。
医療分野向けの技術では、人工音声ではなく自分の声を使った会話デバイスの研究なども行われている。この事例では、あらかじめ自分の声の波形を登録しておき、そのデータを使って発声させる。病気などで会話が困難な人でも、自分の声によるコミュニケーションが可能だ。
このように技術やサービスの進化によって、端末の形も大きく変わっていく。川妻氏はブロードバンド普及期によく言われた「ラストワンマイル」をもじり、「人間の体に一番近い部分、つまり『ラスト30cm』で今までにない変革が起きます」と説明する。

1985年のサービス開始以来、時代のニーズに応じて進化してきたFENICS。FENICSIIでは、
ネットワーク以外の領域にもソリューションを拡げていく

富士通が提供するFENICSも、このような変化を受けて新たなステージ「FENICSII」へと進もうとしている。川妻氏はFENICSIIのポイントとして、「ユビキタスオリエンテッド」「グローバルマルチキャリア」「パーフェクトリモート」の3点を挙げる。
「まず、ユビキタスオリエンテッドでは、先に触れたような新しい端末の開発を推進していきます」と川妻氏。例えば、医療機関向けに、ベッドサイドで使われる情報端末では、看護師や患者の使い勝手を考慮して、キーボードレス化やテレビ機能の内蔵、消毒処置が可能であるなどの機能が盛り込まれている。「この例が示すように、端末が利用されるシーンやそこで必要とされる機能を踏まえた開発を行っていきます」(川妻氏)。
2点目のグローバルマルチキャリアでは、国内の大手キャリアはもちろん、海外のキャリアとも連携を強化。現在も世界167カ国・地域に対して、インターネットVPNサービスを展開。「ビジネスのグローバル化は一段と加速しています。中には小規模な海外拠点もあるでしょうが、インターネットVPNならそうしたところとも安価に接続が可能です」と川妻氏は語る。また3 点目のパーフェクトリモートでは、遠隔制御の技術を使って各種機器の設定やセキュリティの確保などを実現する。リモートで管理することにより、現場へ出向く手間が省け、グローバルに均一のサービスを提供できる。

川妻氏はこの3つのポイントが反映された事例として、新サービス「パーソナルアクセスソリューション」を挙げる。このサービスでは、ユーザーがUSBキーをパソコンに接続すると、自動的にFENICSセンターにアクセスし、認証や環境チェックなどが行われる。USBキーには指紋認証装置が内蔵されているため、ID・パスワード方式のような煩雑さがなく、ITに詳しくないユーザーでも簡単にシステムを利用できる。システム側で、利用できるアプリケーションを制限することも可能だ。川妻氏は「例えば、複数の金融機関の資産情報をネットで照会し、その情報をテレビ会議システムでフィナンシャルプランナーと共有してコンサルティングを受けるなど、様々な利用方法が考えられます」と説明する。
この例でも分かる通り、FENICSIIは従来のFENICSとは大きく発想が異なっている。「拠点と拠点をつなぐことが、これまでのFENICSの役割でした。しかし、FENICSIIでは『人とビジネスをつなぐ』ことがテーマです。今後はネットワークだけでなく、その上のアプリケーションや端末も含めて、ワンストップのサービスを提供します」と展望を語る川妻氏。富士通のバックボーンも「NGNに対応すべく強化・拡充を図っていく」と締めくくった。

「人とビジネスをつなぐ」をテーマとして掲げるFENICSII。
国内外のキャリアとも連携を強化し、利用者に最適なサービスを提供する