
経営革新コンサルティンググループ
シニアコンサルタント
前田 浩樹 氏
企業力を強化し、継続的な成長を実現していくためには、どのような経営手法が有効なのか──この課題を克服する有効な手段として注目されているのがITシステムを活用した「経営の可視化(見える化)」である。
NEC総研の前田氏は、ソリューションパートナーとして多くの企業をサポートしてきた経験から、「見える化すべき経営の全体像を、きちんと把握しておく必要がある」と指摘する。まず1番目のポイントは、組織がどこへ向かいたいのかを明確にすることだ。将来のあるべき姿、なりたい姿をきちんと見極めて、ビジョンや戦略を立てるのである。2番目は、あるべき姿、なりたい姿へどのようにして到達するのかを考えることだ。つまり、ビジョンや戦略実現のシナリオを描き、戦略目標に落とし込むのである。そして3番目は、描いた戦略実現シナリオを、どのようにしてやりきるかだ。実行プロセスを追いかけ、検証できる状態にするのである。この3つのステップを全体像として把握しておくことが、見える化経営を実践するうえでの重要なポイントだという。
では、実際に戦略実現のシナリオや戦略目標は、どのようにして組み立てれば良いのだろうか。前田氏は、企業の将来の姿を明示したものとして、通常3年程度のサイクルで策定される中期経営計画を挙げている。つまり、3年後の自分たちの姿をイメージすることではじめて、そこに到達するための仮説設定ができることになるというのである。
戦略実現のシナリオを描くには、複数の重要成功要因間の関係連鎖に着目することが重要だという。具体的には、人やモノ、金といった経営資源を業務プロセスの改善などに投入し、顧客への訴求や生産性の向上を実現することで、利益の増大を実現するというのが、戦略実現までの流れになる。この一連の流れを解明し、戦略実現のシナリオを作る上で有用な手法の一つとして前田氏が挙げたのが、「バランス・スコアカード(BSC)」だ。
BSCでは、「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」という4つの視点からなるフレームワークで戦略マネジメントを行う。戦略実現シナリオを構成する重点戦略目標を、この4つの視点で特定していくのである。その上で戦略目標間の因果関係を分析し、各要因がどのように関連して戦略を実現していくのかを一覧図に表した戦略マップを作成する。この戦略マップで戦略の全体像が可視化されることによって、全体最適の視点での事業課題が明確になるのだという。前田氏は、コンサルティングをした食品メーカーの例を挙げ、同社が戦略方針として掲げた「商品力強化の実現」に向けた戦略マップを紹介した。
戦略を実現するには、何と言っても現場の実行が鍵になる。現場が何をどこまでやるべきか共通の認識で実行に臨むこと、実行の過程でどこまで達成されているのかを事実として把握できることが最大のポイントである。そのためには、「計画・目標」「実行」「診断・評価」「統制」といった各フェーズを貫く、経営の共通基準が必要なのである。この共通基準となるのが、経営指標(KPI:Key Performance Indicator)だ。
ここで前田氏は、製造業を例に、各部門におけるKPIについて解説した。組織という観点から見ると、経営トップによる全社的な経営戦略、ミドルマネジメントによる部門レベルの戦略、そして現場担当者による施策実行レベルと、それぞれの戦略やKPIが存在する。また、業務という観点から考えると、財務、人事、生産など、やはりそれぞれの業務ごとに目標やKPIが存在することになる。
前田氏は、「一般的には財務関係のKPIに比重が置かれがちですが、見える化経営では、人事や生産など、業務プロセスのKPIに注目することが重要なのです」と強調した。例えば、生産システムから生ずる結果を定量的な指標でモニタリングすることで、生産阻害要因の早期発見や迅速な対処が可能となり、継続的に利益を生む工場にしていくことができるのだという。シナリオに沿った適切なKPIのチェックがプロセスの改善を生み、最終的な戦略実現に結びつくことになるわけだ。
ここで前田氏は、サウスウェスト航空の例を紹介した。同社では、戦略目標として素早い地上作業を掲げ、地上駐機時間というKPIを設定した。その結果、業務プロセスの効率化が進み、定時運行の実現や航空機の稼働率向上を実現したという。また、企業ビジョンを全社的に展開する方法として、カルビーの例を挙げて説明した。同社では、全社で1枚、カンパニーごとで計10枚、部門ごとで計50枚、そして社員ごとで計1300枚と、4つの階層ごとに戦略マップを作成している。そして各階層でKPIを設定し、ビジョンの実現を目指しているのだという。
見える化経営においては、戦略目標を立て、目標値を設定し、その目標値をクリアしていくという、すべての過程が重要な意味をもっている。最終的に実行した結果を検証して、次のステップにつなげていく必要があるからだ。つまり、戦略実行のマネジメント(Plan→Do→Check→Actionを回しきること)が重要なポイントとなるのである。
「PDCA」を回しきるには、KPIに基づいた実行モニタリングが欠かせない。目標の進捗状況を客観的な数値として把握するうえでITが重要な役割を果たすことになる。前田氏は、KPIをモニタリングするツールとして「QPR」というソフトを紹介。全社規模や部門レベルなど、さまざまなKPIのモニタリングに活用できる点を強調した。
最後に前田氏は、「見える化経営を実現するためには、2つの経営プラットフォームが必要不可欠です。ひとつは組織全体の共通言語となる戦略マネジメントのしくみ、もうひとつは、それを支えるクォリティの高いITインフラです。NECグループの特徴は、この2つの視点から、リアルタイムで経営情報を活用するという独自のソリューションをご提案できることです(図参照)。コンサルティングサービス、システム構築サービス、アプライアンス製品、ソフトウェア製品群から構成される豊富なラインナップ、そして豊富な実績をベースに、最適な見える化経営の実現をご支援いたします」と述べて、講演を締めくくった。






