攻めのカイカクが会社を飛躍させる 経営情報化サミット2006
現場のバラバラ感がIT活用の障壁


KAINOSHO
代表取締役
甲斐莊 正晃 氏



冒頭で、甲斐莊氏は数十秒の映像を見せた後、「多くの人に同じ映像を見せたとしても、何を意識して見ているかによって、物を認識する性能が大きく影響される」という心理学者の説を紹介した。

「意識が人間の認識能力に影響を及ぼすということは、本日のテーマである業務改革にも共通して言えると思います。業務改革は、業務プロセスの設計と情報システムの2本柱で動いていますが、それを動かす社員の意識によってその成果は異なることになります。そこで社内を見渡してみると、社員にはそれぞれの目標があり、個々の意識がバラバラになっていることがあります。こうしたバラバラ感は、IT導入においても少なからず影響を及ぼすことになります」(甲斐荘氏)。

今やシステム構築は全業務を対象とし、数億円から数十億円の投資が必要になる。当然のこと、経営層は業務の効率化だけでなく業務改革で効果を出して欲しいと願う。そのため、情報システムの担当者は現場に出向き、社員に導入の効果について説明しなければならない。ところが、バラバラ感が漂っている現場では、担当者の努力も報われない結果となってしまうのだ。

●改革実現の責任はシステム担当者だけの問題ではない

改革は左脳と右脳の共同作業

では、業務改革や意識改革をどのように実現させればよいのか。「トップダウンによる北風政策ではなく、現場が自ら改革に取り組む太陽政策にしなければならない」と、甲斐荘氏は自らの体験をもとに紹介した。

まず、現場の声に耳を傾け、いくつかの共通した意見を抽出した。それは、「最近、仕事にやりがいが感じられない」「上から与えられる目標の意義が理解できない」「目標がすべて数値化されていて、負担感が強い」というものだった。

一方で「自分のやったことが、人に評価してもらい喜んでもらえたとき」「特にお客様に褒めてもらったとき」にやりがいを感じることも分かった。しかし、社内には顧客と直に接しない業務もある。

そこで、それらの人たちが自分のやっていることが顧客の笑顔につながっていると理解できるようになれば、改革は強力に推進されるだろうと考えたという。「改革といえば、これまでは左脳(論理)が先行していましたが、現場はそれが好きか嫌いかといった右脳(情緒)で理解していたのです」(甲斐莊氏)。

改革活動では左脳と右脳の両面で社員に説明することが重要だという。


インナーブランディングとその効果

これらの結果から、甲斐莊氏がたどり着いた結論とは、「お客様の喜び(=企業ブランド価値向上)を目標として、全社員が一丸となり取り組む意識&業務改革活動」だ。顧客に喜んでもらえるということは、そのサービスや商品が評価されたということになり、結果として企業のブランド価値が高まったことになる。

「実は、このような活動はインターナルブランディングとかインナーブランディングといった言葉で、業務改革というよりはマーケティングの世界でブランド価値を社員に伝えるために、米国で1990年頃から行われていたのです」(甲斐莊氏)。

国内でも一部の大企業で実際に行われていたが、社員を対象とした啓蒙活動のために、なかなか外にまで漏れ伝わることがなかった。

現在、企業が取り組んでいる改革活動といえば、業務価値の向上を目指す「業務改革」、社員の意識向上を喚起する「意識改革」、企業価値の向上を図る「企業ブランド改革」の3つが挙げられる。しかし、これらの活動はどれもバラバラに行われているのが実状のようだ。

インナーブランディング活動には、これらの改革活動を統合させ、社員満足度と企業利益を向上させる効果がある。すべては社会と顧客への提供価値向上のためと、社員の心を1つにできるからだ。実際にインナーブランディング活動で確認できた効果には、「企業風土が顧客志向に変わる」「商品価値がコストを掛けずに顧客に伝わる」「報酬制度を変えずに社員の意欲が向上する」「業務改革やIT活用を全社員に定着できる」「合併や事業統合後の社員意識を統一できる」の5つがある。

●IT構築とインナーブランディングの関係性

ITとインナーブランディングは補完の関係

具体的なインナーブランディング活動の進め方として、次の4つのステップが考えられる。現状の社員意識と企業内コミュニケーションのレベルを調査し、活動の達成目標を設定する「現状調査と活動目標設定」。経営方針、競合環境・顧客ニーズから、目指すべきブランドイメージをデザイン化する「ブランド目標のデザイン」。ブランドイメージを実現するために、社員が果たすべき役割を明確化する「全社員による目標共有」。目標の実現に向けた施策の立案から、社内コミュニケーションの活性化で、協力関係を強化して実現に結びつける「業務改革活動への展開」だ。

では、インナーブランディングとIT構築との関わりについてはどうなのか。結論として、情報システムを活用した業務改革を進めるうえで、インナーブランディングは社員の意識付けに大きな効果をもたらす。ただし、そのためには、ITを活用した社内のコミュニケーションをより活性化させなければならない。つまり、インナーブランディングとIT活用は、相互に補完しあう関係にあるということだ。

「インナーブランディング活動が、今までの改革活動に取って代わるというものではありません。従来の改革活動を現場により浸透させるための触媒なのです。これを機に、みなさんもぜひインナーブランディング活動を取り入れてみてください」と甲斐莊氏は締めくくった。

現在KAINOSHOでは、インナーブランディング活動の普及を目標に、現状の意識調査から業務改革までのコンサルティングサービスのほか、オープン形式、企業別、新入社員向けなどの研修やセミナーを幅広く開催している。


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