日本中央競馬会(以下,JRA)は,勝馬投票券(以下,馬券)を購入する電話投票システムのうち,プッシュホンによる音声応答を行うARS方式について,いま開発中の次期システムでIP電話に対応する方針だ。この次期システムでは,日立の統合システム運用管理「JP1」を活用して,数十台のサーバを集中管理する。障害発生時にはサーバの部品レベルまで特定した状況把握ができるため,ARSを支えるシステム全体の信頼性向上を実現できる。運用管理の効率化とシステムの信頼性向上を支援するJP1は,IP電話対応に伴うシステムの集約と集中管理という大きな流れを支えるうえでも,今後ますます重要な役割を担っていく。
システム統括部
トータリゼータ課
課長
宮本 行一氏
日本の競馬ファンは1,000万人とも言われ,約3兆円の年間売上を有する国民的レジャーとして定着している。幅広い層が競馬を楽しむようになったきっかけのひとつが,30年前にスタートしたJRAの電話投票システムである。競馬場へ行かなくても馬券を購入できる利便性の高さから,約250万人(2005年末)が会員登録をしている。現在の電話投票システムは,3つの投票方式をサポートしているが,最も歴史が長いのが,プッシュホンと音声応答で投票するARS方式である。ほかに,専用端末を用いるPAT方式と,パソコンや携帯電話のインターネット接続を用いるIPAT方式がある。
「電話投票の歴史は,チャネル拡大の歴史です。お客さまが利用しやすく買いやすい環境を追求して,いろいろなシステムを開発してきたのです」と宮本氏は言う。
利用者の利便性向上と同時に,システムの運用コスト削減も重要なテーマであった。
たとえば,2001年にサービスを開始した第6次ARSシステムでは,システムコストを従来の約8分の1へと大幅に削減することに成功した。
「第5次ARSシステムまではFT(フォールトトレラント)型の汎用機を使っていたのを一新して,アドバンストサーバ「HA8000」の並列システムで同等の信頼性と性能を維持するシステムに作り替えたのです。ソフトウェアとハードウェアを密接に組み合わせてシステム全体として信頼性を高める日立の提案を採用したのですが,当初の想定通りに,高い信頼性を維持することができました」と福田氏は語る。
システム統括部
トータリゼータ課
開発係 主査
福田 敬氏
2007年末から2008年初頭の全面サービス開始を目標に開発中の第7次ARSシステムでは,IP電話からの投票もできるようにして,利用者の通話料負担のさらなる軽減を目指している。すでに1割を超える一般世帯にIP電話が導入されており,電話のIP化は大きなトレンドだ。チャネル拡大というJRAの使命から言っても,次期ARSシステムでは,IP電話対応が必須だと判断したものだ。
IP電話対応は,システムコストを軽減するうえでも効果がある。IP電話は全国一律料金なので,受信は集中処理が可能であり,現在,全国16ヵ所に分散配置しているデータセンタを集約し,より効率的なシステム配分/人材配分を行うことができる。
「一方で,システムを増設すれば,運用管理の負担が増大します。管理するサーバ台数が2倍になったからといって,データセンタの要員を2倍にすることは許されませんから,障害検知,監視,保守などの作業をこれまで以上に効率よく行う仕組みが不可欠になってきました」と灘吉氏は指摘する。
したがって,第7次ARSシステムの選定においては,IP電話対応,集中管理による信頼性の維持,処理性能の3つが選定のポイントになった。日立の提案は,HA8000と統合システム運用管理「JP1」を組み合わせて,高度な集中管理をリーズナブルなコストで実現する点で評価されたのである。
システム統括部
トータリゼータ課
開発係
灘吉 隆也氏
第7次ARSシステムは,2006年5月に試行サービスを開始し,システムのブラッシュアップを重ねたうえで,2007年末から2008年初頭に本格スタートする予定である。1年半余りの試行期間の後に,現状では全国15ヶ所に合計約800台のサーバを分散配置したシステムとなっているが,可能であれば拠点の集約を進めていくことも検討している。
ARSシステムに普遍的に求められる最大の要件は,何といっても信頼性だ。
「ここで言う信頼性とは,ピーク時への対応ができることを意味します。電話投票は,発走予定時刻の5分前というように締切り時間が明確に決まっているため,締切りの直前には1時間あたり400〜500万に相当するコールが集中します。このピーク時にも性能を維持し,サービスを止めないことが一番の要件なのです」と福田氏は強調する。
そこで活躍するのが,サーバのハードウェア稼働状況や障害監視などの一括管理を行うハードウェア運用管理「JP1/ServerConductor」だ。
データセンタ内にあるすべてのサーバの稼働状態を監視して,1台の管理コンソールで確認できる。障害が発生すると,管理コンソールに表示することで保守要員に通知する。障害発生箇所をサーバの部品レベルまで詳細に検知できるため,オペレータは障害のレベルをひと目で把握して,サーバを止めるのか縮退運転を続けるのかなどを判断できるのだ。
「障害が発生したら即座に気づかせ,状況分析のための情報も提供してくれるのがJP1。運用管理者はいち早く対応でき,システム全体の可用性を上げることができます」と福田氏は言う。
JP1/ServerConductorは,土曜日曜のシステム稼働開始・終了時に,すべてのサーバの一括電源オン/オフをするときにも用いる。締切り時刻と同様に,電話受付の開始時刻も厳密に決まっているだけに,一括電源オン/オフは必須の機能である。

また,日常の保守作業では,ソフトウェア資産・配布管理「JP1/NETM/DM」を活用している。アプリケーションプログラムの一括配布のほか,各サーバをリモートコントロールで操作するなど,保守作業の工数軽減に威力を発揮する。現在でも大きなデータセンタには60台ぐらいのサーバが設置されており,センタの集約化が進めば100台以上になる可能性もあるため,今後ますます活用シーンが増えていくはずだ。
「馬券というのは,ある時刻以降,商品価値が何倍にもなる可能性がある反面,ゼロになる可能性もある特殊な商品であり,お客さまのお金をお預かりするだけに,ピーク時における信頼性は非常に重要です。日立の対応はシステム全体で高い信頼性を追求するものであり,ソフトウェアとハードウェアをバランスよく組み合わせたトータルソリューションなので,障害発生率がきわめて低いことを評価しています」と宮本氏は語る。
ピーク時にこそサービスを止めてはならないJRAのARSシステムを,JP1を中核として日立のトータルソリューション力が今後もがっちりと支えていく。
※記載されている会社名,製品名は,各社の商標もしくは登録商標です。


モニタリング,オートメーション,ITコンプライアンス,ファウンデーションという4つの柱で,企業システムの統合的な運用を支援する「JP1」。その新しく搭載された機能の数々を,まとめて紹介する。

| ユーザー名 | 日本中央競馬会 |
| URL | www.jra.go.jp |
| 本 部 | 東京都港区西新橋1-1-19 |
| 設 立 | 1954年9月16日 |
| 資本金 | 49億2,412万9千円 |
| 職員定数 | 1,910名 |
| 会社名 | 株式会社 日立製作所 ソフトウェア事業部 販売企画センタ |
| URL | www.hitachi.co.jp/jp1 |
| TEL | 03-5471-2592 |






















