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総論
[総論]
生産性の壁を突破するために ITのあり方をどう考えるべきなのか

IPコミュニケーション
[IPコミュニケーション]
データだけではなく音声もIPへ
そのメリットと技術的要件



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ネットワーク活用の場を飛躍的に拡大
そのために必要なセキュリティメカニズム


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シスコ・テクノロジーがもたらす数々のメリット


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第2回:IPコミュニケーション
データだけではなく音声もIPへ
そのメリットと技術的要件

音声とデータをIPネットワーク上で統合する「IPコミュニケーション」。これは企業のコミュニケーションのあり方を大きく変革し、新しいワーキング・スタイルを生み出すものとして、大きな注目を集めている。

もちろんPBXベースの電話システムからIPコミュニケーションに移行するには、IPネットワーク上で十分な通話品質を実現することと、高信頼性の確保が欠かせない。

シスコはこれらの要求にどのように応えているのか。

今回はIPコミュニケーションを支えるテクノロジーを俯瞰したい。

内線電話をオフィスから解放する
IPコミュニケーションとブロードバンド

 
IPコミュニケーションに必要な要件(1)
通話品質を維持するための“End-to-End”の制御
IPコミュニケーションに必要な要件(2)
十分な信頼性の確保
無線を利用したIP電話でも
End-to-EndのQoSを実現


  内線電話をオフィスから解放する
IPコミュニケーションとブロードバンド

 この10年余りの間で着々と進んできたコンピュータ・ネットワークのIP化。以前はIPといえば、UNIX系システムとインターネットへの接続に使うものに過ぎず、ホスト系システムもパソコンも、それぞれ独自のプロトコルが利用されていたが、現在ではほぼ全てのコンピュータ・ネットワークがIPを全面的に採用するようになっている。

この流れが今、音声系ネットワークにも波及しようとしている。音声とデータをIPネットワーク上で統合する「IPコミュニケーション」の採用が、急速な勢いで拡大しているのだ。

 それではなぜIPコミュニケーションなのか。それはこのソリューションが、これまでの電話システムが抱えていた問題を解消し、新しいワーク・スタイルを実現できる可能性を秘めているからである。

 PBXを利用した電話システムには、大きくふたつの問題点がある。ひとつは投資額や運用コストが大きくなりやすいこと。データと音声で個別のネットワークが必要であれば、ネットワークに対する投資額が増え、メンテナンスにも余分な手間がかかるのは当然である。またレイアウト変更や人事異動に伴う設定変更にはPBXベンダに作業を依頼する必要があり、ここでもコストがかかってしまうのだ。

 もうひとつの問題は柔軟性に乏しいことである。レイアウト変更に手間がかかることはすでに述べた通りだが、システム構成の自由度も低い。たとえば複数拠点で内線電話を使いたい場合には、各拠点にPBXを設置する必要がある。もちろんPBXが設置された拠点の外では内線電話を使うことはできない。このため利用者にとっての自由度が、大きく阻害されてしまうのである。

 それではIPコミュニケーションは、これらの問題をどのように解消するのだろうか。シスコのIPコミュニケーションの基本的な構成を眺めながら、このソリューションのメリットを見ていこう。

図をクリックすると拡大図をご覧いただけます。

 まず第1に注目すべきなのは、音声とデータをひとつのIPネットワークに統合できる点である。これによってネットワークに対する多重投資を回避し、運用コストの削減も可能になる。また従来のPBXに相当する機能はCisco CallManagerによって実現されるため、PBXのメンテナンスにかかっていたコストも不要になる。

 柔軟性も飛躍的に向上する。たとえばレイアウト変更を行った場合でも、設定変更等を行う必要はない。シスコIPコミュニケーションでは電話番号をIP電話側に設定しているため、IPネットワークが利用可能なポートや無線LANが利用可能である場所なら、どこでも接続するだけで同じ電話番号で利用することができるからだ。またCisco CallManagerは、IPネットワークさえつながっていれば、遠隔地にあるIP電話に対する呼処理も行える。このため各拠点にCisco CallManagerを設置する必要はなく、複数サイトのIP電話のコントロールを集中化できるのである。

 さらに注目すべきなのは、IP電話が利用できるのは企業内だけではないということだ。ある程度の帯域を確保できるネットワークがあれば、どこででも“自分の電話番号”でIP電話を利用できるのである。またCisco Unityによってユニファイド・メッセージングを実現すれば、ボイス・メールをグループウェア上で、電子メールと一緒に一元管理することも可能になる。IP電話機能をPC上で実現するCisco IP SoftphoneとMicrosoft Outlook等のグループウェア・クライアントをノートPCに入れておき、このノートPCとヘッドセットを持ち歩けば、ネットワークに接続できる場所が自分のオフィスになるのだ。

 最近では企業内だけではなく、一般家庭やホテル、空港、街中の飲食店などでもブロードバンド・ネットワークが利用できるようになっている。ブロードバンドとIPコミュニケーションの組み合わせは、ユーザーをオフィスやデスクから解放するのである。

IPコミュニケーションに必要な要件(1)
通話品質を維持するための“End-to-End”の制御

 このようにIPコミュニケーションは、ワーキング・スタイルに革命を引き起こすポテンシャルを持っている。しかしそのメリットを享受するには、ふたつの厳しい要求を満たさなければならない。

 ひとつは高い通話品質の実現である。リアルタイムの音声通話をストレスなく行うには、十分な帯域を確保すると同時に、レイテンシーも必要なレベルまで抑制する必要がある。しかもこの制御を、通話に使われる全てのネットワーク経路において、“End-to-End”で実現しておく必要があるのだ。

 シスコのIPコミュニケーションでは、複数のテクノロジーを活用することでこの要求に応えている。

 まずIP電話自体が“クラス・オブ・サービス(CoS)”の値をコントロールする機能を持っている。これによって音声トラフィックの伝送プライオリティを高めることができるのだ。この設定はレイヤ2スイッチの動作に反映される他、レイヤ3スイッチでもIPパケットの“タイプ・オブ・サービス(ToS)”のラベル付けに利用される。このように端末側が設定したCoSによって、LAN上の通話経路全体をコントロールできるのだ。

 一方WANを経由するルートに関しては、キューイング・メカニズムが利用されている。キューイング・メカニズムには複数の種類が存在するが、そのなかでも“ロー・レイテンシー・キューイング(LLQ)”は、通話品質を維持する上で大きな貢献を果たす。これは遅延に対してセンシティブなリアルタイム・トラフィックを伝送するためのものであり、音声トラフィックに対して“絶対的なプライオリティ”を与えることを可能にする。

図をクリックすると拡大図をご覧いただけます。

 さらに拠点間の音声チャネル数を制御する仕組みも提供されている。これは大量の音声トラフィックによる音声品質の劣化を防止するためのものだ。WANでLLQを利用すると音声トラフィック用の帯域は確保され、最優先で処理されるが、通話数が多いとLLQによって確保された帯域内で音声トラフィック同士の衝突が発生する。音声チャネルに制限をかけることで、このような状況を回避できる。たとえば音声通話1コールを24kbpsとし、音声帯域を48kbpsに制限したとしよう。この場合通話で利用できるチャネル数は最大2チャネルとなり、3チャネル目の通話は“話し中”になる。この機能は、PBXのトランク機能をIP上で実現するものだ。

図をクリックすると拡大図をご覧いただけます。

 このようにシスコIPコミュニケーションでは、通話品質を“End-to-End”でコントロールすると共に、音声とデータの適切な共存にも配慮した設計がなされているのである。

IPコミュニケーションに必要な要件(2)
十分な信頼性の確保

 もうひとつ求められるのは、十分な信頼性を確保することである。IPコミュニケーションのシステムがダウンすれば、電話が通じなくなる。電話はビジネスや社会生活を支える“ライフライン”なので、システムダウンは決して許されない。

 この要求に対しては、大きく3つのテクノロジーが提供されている。まず第1はCisco CallManagerのクラスタ構成。複数のCisco CallManagerで冗長化を行うことで、1台のCisco CallManagerがダウンしても、サービスを継続できるようになっている。下の図に示すのは7台のCisco CallManagerでクラスタを構成した例である。デバイス管理、課金データ格納、電話機能制御の中核となる1台の“Publisher”、Publisherの分散データベースを持ち、ユーザー毎に呼処理を分担する4台のプライマリ・サーバ、そして2台のバックアップ・サーバが含まれている。プライマリ・サーバがダウンした場合には、通話がとぎれることなく瞬時にバックアップ・サーバにコントロールが切り替わる。なお、クラスタ構成はシステムの可用性を高めるだけではなく、この例が示すように、負荷分散によってスケーラビリティを高める手段としても利用できる。

図をクリックすると拡大図をご覧いただけます。

 第2はLANスイッチのHA(High Availability)構成だ。これはIPコミュニケーションに限らず、LANの信頼性を高める上で欠かせないテクノロジーだといえるだろう。シスコではこのHA構成として、レイヤ1からレイヤ3まで、複数の手法を提供している。まずレイヤ1では、LANスイッチのメイン・プロセッサであるSupervisor Engineの二重化が可能。レイヤ2では“スパニング・ツリー・プロトコル(STP)”によるループ検出と再形成機能、STPの拡張機能である“Uplink fast”によるアクセス~ディストリビューション間のリンク経路の二重化が提供されている。リンク障害時には瞬時に切り替えが行われる。レイヤ3では、2台のスイッチを仮想的に1台に見立てて、障害発生時にはプライマリからスタンバイに切り替わる“ホット・スタンバイ・ルータ・プロトコル(HSRP)”機能が用意されている。

図をクリックすると拡大図をご覧いただけます。

 そして第3が、WANの障害に対応するための“拠点バックアップ機能(SRST)”である。シスコIPコミュニケーションではWANで接続された複数のサイトも、1ヶ所のCisco CallManagerで管理することができる。しかしこれは逆に言えば、WANに障害が発生した場合には、リモート・サイトのIP電話が機能しなくなるということでもある。他のサイトとの通話ができないだけではなく、サイト内の通話や外線の発着信も不可能になってしまうのだ。このような問題を、各拠点に設置されたルータの機能でカバーするのがSRSTである。SRST機能を搭載したルータは、呼処理のコントロールを一時的に引き継ぐことが可能。このようなルータによるバックアップ機能を“サバイバブル・リモート・サイト・テレフォニー”と呼ぶ。万一WANに障害が発生しても、サイト内の通話を維持できるのである。

図をクリックすると拡大図をご覧いただけます。

無線を利用したIP電話でも
End-to-EndのQoSを実現

 ここまでは有線ネットワークをベースにしたIPコミュニケーションを考えてきたが、実はシスコでは無線LANを利用したIPコミュニケーションも提供している。もちろんここでも“End-to-End”のQoSが求められるのは言うまでもない。

 一般に無線LANでは、端末となるワイヤレス・ステーションとアクセス・ポイントとの間の通信経路は、時分割によって共有されている。まず各ワイヤレス・ステーションは、アクセス・ポイントが通信可能状態になってから一定時間(Distributed Inter-Frame Space:DIFS)ウェイトし、さらに特定の範囲内でランダム・バックオフの値を設定、この値を20マイクロ秒ごとにカウントダウンしていく。そして最初にゼロに到達したワイヤレス・ステーションが、アクセス・ポイントとの通信を行う権利を獲得するのである。ここで通信の権利を獲得できなかったワイヤレス・ステーションは、途中までカウントダウンしたランダム・バックオフの値を保持し、次のDIFSの後にこの値からカウントダウンを開始する。一方、前回通信の権利を獲得したワイヤレス・ステーションは、新しいランダム・バックオフの値を設定し、改めてカウントダウンを行うことになる。このようなメカニズムによって、各ワイヤレス・ステーションができるだけ均等にアクセス・ポイントと通信できるようにしているのである。

図をクリックすると拡大図をご覧いただけます。

 しかし音声通話を行う場合には、無線LANでも音声トラフィックを優先的に通したい。そこでシスコが行ったのが、ランダム・バックオフの値の範囲をトラフィックの種類によって、個別に設定できるようにすることである。たとえばデータ・トラフィックのランダム・バックオフを31~255、音声トラフィックのランダム・バックオフを3~31に設定する。こうすれば音声トラフィックがアクセス・ポイントとの通信の権利を獲得しやすくなり、結果的に音声トラフィックの優先度が高まるのだ。

図をクリックすると拡大図をご覧いただけます。

 以上見てきたようにIPコミュニケーションを実現するには、実に多岐にわたるテクノロジーが必要であることがわかる。これらすべてのテクノロジーを提供するのは決して簡単ではない。

 シスコのようにIPネットワーク関連テクノロジーに莫大な投資を行い、豊富な経験と実績を有する企業だからこそ可能なのだといえるだろう。


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