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誤解の多いSOA導入 〜課題解決の糸口をたぐり寄せる〜
Vol.4 SOA導入事例(3) 三井農林株式会社 「業務プロセスの改善」
富士通株式会社 ソフトウェア事業本部 ミドルウェア事業統括部 プロジェクト課長 山崎 啓 氏

既存システムには手を加えない業務改善の第一歩は業務状況の監視から

企業の競争関係 企業活動における業務プロセス革新がますます競争戦略上,欠かせなくなっている。日本情報処理開発協会の調査においても「ビジネスプロセス革新が,ますます競争戦略上,鍵となり始めた」と捉えている傾向が強いことが分かる(右図)。

 だが,企業活動における業務プロセスは,一つの部門だけで成り立つものばかりでなく,その多くが複数部門の業務を組み合わせて成り立っているため,プロセス革新が容易に行えない場合がある。たとえば,営業部門が注文を受け,生産部門が製品を製造して,物流部門が顧客の元へ届け,経理部門が会計処理を行うといった流れだ。各部門のスムーズなシステム連携が必要とされているにもかかわらず,実際にはそれぞれの部門業務のみに適したかたちで業務システムが構築されているケースが多い。

 「部門ごとに最適化されたシステムは,部門間の業務の引き継ぎやデータの受け渡しなどを手作業にたよっているケースが少なくありません。さらに,部門間をまたがる業務の進捗状況の把握が属人的になってしまい,また,業務が停滞しても要因を把握できません。これらがボトルネックとなり,業務効率化・迅速化を妨げます」と富士通 ソフトウェア事業本部 ミドルウェア事業統括部 プロジェクト課長 山崎 啓 氏は指摘する。

 各部門システムのデータを横断的に集計するには,手間と時間がかかるため,重要な情報を見逃し,問題への気づきや対処が遅れてしまう。このような複数部門をまたがる業務プロセスの改善には,人手による現状作業の見直しと合わせて,各業務システムの連携・統合が鍵となる。

 一般的な業務プロセス改善の取り組みとしては,まずは文書化などにより,作業手順や業務ルールを明確にし,業務プロセスを見直す。次に,範囲を決め,一連の業務プロセスをシステム化する。それから,業務の実行状況の監視や分析のための仕組みを導入することで,システムとして更なる業務の改善点を明確化できるようになり,継続的な業務改善のサイクルが構築される。

 一連の業務プロセスをシステム化するためには,多くの場合,複数の業務システムとの連携が必要となる。SOAの考え方に基づいて各業務システムをサービス化しておくことで,業務の流れに沿って必要なサービスを組み合せた業務処理を実行することが簡単になる。業務プロセスの変更が必要な場合には,サービスの組み換えやサービスの追加,置き換えで迅速に対応できるため,システムの柔軟性が格段に向上する。しかしながら,現状の厳しい経営環境では,既存業務システムを含む全面作り直しは難しく,現実的ではない。

 業務プロセス改善を短期間で手軽に実施して効果を上げるためには,既存システムに極力手を加えないことがポイントの1つである。「既存システムに手を加えずに,業務横断的にデータを収集,業務状況を監視するという手軽なアプローチからでも,業務プロセス改善の一歩を踏み出すことができます」と山崎氏は語る。

図

人手を介した情報連携の限界と在庫管理・生産管理での効率化の課題

 三井農林株式会社は生産管理業務において,分散している情報を迅速に集計し,現場に活かすため最新データを見える化し,業務の効率化とスピードアップを実現した。

 同社の事業の柱は紅茶や緑茶などの製造販売である。そのなかで,過剰在庫や在庫不足を防ぐため,生産管理による適切な製品供給の実現に注力している。特に茶葉という季節性の高い原材料を用いる関係で,必要な時に原材料が調達できなかったり,逆に余らせて不要なコストがかかったりしないよう,生産管理の最適化がより厳しく問われる。

 生産管理業務では,販売部門が持つ売上・注文の販売データと,生産部門が持つ製造・在庫データを,生産管理部門の担当者が毎日確認して製品を製造する量とタイミングを調節している。その際,部門システムは約10年前に手組みで構築されており,個別に最適化されていたが,数百種におよぶ製品個々に必要なデータをそれぞれのシステムから横断的に取得することができず,データの収集,集計とも人手に頼るしかないという悩みを抱えていた。

 生産管理部門の担当者は,生産管理に必要なデータを販売部門や生産部門など各部門から取り寄せ,手作業で集計していた。そのため,時間もかかり,集計結果から見える問題の発見や対処の遅れの原因になりがちだった。生産管理業務に用いる情報が各部門に分散しているため,在庫不足や過剰在庫の予兆となるデータに気づきづらいのだ。

 また,どのデータをどのように集計・分析し,製品をどのタイミングでどれだけ製造するかは,担当者個人のスキルや経験に依存する部分が大きかった。それゆえにミスの発生,担当者交代に伴う業務品質の低下といったリスクもあった。

分散している情報を収集・集計し見える化して業務の状況や問題を迅速に把握

 三井農林は在庫不足をはじめとする予兆となるデータが示す問題に迅速に対応すべく,生産管理の業務改善に取り組んだ。業務の流れを整理し,既存システム上のデータを見える化して異常を事前に検知するために,モニタリングツールとして採用したミドルウェアが,富士通の「Interstage Business Process Manager Analytics」(以下IBPMA)である。同製品は業務状況のタイムリーな見える化,設定したルールに基づく異常の自動検出とアクションの自動化を実現する機能を備えており,さまざまな業種において業務効率化を支援する。

図

 IBPMAの特長の1つは,既存システムへ簡単にアドオンできることだ。そのため,既存システムやパッケージに手を加えることなく,業務の監視・分析を短期間で実現できる。実際に同社の場合,構築には3ヶ月もかからなかった。

 同社はIBPMAの導入により,売上,製造,在庫データの集計作業の大幅なスピードアップを果たし,生産量の適正化を可能とした。これまでの手作業による集計では,全体を把握するまでに1〜2日かかっていた。「IBPMAの導入後は各部門のシステムから必要なデータを自動収集し,すばやく集計できるので,業務の状況や問題といった情報をほぼリアルタイムで把握できるようになります」と山崎氏は強調する。

 同時に,各部門システムに分散している売上,製造,在庫のデータを1つの画面上に集約して表示し,一度に確認できるようにした。その上,生産管理部門の担当者が利用しやすいよう,集計結果のグラフ化や異常のアラート通知などの見える化も実現し,現場オペレーションの効率化に寄与している。

鮮度の高い情報により予兆を監視アラート通知でミスを事前に防止

 集計作業のスピードアップに加えて,IBPMAの活用によって,起こしやすいミスの事前防止も実現している。IBPMAが収集・集計する最新の在庫および売上データを用い,在庫不足の予兆が現れていないか,しきい値として設定した発注点を基に自動監視する。在庫不足の予兆が現れた場合には,担当者へメールなどで自動的にアラートが通知される。

 従来は人による判断で在庫不足をチェックしていたが,データの見落としや誤った分析などのミスが起き,在庫不足に陥るケースなど,リスクが高かった。IBPMAでリアルタイムに問題発生の予兆をキャッチし,アラート通知も行うことで,事前にミスを防止し,タイムリーで確実な対応が可能となった。

 なお,発注点については,三井農林のこれまでの経験から得られた独自ノウハウにより算出係数を設定している。その結果をIBPMAに取り込むことで,カスタマイズが可能なシステムを実現している。

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 在庫不足の他にも,過剰在庫のリアルタイムチェック,および異常発生時のアラート通知も実施している。「データの収集・集計から,異常のチェックやアラート通知まで,システム化・自動化による属人性の排除で,生産管理業務の精度を格段に向上できるのです」と山崎氏は語る。

 三井農林では,生産管理の効率化を実現した今回の仕組みを800にも上る商品アイテムのうちの主要50アイテムからスタートさせ、対象アイテム数を徐々に増やしている。この取り組みは、効率化を目指す他部門からも関心を持たれている。たとえば同じ売上情報でも,経営層は必要なときにBIシステムで分析したいが,現場担当者は即時に帳票で見たいなど,それぞれの立場によって利用する情報の性質や鮮度が異なるというさまざまな要件があるからだ。今後はIBPMAの適用を他業務にも展開,課題解決を図ってさらなるビジネス強化を進めていく予定だ。

 敷居が高く取り組みづらいとの誤解が多いSOAだが,これまで紹介してきた事例のように,現場の身近な課題を解決しながら,将来の全体最適化に向けてSOAを活用していく方法論が見えてくるのではないだろうか。富士通は今後もSOAミドルウェアを強化していく。

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