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個別の会計システムを運用するグループ企業間の連結決算において,ERP(Enterprise Resource Planning)などから必要なデータをExcelに取り込み,マクロ機能を使って計算したあと,会計システムに結果を戻すという光景は決して珍しくはない。多少面倒であっても,ERPなどの会計システムをカスタマイズするよりは安上がりだからだ。
売上・営業データの集計についてはどうか。EDI(Electronic Data Interchange)やFAXなど複数の受注経路があり,基幹システムのデータベース(DB)へ登録するため,いったんExcel上にデータを出力してマクロ・プログラムによってデータを変換し,集計は手作業で行っているというケースが多く見受けられる。昨今,Excelファイルをはじめとするこうした非構造化データは,企業内で急増していると指摘されている。
しかも,会計,財務に関連するデータの集計・算出フローに組み込まれたExcelファイルの関数やVBAで作り込んだ処理ロジックは,必ずしも厳密に管理,監査されているわけではない。作成者本人にしかわからないような複雑なロジックで作られた業務アプリケーションが職場に残されると,誰も手をつけられない「パンドラの箱」になる。業務プロセスの柔軟な変更が困難になるばかりでなく,日本版SOX法のIT統制や,日本公認会計士協会が2007年10月に公表した,いゆわる「スプレッドシート統制」に抵触する危険性もある。
コンプライアンスの強化は,契約書や規定集,マニュアル,製品仕様書などのWordファイルにもあてはまる。廃棄の基準もなく,漫然とファイル・サーバに眠る大量のドキュメントを放置すれば,情報漏洩などのリスクが高まる。内部統制への対応において,Excelファイルに加えてWord文書の作成・管理業務のライフサイクルを洗い直す必要に迫られているのである。
そのようなExcel/Wordファイルの管理や共有・活用・統制において,どのような対策が考えられるだろうか。
Excelについては,BI(Business Intelligence)ツールの導入,またはExcelデータをRDBに格納してExcelに類似したユーザー・インターフェースを介在させるWebシステム化による置き換えがある。「ただ,高額・高機能なBIツールの導入は,企業の部門レベルや中堅・中小企業にとっては敷居が高いと思われます。またWebシステム化の場合は,分析・集計ロジックをクライアント側からサーバ側に移すだけなので,ロジックなどのブラックボックス化は本質的に解消されません」と,日本IBMの池田高也氏は懸念する。
他方,Wordに関しては,独自にプラグインを開発する方法や,Wordを使わずに特定業務専用のソフトウェア(エディタ)を導入するケースが一般的だ。専用エディタを使って文書構造を分解し,RDBに格納したあとでWebやPDFなどマルチ出力を行うシステムを実現する方法である。ただし,業務部門のユーザーが使いこなせるようになるまでの教育コストはかさむ。このように現行の対応策にはいずれも一長一短があり,決め手を欠くといえるだろう。
こうした課題に対して池田氏は,「Excel/Wordレガシー問題の本質は,データの保守性と再利用性の改善にあります」と述べ,抜本的な解決策を次のように提示する。
「数値やテキストといった,各種データの持つ意味を明確化すれば,作成者以外の担当者でもあとでデータをメンテナンスしやすくなります。同時に,それらのデータの利用を特定アプリケーションに限定せず,上位のバージョンや他のアプリケーションからも利用しやすい標準的な形式で流通させることで,再利用や有効活用が促進され,情報の価値を蘇らせることができます。そのポイントとなるのが,XML(eXtensible Markup Language)技術です」
Excel/WordファイルのXML化の手順はこうだ。MS Officeを入力フロントエンドにしてファイルからCSV形式やテキスト形式のデータ,さらに埋め込まれた関数や書式情報を収集するツール「Pluxis(プラクシス)」を使用する。これにより,MS Office文書の中に組み込まれたデータが抽出され,データ・ファイルとデータ構造定義が分かれて,それぞれXMLフォーマットに変換される。「XMLファイルでは,数値やテキスト,画像などの属性をタグに表記することで,データの意味を明文化できます。作成者以外のユーザーや他のアプリケーションからもその意味を解釈できるのが利点です」(池田氏)
XMLデータを蓄積するには,ハイブリッド型データベース「DB2 9」(DB2 9 pureXML)を利用する。DB2 9 pure XMLは,ネイティブXML文書ストレージとRDBとを統合し,ネイティブにXMLを格納できる機能を備えた商用RDBMSの新製品だ。Excel/Wordファイル自体をそのままデータベースに格納できると考えれば,これは実に画期的なことだ。
「DBからExcelを生成してExcelで編集し,再びDBへ格納するというように,ExcelファイルをDBに対する入力フロントとして扱うことができます。業務部門では現状のExcelのレイアウトを1行も変えることなくそのまま活用できるので,導入前後も使い勝手は変わらず,特別な教育コストもかかりません」と池田氏。Wordファイルについても同様だ。
また,Excelを利用して財務報告の基礎資料を作成する場合,マクロや計算式の検証が必要になるが,そこではExcel Checkerプラグインを利用し,含まれるマクロや計算式をチェックしてレポート化する。これは,内部統制の報告書作成にひと役買う。
こうした手法は幅広い業界で適用できるはずだ。例えば製造業で,製品仕様書の作成管理にはWordを,商品企画書にはExcelと使い分けている場合,部品DBやカタログDBへの転記の効率性を高める仕組みを容易に構築できる。また,REACH規制の運用に伴い,製品に含有する化学物質のデータをExcelで管理している電子部品・化学・素材メーカーも,これまでの業務を大きく変えずに迅速な対応が可能になるだろう。
規定集や約款,業務マニュアルなどの版管理やコンテンツ管理は,取り扱う金融商品の多様化が進む金融機関でも注目されている。さらに,データの可視化により,ブラウザでの閲覧や他のBIツールとの連携,マッシュアップ・アプリケーションの作成といった拡張性・将来性を有する点も大きなメリットだ。
「Excel/WordレガシーにXML技術を適用することは,内在するリスクを可視化して内部統制を強化し,データを“情報”という経営資産に変えるチャンスです。データの管理上,情報システム部門が中心となって一元的に推進できる体制を整えられます」(池田氏)。IBMが提唱するIODの実践とは,まさにこのことなのだ。
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