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日経BP社 ITpro発行人 浅見 直樹
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長年にわたり培われてきた仮想化技術が,オープン・システムの世界にも広がりつつある。サーバーをはじめとするシステム資源を仮想化することで,ムダのない効率的なIT投資が実現。ビジネスをより戦略的に進めていくことも可能になる。日経BP社 浅見 直樹による基調講演では,顧客ニーズから市場動向を分析すると同時に,仮想化を取り巻く最新の技術トレンドを総括した。
ITインフラの統合により
より戦略的な投資を目指す
より戦略的な投資を目指す
ネットバブルの崩壊などをきっかけに,長らく減少傾向が続いてきた日本のIT投資。しかし2004年以降,IT投資は再び成長傾向へと転じている。このままの状態で推移すれば,2006年は金額ベースで過去最高を記録すると思われる。
しかし,その内容を吟味してみると,必ずしも楽観的な材料ばかりではない。「諸外国と比較した場合,成長率では大きな伸びが見られません。また,既存システムの保守・運用といった,『守りの投資』に重点が置かれている点も日本の特徴です」と浅見は指摘する。絶対的な金額そのものは増加していても,新規案件への投資が十分に行われていないというのだ。「記事に対する読者の反応を振り返ってみても,内部統制やコンプライアンス,セキュリティなど,安全・安心に関わる企画の人気が高かった」と浅見は述べる。
とはいえ,今後に向けた新たな動きも,いくつか見え始めている。
「導入優先順位の高いIT技術を聞いた調査で,『ITインフラの統合』という項目が第3位に入りました。既存のシステム環境を統合・整理することで,戦略分野へのチャレンジを行いたいという意欲が感じられます」と浅見。今回のフォーラムのテーマである仮想化への関心が高まっているのも,こうした背景によるものといえる。
アメリカにおいては,「IT does notmatter」から「IT does matter」への揺り戻しが生じている。インターネット系の技術が一通り出揃った段階では,自社の業務をどう改革するかが最優先課題であった。考慮すべき最大の要素は,技術そのものではなかったのである。しかし現在では,再び先進ITの導入がビジネスの付加価値を決定付けるポイントとなった。仮想化技術も,そのキーファクターの1つなのである。
汎用化が進む仮想化技術
知的生産性の拡大に貢献
知的生産性の拡大に貢献
仮想化のコンセプト自体は30年以上前から存在しており,決して目新しいものではない。かつて企業システムの主役であったメインフレームにも,様々な仮想化技術が搭載されていた。しかし現在見られる大きな変化は,オープンな環境で仮想化技術が適用されるようになったことだ。「様々なベンダーから,サーバー向けはもちろん,クライアントPC向けの仮想化ソリューションなども提供されています。仮想化技術は,より汎用的なテクノロジーになったといえるでしょう」(浅見)
仮想化を行う最大のメリットは,様々なシステムリソースを有効に活用できるという点にある。業務システムをピーク時の性能に合わせて個別に構築していくと,どうしてもムダな部分が発生する。しかし,仮想化された資源を各システムに割り当てていけば,リソースを効率的に使うことができる。そうして浮いたコストを戦略投資に振り向ければ,ビジネスをさらに発展させていくことが可能となるのだ。
「投資対効果は知的生産性÷システムコストという式で表せますが,分母(システムコスト)を小さくすることばかりにとらわれている傾向が見受けられます。しかし本当に重要なのは,分子(知的生産性)を大きくすることのはず。仮想化技術がこれを実現するきっかけになればと期待しています」と浅見は語る。コスト削減だけでは,いわゆる「レッドオーシャン戦略」へと陥ってしまう。市場での厳しい競争を勝ち抜いていくためには,新しい付加価値を創造する「ブルーオーシャン戦略」への転換が不可欠なのだ。
「例えば,『Windows NTベースのシステムを仮想統合し,段階的に改修や新機能の追加などを行う』『仮想マシン上に業務環境と共通の開発環境を構築する』『クライアントPC管理の効率化を図る』など,様々な適用分野が考えられます」と浅見は説明する。今後CPUのマルチコア化がさらに進めば,仮想環境の実現にとって追い風となることだろう。これに伴い,コストメリットもさらに高まると予想される。
プールされたITリソースを
必要に応じて使える環境が実現
必要に応じて使える環境が実現
このように数多くの長所を備えた仮想化技術だが,まったく課題がないわけではない。まず,仮想化ソフトウエアを介することによるオーバーヘッドの問題がある。特に性能要求の厳しいシステムなどでは,パフォーマンスへの影響が懸念される。ただしこの点については,CPU側に支援機能を持たせることで解消を図る動きが強まりつつある。仮想化関連の処理をハードウエアで行えば,オーバーヘッドも大きく減ることだろう。
もう1つは,障害発生時の原因切り分けだ。サーバーの物理構成と論理構成が1対1の関係であれば,どこに障害があるかが比較的わかりやすい。あとは故障部位を修理するなり,ソフトウエアを改修するなりすればいい。しかしサーバーが仮想化されていた場合,システムの物理構成と論理構成の関係性が複雑になる。このため仮想化に対応した運用管理ツールを用いるなどの対策が必要だ。
そして,運用管理手法の標準化である。冒頭にも述べた通り,最近では様々なベンダーから仮想化ソリューションが提供されている。これらすべてについて,別々の運用管理が必要ということでは問題だ。「特に最近ではマルチベンダーでシステムを構築するケースが一般的になっているため,この分野についても業界横断的な標準化の取り組みが求められます」(浅見)
しかし,こうした課題を差し引いても,これからの企業情報システムが仮想化の方向に向かうことは間違いない。「サーバーやストレージ,ネットワークなどのITリソースをプールし,必要に応じて利用する形態が一般化していくと思われます。最終的には,水道や電気のようにシステム資源を利用する『ユーティリティ・コンピューティング』へと発展することでしょう」と浅見は最後に強調した。




















