1934年の創立以来,中国地方を中心に地域密着型の医薬品卸売業を展開する常盤薬品。半世紀以上にわたって培ってきた地元医療機関との密接な信頼関係を強みとする地域医薬品卸の老舗だ。現在では,「医療用医薬品事業」,「一般用医薬品事業」,「医療機械・用具事業」,「その他事業」の4つの事業を基盤に,中国地方を代表する“地域医薬品卸の雄”として,広範で多彩な保健医療事業を展開している。
医薬品卸売業では病院,診療所,調剤薬局,一般薬局などを対象に,医薬品や医療用機器などをタイムリーかつ迅速に提供することが重要な使命となる。
「とりわけ医療用医薬品は人の命や健康維持に深く関わっており,使用頻度にかかわらず,豊富な品揃えと迅速かつ安定的にデリバリーできる体制づくりが必要です。そのためにも,ビジネスインフラの整備は欠かせません」と同社代表取締役社長の枝廣弘巳氏は説明する。そこで,同社では早くからビジネスの情報化を推進。インターネットが普及する以前から,MS(Marketing Specialist:医薬品卸売業の営業担当者)に対して情報端末を支給し,社外からでも社内システムにアクセスできる環境を整備していた。
こうしたビジネスインフラの要ともいえる存在が,社内ネットワークである。当然,同社でもその重要性を強く認識しており,2001年にはフレーム・リレー網(FR)からIP-VPNへ刷新。本社と支店・営業所など全23拠点を接続し,ネットワーク環境を大幅に改善した。アクセス回線には本社をATMで,その他の支店・営業所など22拠点を128kb/sのSTMで接続。また社内からのインターネットアクセスはOCNのインターネット接続サービスを利用し,本社システムからのみ接続可能とした。これにより,インターネットへの接続ルートが一本化され,セキュリティリスクの低減につながった。
「しかし,懸念がまったくなくなったわけではありませんでした」と同社電算室室長代理の園田聡氏は振り返る。というのも,基幹系データを扱う本社システムはIP-VPNのみで接続された状態。基盤となる販売管理システムは本社システム上に構築されており,MSはそれを利用して医薬品情報の収集,医薬品の在庫確認,発注業務などを行っていた。
「つまり,本社システムをつなぐ回線に障害があった場合,主要業務が止まってしまう恐れがあったのです。信頼性の高いネットワークとはいえ,万が一の場合を考えるとシステムのバックアップ回線の整備は重要な課題でした」と園田氏は述べる。
また,基幹系と情報系のデータが混在しているネットワーク環境も大きな課題として浮上していた。業務におけるオフィス系アプリケーションなどの利用が拡大し,様々な資料をメールでやりとりするケースが増えることで,全体の帯域が逼迫していたのだ。
「FRからIP-VPNに刷新した当時,ネットワーク上を流れるデータ総量は1日あたり100MB程度でしたが,それが今では700MB程度まで拡大しています。そのため,一時的にメールの送受信が滞るなど,業務への支障も顕在化していました」と園田氏は話す。
こうした状況に加え,リモートアクセス環境の改善も求められていた。同時接続ID数が限られていたため,MSからの基幹系へのアクセスが集中する時間帯には,社内ネットワークにつながりにくい状態が発生していたのだという。

「これからのビジネスにとってITは不可欠な要素。特にネットワークはその基盤となるインフラだけに,ネットワーク環境の整備は避けて通れない課題でした」と枝廣氏は話す。そこで,同社ではネットワーク環境の見直しに着手。複数のキャリアからの提案を比較検討した結果,NTTコミュニケーションズの提案を採用した。
NTTコミュニケーションズの提案は,新たにサービスを開始する「Dual Active VPN」をベースに,「モバイル/リモートアクセスサービス(MOVE)」を組み合わせたもの。通常は基幹系に「Arcstar IP-VPN」を,情報系に「Group-VPN」を利用し,万が一基幹系通信で利用する「Arcstar IP-VPN」で故障が発生した場合には「Group-VPN」へ自動的に切り替えるため,基幹系通信の継続的な利用が可能だ。つまりバックアップ用の専用回線を用意する必要がなく,平常時は2つのVPNを無駄なく利用しながらバックアップ回線を確保でき,経済的に高い信頼性を実現できる点を同社は評価した。園田氏は「個別にシステムを構築することなく,ネットワークの切り替えを行える点が大きな魅力でした」と語る。
導入決定後は,ネットワーク切り替えに向けた事前準備などを進め,2007年3月に一部拠点において仮運用を開始。同年4月に全拠点で新ネットワークへの切り替えを行い,本格運用を開始した。「NTTコミュニケーションズの担当者が,拠点ごとに入念な下調べを行い,移設に伴う手順書などを作成してくれたため,作業はスムーズに進み,トラブルはまったくありませんでした」と園田氏は移行作業における対応力を高く評価する。
「新ネットワークの最大のメリットは安心感が高まったこと。懸案だった基幹系ネットワークのバックアップ体制を整備したことで,事業の継続性を確保できました」と園田氏は満足感を示す。データ量の増加が著しい情報系ネットワークの足回りにはBフレッツやフレッツ・ADSLといったブロードバンド回線を利用することで,実効速度は大幅に向上した。「支店・営業所によっては,10倍以上の速度になり,社員からは通信環境が格段に向上したと好評です」と園田氏は述べる。
また,「Dual Active VPN」で提供されるマネージドルーターを活用することで,運用管理に関する負担を軽減している点も大きなポイントだ。
これまでのルーターの運用管理は,導入企業が独自に行うケースが一般的だった。しかしその場合は,複数のネットワーク機器を管理することで様々な作業負荷が発生したり,トラブル時には複数のベンダーに連絡せねばならず,迅速な対応ができないことも多い。
「当社では,運用管理に人的なリソースを割く余裕がないため,ルーターの管理まで行うことは大きな負担となります。その点,『Dual Active VPN』は,回線トラブル時の自動バックアップ切り替えをはじめ,24時間365日の運用・管理をNTTコミュニケーションズに一括して任せることができるため非常に助かります」(園田氏)
さらにリモートアクセス環境は,同時接続可能ID数を200個に拡充。新ネットワークに移行後はMS全員にIDを割り当てることができ,つながりにくいという状態はなくなった。「在庫確認や受注業務などもスムーズに行えるようになったので,MSの業務効率は大幅に向上しています」と園田氏はそのメリットを語る。
同社では今後,医薬品関連の情報を拡充し,さらなるサービスの質の向上を目指す方針だ。同時に新ネットワークを機軸に業務改革を推進していくことも検討している。その1つの例が,拠点間におけるテレビ会議システムの導入だ。枝廣氏は,まだ検討段階と前置きしながら「当社ではエリアごとのブロック会議や全社会議など各拠点の社員が集まる機会も少なくありません。テレビ会議が可能になれば,移動に要する時間やコストを削減でき,業務効率も大幅に向上するでしょう」と期待を込める。
医薬品卸売業は情報の活用がカギを握る事業。情報ネットワークをこれからのビジネスの重要な基盤と考える同社にとって,新ネットワークはビジネスの成長を支える大きな原動力となるだろう。
ビジネスのスピードやリアルタイム性が求められる中,リモートアクセス環境の重要性が高まっている。NTTコミュニケーションズの「モバイル/リモートアクセスサービス(MOVE)」は,マルチキャリアに対応し,リモート側は携帯電話,PHS,固定電話など豊富なアクセス形態を選択可能。センター側は「Arcstar IP-VPN」「e-VLAN」「Group-VPN」に対応している。
リモートアクセス時に注意しなければならない最も重要なポイントが,セキュリティの確保だが,「モバイル/リモートアクセスサービス」はこの点でも高い評価を得ている。IP網内で発信者番号および着信番号の照合に加え,認証装置でのユーザーID,パスワードの認証も実施。これにより,セキュアな通信を実現している。認証を行うRADIUSサーバーをアウトソースするRADIUSホスティングサービスと合わせて利用すれば,運用管理の負荷を軽減できる。
「モバイル/リモートアクセスサービス」には,その他高速通信を実現する「FOMAタイプ」「AIR-EDGEタイプ」「NTT Comタイプ」がある。用途に合わせて選択が可能だ。
事業継続性の確保が叫ばれている中,ビジネスの基盤とも言えるネットワークの可用性向上は重要な課題である。情報化が進展した今,ネットワークの停滞はすなわちビジネスの停止を意味するといっても過言ではないからだ。ネットワークの可用性を高めるには複数のVPNを組み合わせたり,バックアップとして迂回用にISDNを用いる方法などがある。しかし,一般に複数のネットワークを組み合わせる場合,障害時の切り替えを行う仕組みを個別に作り込む必要がある。これでは,当然トータルコストが膨らむため,バックアップ回線の必要性は痛感しつつも,導入に二の足を踏む企業も少なくない。
また最近は企業が扱うデータ量が加速度的に増大。大容量のデータを安定的に流通できる環境が求められており,ネットワークのパフォーマンス向上にも目を向ける必要がある。だが,限られたコストの中で,可用性とパフォーマンス向上という2つの要件を満たすのは容易ではない。
こうした課題を解決する手段として注目されているのが,NTTコミュニケーションズの「Dual Active VPN」である。これは高品質・高信頼な「Arcstar IP-VPN」とブロードバンド回線を利用したエントリー型VPN「Group-VPN」,さらにはマネージドルーターまでもワンパッケージにした複合型ネットワークサービスだ。
重要な基幹系トラフィックには信頼性の高い「Arcstar IP-VPN」を使い,大容量の情報系トラフィックには経済的な「Group-VPN」を使うことで,情報の重要度に応じたVPNの使い分けが可能。しかも,万が一「Arcstar IP-VPN」に故障が発生した場合には「Group-VPN」をバックアップ回線として利用できる。切り替えは自動で行われるため,ユーザーの手を煩わせることなく,ネットワークの可用性向上を実現できるのが特徴だ。

本稿で紹介した常盤薬品が高く評価したのもこの点である。同社では当初,VPNにISDNを組み合わせたバックアップを考えていたが,一般的にISDNなどでのバックアップを行う場合は,NAPT変換を利用してIPアドレスを別のアドレスに変換するケースが多い。しかしサーバーからクライアントに対して通信を行う必要があるアプリケーションの場合,宛先となるクライアントのIPアドレスがバックアップの前と後で異なってしまい,バックアップ時にうまく通信できないケースがある。そうした事態を避けるため,IPアドレスの変換を行わずに自社で独自にシステムを構築するとなると,ISDN回線のコストや複雑なルーティング設計が必要となってしまう。「Dual Active VPN」はVPN切り替え時にNAPT変換を必要としない。つまり,バックアップを行っていることを全く意識せず,通常時と同じようにアプリケーションを利用可能なのである。しかも,通常は基幹系に「Arcstar IP-VPN」,情報系に「Group-VPN」といった具合に,2つのVPNの両系同時運用が可能。経済性と信頼性を兼ね備えた複合ネットワークをワンストップで利用できる上,バックアップ用の専用回線を用意することなく,ネットワークの可用性向上を実現する。
このサービスは,2つのVPNに加え,導入から運用,監視,保守まで手がけるマネージドルーターを一括提供している点も特徴だ。自社内でルーターの管理を考える必要がないので,人的リソースやコストが限られた中堅・中小企業でも容易に導入できる。
可用性向上に加え,パフォーマンスの向上,さらには運用管理負荷の軽減も可能な「Dual Active VPN」。効率的かつ信頼性の高いネットワークを求める企業にとって,極めて有効なサービスといえるだろう。
Dual Active VPN
![]() |
モバイル/リモートアクセスサービス
![]() |
|






