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ニーズの拡大に伴い“進化”するシンクライアント
ハードディスクを持たないシンプルな構造で,今後のキーソリューションとして注目が高まっているシンクライアント。効率的なセキュリティ/情報漏洩対策,集約化による管理性の向上など大きなメリットが期待されているが,ニーズの拡大に伴い,シンクライアントには利用シーンに応じた多様性,より高度な機能やパフォーマンスなどが求められるようになっている。そこで日本HPでは,こうしたニーズに対応した製品ポートフォリオを拡充し,今年1月にシンクライアント3機種を発表。そのうち,デスクトップ型の「HP Compaq t5730 Thin Client」とノート型の「HP Compaq 6720t Mobile Thin Client」は,1月30日から2月1日にかけて開催されたITpro EXPO 2008にて,ITpro EXPO AWARDを受賞した。ここでは,その機能や特徴をより詳しくお伝えし,具体的な導入メリットを解説。進化したシンクライアント新3機種それぞれの“実力”を紹介しよう。

導入が進み,評価が高まるシンクライアント

PCはもはやビジネス活動に欠かせない重要なツールだ。社員1人に1台は当たり前の時代になっており,企業で利用されているPCは膨大な数に上る。一方,近年はPCの高性能・大容量化に伴い,各PC内に機密情報や個人情報など重要なデータが保存されるケースも増えている。その結果,膨大な数のPCを十分に管理しきれず,情報漏洩リスクが増大するといった課題に頭を悩ませている企業も少なくない。そこで,PCに代わる抜本的かつ統合的なセキュリティ/情報漏洩対策を実現するキーソリューションとしてシンクライアントへの注目が高まっている。

シンクライアントシステムとは,専用のクライアント端末とサーバで構成される。クライアント端末はハードディスクなどの記憶装置を持たず,OSやアプリケーション,各種のリソースはサーバ側で動作させる仕組み。端末自体が記憶装置を持たない入力・表示用端末であるため,作成・更新したファイルなどはサーバ側で保存。端末側にはデータが一切流れない仕組みだ。そのため,端末からの情報漏洩などを心配する必要がなく,セキュリティ対策の一元化が可能。同時に運用管理負荷の軽減も実現できるのが大きなメリットである。

セキュリティや内部統制に対するニーズが高まる中,こうしたメリットが高く評価され,シンクライアントへのニーズはますます高まりつつある。実際,先進的な企業では既にシンクライアントを導入し,セキュリティや内部統制の強化,業務の効率化や管理性の向上など大きな成果を上げているところも少なくない。


多様なニーズに対応し,製品ポートフォリオを拡充

こうした成功を支える大きな役割を担っているのが,シンクライアントシステムに最適化された専用端末である。シンクライアント専用端末は,単にハードディスクを持たない入力・表示用端末というだけではない。シンクライアントには大別すると「サーバベースドコンピューティング(SBC)方式」「仮想PC方式」「ブレードPC方式」「ネットブート方式」という4つの方式があるが,ネットブート方式以外はサーバやブレードPC上でアプリケーションやプログラムの処理を行い,端末はその結果を表示する画面転送方式を採用している。これはシンクライアントの一般的な処理方式である。

しかし,サーバ側の処理結果をネットワークを介して端末上で表示するため,シンクライアントの画面転送方式には表示速度やレスポンスの遅れなどに対する懸念を抱いているユーザーも少なくない。シンクライアント専用端末には,こうした懸念を解消するための様々な工夫が施されているのだ。また昨今はアプリケーションの多様化・高度化が進んでおり,シンクライアントにもそれに対応した高機能と高パフォーマンスが求められている。利用シーンの拡大に伴う利用形態やビジネススタイルに応じた多様性も重要な要件だ。

例えば,画像系データなどを頻繁に利用する業務ではクライアント端末には高いグラフィックス能力が必要だろう。一方,業務の性格によってはパフォーマンスよりコスト面や管理性を重視する場合もあろう。また,社内で常に自分専用のノート型PCを持ち歩くようなスタイルで業務を行っている人には,リモートアクセス環境に対応したノート型のシンクライアント端末が便利だろう。こうしたニーズに対応するため,日本HPではシンクライアント端末の製品ポートフォリオを拡充。シンクライアント専用端末を大きく“進化”させた。


HP Compaq t5730 Thin Client
非常にスリムなボディが特徴。背面写真から分かるように、映像出力端子を2つ備えており,標準で2画面対応が可能。

具体的にはWindows XPベースの組み込みシステム向けOS「Windows XP Embedded」を搭載した従来の「HP Compaq t5720 Thin Client」に加えて,よりパフォーマンスを高めた「HP Compaq t5730 Thin Client」,モビリティを高めたノート型端末「HP Compaq 6720t Mobile Thin Client」,高度なビジュアライゼーション・パフォーマンスを実現した「HP dc73 Blade Workstation Client」という3つのラインアップを提供し,企業の多様なニーズに対応している。では,それぞれにはどのような特徴があるのだろうか。各製品の機能やメリットなどを紹介しよう。


画面転送方式の課題を払拭したt5730

t5730はわずか9Wの低消費電力で動作する高性能プロセッサ「AMD Sempron 2100+」を搭載したコンパクトサイズのデスクトップ型シンクライアント端末。ハードディスクなどの駆動部品を排除するとともに,ファンレス構造を採用。冷却効率を高めたシンプルな構造で,ほこりの吸い込みリスクを極小化し,故障率の低減と静音性の両立を実現している。


HP Compaq t5730 Thin Clientの内部
手前にメモリ、フラッシュメモリを搭載。ファンレスであることも一目で分かる。

また,1GBのフラッシュメモリを実装し,そこにWindows XPベースの「Windows XP Embedded SP2 正規版」を搭載。従来のシンクライアント端末としてだけではなく,Windows XPならではの機能を生かし,スタンドアローン環境でのインターネット端末としても利用できる。例えば,Internet Explorer,Acrobat Reader,.NETフレームワーク2.0,Java,ActiveXなどのクライアントをインストールしておけば,ネットワークを介してWebアプリケーション・サーバと連携することで,高度なアプリケーション機能をセキュアかつ効率的に利用することが可能だ。機能の集約化による管理性の向上も期待できる。

グラフィックス能力の大幅な向上を実現している点も注目に値する。t5730はグラフィックス・コントローラに高性能な「ATI Radion X1250」を,ネットワーク機能にギガビット・イーサネット・コントローラを搭載。画面転送方式で懸念されていた表示速度やレスポンスの課題を払拭し,高解像度の動画データもスムーズに再生することが可能だ。スタンドアローン環境と遜色ないパフォーマンスが得られるため,業務も円滑に進められるだろう。しかも,映像出力端子はDVI-DとVGAの2種類の端子が用意されており,デュアルディスプレイ環境にも対応。1画面で管理・監視業務を行いながら,もう一方で自分の業務を遂行するなど,2つの画面をフレキシブルに使い分けることができる。そのほか,オプションの拡張モジュールを追加することで,PCIおよびPCI Express対応のカードも利用可能。様々なデバイスを取り付けることができ,本体組込式ワイヤレス機能(受注生産方式)にも対応可能。活用範囲は大きく広がるはずだ。

このようにシンクライアント端末はハードディスクを持たないという特性を生かしたセキュリティの堅牢さだけでなく,機能やパフォーマンスでも大きく進化しているのだ。今回は拡充した製品ポートフォリオの中から,そのフラッグシップモデルともいえるt5730について紹介した。次回は他の2機種について取り上げ,シンクライアントの進化にさらに詳しく迫っていきたい。


まとめ

シンクライアントシステム導入を以前から検討はしていたけれど,作業効率が落ちるのを心配して画面転送型の導入に足踏みしていた人も多いのでは? 動画もスムーズに見ることができる表示速度であれば,業務に支障なく安心して使えそうだよね。また,運用管理の担当者であれば,デュアルディスプレイ環境への対応も魅力的。自分自身の作業を止めることなく管理業務もできるから,今まで以上に業務効率向上を図ることができる。ITpro EXPOでも紹介されていたように,シンクライアントに対して,従来ユーザーが不安に思いがちだった課題点は,既に解決済みであるようだ。これで今後,シンクライアント導入にさらに拍車がかかるのではないだろうか。
●記載の社名,製品名は各社の商標または登録商標です。

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