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IBM BladeCenter Summit Review 「これまでの歩みの総括」と「新たな時代の幕開けへ」

2002年に初代BladeCenter製品を発売して以来,日本アイ・ビー・エム(以下,IBM)は,ブレード・サーバー市場におけるイニシアチブを発揮してきた。そして,発売開始から5周年目を迎える今年,これまでの歩みを総括するとともに,新たな時代の幕開けを告げる「IBM BladeCenter Summit」が開催された。最新テクノロジーを搭載した新しいブレード・サーバー製品のお披露目も兼ねた本フォーラムでは,今後も市場をリードし続ける意欲に満ち溢れたIBMのイノベーティブな技術開発の動向,ユーザーの先進的活用事例などを一挙に紹介。ここでは,熱気あふれるこの講演の模様をダイジェストで紹介しよう。

POWER6を搭載した高性能なブレード・サーバー新製品に注目

IDCの調査によれば,世界のブレード・サーバー市場は過去5年間で年率換算約35%の成長を遂げている。この急拡大するマーケットにおいて,世界ならびに日本における販売シェアNo.1の座を獲得しているのが,「IBM BladeCenter」(以下,BladeCenter)だ。2002年の発売開始以来,全世界シリーズ累計80万ブレード(うち日本では4万ブレード)が企業などで採用されている。

VP, Systems & Technology Group IBM Japan, Ltd. ジム・グレゴリー氏

VP, Systems & Technology Group IBM Japan, Ltd.
ジム・グレゴリー氏

「2000年以降,増え続けるデータへの対応が情報システムにおける課題となりました。データセンターへのアウトソーシングも世界的なトレンドになっています。しかし,サーバー台数の増加は留まるところを知らず,信頼性やパフォーマンスの低下,そして管理コストの上昇は,企業経営を脅かすほどの重大なリスクとして顕在化しつつあります」とIBM Systems & Technologyグループ副社長のジム・グレゴリー氏は語る。

「IBMでは長い間,この課題に真っ向から挑んできました。私たちが目指すところは,システム環境をシンプル化することです。この一貫したコンセプトのもとで開発してきたソリューションがBladeCenterでした」(グレゴリー氏)。

BladeCenterが国内外で高いシェアを獲得し始めた2004年以降,新たな課題への対応にも迫られた。ひとつが,様々なアプリケーションをBladeCenter上で高いパフォーマンスで稼働させるというニーズである。もうひとつは,データセンターにおける電力使用量の増加や発熱・冷却対策だ。IBMでは,ニーズの多様化・高度化に合わせてBladeCenterの製品ポートフォリオを徐々に拡充していった。

そこへ新たに加わったのが,ブレード・サーバーの新製品「IBM BladeCenter JS22」(以下,JS22)である。64ビットAIXおよびLinuxアプリケーション用に開発された第6世代のPOWERテクノロジーを搭載。幅広いアプリケーションに対応するとともに,前世代の2倍以上という高速な処理能力を秘め,なおかつ大幅な省電力化に成功した製品である。

「その理由のひとつが,POWER6プロセサに組み込まれた最先端の仮想化技術です。分散された複数のワークロードを柔軟に統合できるため,運用管理を一元化します。具体的には,数百台のラック型サーバーをBladeCenterに統合した場合,年間数十万ドル規模のエネルギー・コストを削減できることが実証されています」(グレゴリー氏)。

今日,データセンターの消費電力を抑制することは,環境保護を「企業の社会的責任」と捉えている企業にとって重要な問題となっている。グレゴリー氏は,「IBMでも省電力化やCO2削減を目指すProject BigGreenに毎年約10億ドルを投資しています。このプロジェクトを通じてエネルギー利用効率の高いBladeCenterが誕生しました。これを提供することで,IBMは皆様の環境保護のお役に立ちたいと考えています」と語った。

さらに「BladeCenterにおける高い信頼性や堅牢性,運用管理性などは,メインフレームやオープンシステムでIBMの長い間蓄積してきた技術力が結晶されています」と述べ,そのテクノロジーの優位性についての詳細説明を,同じくSystems & Technologyグループのプロダクトマーケティング・システムグループ副社長のカール・フロイント氏に譲った。

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仮想化によるTCOの大幅な削減。ロードマップに従い,投資を保護

フロイント氏は,「ITにおける投資対効果を高めるため,電力などのコストを削減し,運用管理性を改善することが急務」と述べ,システムのエネルギー消費に関する注目すべきデータを示した。

今日データセンターにおけるエネルギー利用の内訳をみると,電力や冷却に55%が費やされ,サーバーの45%を上回っている。サーバー・ハードウエアにおいて消費されるエネルギーについても,70%が電源ユニットやメモリに割かれ,CPUは30%程度にすぎない。しかも,サーバー・リソース全体の平均使用率はわずか20%にとどまる。しかしながら,残りの80%のアイドル・タイムにおいても電力は消費され,そのほとんどが単なる熱として放出されているという。

IBM Systems & Technology Group,VP Product Marketing, Systems Group カール・フロイント氏

IBM Systems & Technology Group,
VP Product Marketing, Systems Group
カール・フロイント氏

「仮想化によってサーバーを統合し,リソースの利用効率を高められる余地が相当あるのです。エネルギー利用効率の高いBladeCenterシャーシを利用すると,電源ユニットなどを物理的に集約・削減できます。また運用管理が容易になり,利用者へのサービス品質を高めることになります」(フロイント氏)。

Power6を搭載するJS22は,システムを停めることなくノード間でサーバー上の論理区画を動的に移動できるLive Partition Mobility(LPM)を活用した仮想統合を実現する。LPMがサポートするコア数には特に制約はなく,将来のスケールアップに応えるリニアな拡張性が約束されている。

BladeCenterの優位性を物語る興味深い実証実験も披露された。シャーシからの発熱を比較する実験では,同条件で長時間連続稼働させた同クラスの他社製シャーシの筐体が95℃~98℃に達したものの,BladeCenterでは78℃を超えることはなかった。

「IBMでは今後もさらに技術開発を進めます。プロセサについては明示されたロードマップに従って着々と研究開発を進めています。2011年には予定通りPower7を発表できる見通しです」と,利用者の投資保護の点で,他社との違いをはっきりと述べた。

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適材適所に導入できるオープンかつ堅牢なインフラ

次に,BladeCenterのテクノロジー開発を担当するデュルーブ・デサイ氏が登壇し,今日の技術開発と製品動向,さらに将来の方向性について語った。

IBM Systems & Technology Group, Development	IBM Distinguished Engineer:BladeCenter Technical Strategy and Lead Architect, Hardware Designer デュルーブ・デサイ氏

IBM Systems & Technology Group, Development
IBM Distinguished Engineer :
BladeCenter Technical Strategy and Lead Architect, Hardware Designer
デュルーブ・デサイ氏

「BladeCenterの大きなメリットは,歴代のシャーシにおいてすべて互換性が確保されていることです。BladeCenterで使われているブレード・サーバーやストレージ,スイッチなどは任意のシャーシで使えます。これによって初期投資を抑え,運用管理も一元化できるため,TCOを削減できます。複数のBladeCenterを事業の拡大や成長に合わせて導入し,統合運用できるというミックス&マッチが実現できるのです」(デサイ氏)。

現在,BladeCenterのシャーシ製品のラインナップは大きく4つのセグメントからなる。革新的なモジュール技術で高密度なインフラの統合を実現し,TCO削減に貢献するBladeCenter E,ストレージやネットワーキング,サーバー,管理機能,アプリケーションをハイパフォーマンスに統合するBladeCenter H,通信業種向けに最適化されたBladeCenter TおよびHT,静音性が高く,100V電源に対応し,小規模オフィスや大企業の支店,部門レベルで導入できるオールインワン型シャーシBladeCenter Sである。

いずれもブレード・サーバーの標準化推進団体「Blade.org」の規格に準拠した,様々なソリューション・ベンダーの製品に対応するオープンな設計。しかも,既存のシステム環境にあわせて適材適所に容易に導入・運用できる点など,ここでも利用者の投資保護の視点が貫かれている。

「私どもはシャーシを故障やダウンが許されないビジネス・インフラとして取り扱っています。そしてITインフラとは,2~3年おきに交換するものではありません。他社の設計コンセプトとは明らかに一線を画しています」(デサイ氏)。

デサイ氏は長年,シャーシの堅牢性や耐久性の向上に対する冗長化に関する技術開発や,部品の徹底的な削減による故障リスクの低減などに携わってきた。従来のハードディスクに置き換わる大容量のフラッシュメモリを利用した記憶装置を搭載したブレード・サーバーや,水冷式の冷却システムの研究もさらに強化していく考えだという。

「IBMのイノベーションが顧客の利益拡大に貢献すること,それがなによりも重要なのです」とデサイ氏は繰り返し強調した。

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24時間サービスを提供するオンラインゲームのサービス基盤

フォーラムの後半では,BladeCenterを活用する先進的ユーザーが講演を行った。まず紹介されたのは,株式会社ゴンゾロッソの執行役員 小野塚強氏。同社はオンラインゲームサービスの運営を軸に,アニメーションスタジオ“GONZO”をはじめとするGDHグループと,コンテンツの企画・開発で協業する次世代型エンターテインメントプロデュース企業である。

株式会社ゴンゾロッソ 執行役員 小野塚 強氏

株式会社ゴンゾロッソ 執行役員
小野塚 強氏

「当社のオンラインゲームサービスは,BladeCenterなしには実現しえなかった」と小野塚氏は述べる。同社では従来,オンラインゲームサービスの提供基盤となるサーバーとしてラックマウント型製品を使用していたが,サービス利用者の増加とともに,膨大な処理負荷がかかるようになった。「データセンター内のサーバーを順次増強しましたが,TCOも大幅に上昇。また万が一,サーバーに故障やダウンが発生するとゲーム環境の快適性が損なわれ,利用者離れを招く事態が懸念されました」(小野塚氏)。

そこで,2006年10月よりBladeCenterをインフラとする新システムに更改した。信頼性や将来性,省電力性,サポート面などを総合的に比較検討した末での決断だった。「最終候補に残った他社製品とBladeCenterについて8時間以上の連続運用における実機検証を行ったところ,電力使用量は他社製品がBladeCenterの約1.5倍。データセンター側から1つのラックに筐体2台分までと制限を付されました。それに対してBladeCenterは省電力性に優れ,4シャーシをすべて格納可能でした。テスト環境をそのまま本番環境に移行できるシームレスな開発が可能になったのです」と小野塚氏は述べる。マレーシアやシンガポールにオフショア開発拠点を開設した同社では,今後はよりパフォーマンスの高いワークステーション・ブレードについても関心を向けている。

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世界トップ500にランクインする高性能PCクラスタに採用

続いて,同志社大学准教授の廣安知之氏が登壇。同大学の工学部 知識工学科 知的システムデザイン研究室で行われている,遺伝的アルゴリズムなどの最適化手法の並列化および知的化の研究を紹介した。廣安氏は,学生とともに1997年から,構造力学や生命科学のシミュレーションなどで用途が広がる高性能のPCクラスタの研究を開始。着実に成果をあげ,5年後の2002年には,計算性能の計測で用いられるHPL(High-Performance Linpack Benchmark)のTop500にランクインを果たすPCクラスタの構築に成功した。さらに翌2003年には1テラ・フロップスを超える演算処理能力を達成するPCクラスタを作り上げ,再びTop500の上位に名を連ねている。

同志社大学 准教授 廣安 知之 氏

同志社大学 准教授
廣安 知之 氏

「近年では,PCクラスタを利用した並列処理において,手作りのシステムからブレード・システムを活用する時代へと明らかにシフトしつつあります」と廣安氏は述べる。

すでに同研究室ではIBMのBladeCenterを利用したPCクラスタにより,1.6128テラ・フロップスを記録する実績をあげた。とはいえ,さらなる性能向上を図るには,いくつかの大きな壁を乗り越える必要性があるという。

「サーバーの高性能化にともなう発熱をいかに抑えるかが課題のひとつ。部屋のレイアウトを変更したり,大型扇風機で冷却したりするなど空調に工夫をしていますが,消費電力の増大やスペース不足など,派生する問題も見過ごせなってきました」(廣安氏)。その中でIBM製品は,各種運用管理ツールが充実しており,研究を進めるうえでは非常に助かっていると語る。「今後はManyCoreやストレージについても取り組んでいきたい。IBMをはじめとするベンダーには高性能かつ安定性のあるシステムに加え,大学とのプロジェクトの立ち上げやコラボレーションにも積極的にノウハウを提供してほしい」と呼び掛けた。

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お問い合わせ先

日本アイ・ビー・エム株式会社

http://www.ibm.com/jp/

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