IT Pro Special Blade Server ブレードサーバー特集 数多くの技術革新が市場拡大を加速近い将来にはサーバーの主力形態に

ラックマウントを超える実装密度を実現できるサーバーとして、研究機関やデータセンターはもちろんこと、一般企業からも大きな注目を集めるブレードサーバー。5年後には出荷台数が30万台を突破すると予測されており、次世代の主力サーバーとしての地位を確立しつつある。その背景には、高密度実装やメンテナンス性の高さといったブレードサーバーならではの特長が高く評価されていることもさることながら、ベンダー間の開発競争による技術革新の存在も見逃せない。ここではブレードサーバーを巡る、最近の技術革新について俯瞰してみたい。



勢いが止まらない市場拡大 5年後には30万台突破の見込み

新たな形態のサーバーとして2002年に登場し、この1〜2年の間で急速に市場が拡大しているブレードサーバー。その勢いは今後さらに拡大し、3年後には主力サーバーとしての地位を確立するだろうと予測されている。ガートナーデータクエストの調査によれば、2010年の市場規模は30万台を突破する見込み(図1)。現在サーバー市場の大部分を占めているラックマウント型やスタンドアロン型よりも、大きな市場になると指摘されているのだ。

図1 ブレードサーバーの出荷台数の実績と予測

図1 ブレードサーバーの出荷台数の実績と予測
2004年度の実績では、PCサーバー全体の4%を占めるに過ぎないが、2009年には、ラック型、スタンドアロン型の出荷台数を上回り、2010年には30万台を突破する見込みだ。

最初の頃はデータセンターや研究機関を中心に導入が進んでいたが、最近では一般企業でも導入が盛んになっている。また以前はWebサーバーなどの“フロントエンドサーバー”としての利用が多かったが、現在はアプリケーションサーバーやデータベースサーバーに適用した事例も増えている。

ブレードサーバーとは、プロセッサやメモリー、ハードディスクなどを“ブレード”と呼ばれる薄型のボードに搭載し、それらを3〜7U(1Uは約4.4cm)サイズのエンクロージャに数枚〜十数枚格納したもの。それぞれのサーバーボードが非常に薄く、まるで“刀の刃”のようであるためこの名前が付いている。その最大の特長はサーバーの実装密度が高い点にある。ラックマウント型であれば1Uサイズが最も高い実装密度になるが、ブレードサーバーはそれを超える密度を実現できるのだ。実装密度が高くなれば、必要な処理能力をより少ないスペースで得ることが可能になる。

また各ブレードを周辺機器に接続するケーブル類を、エンクロージャのバックプレーンに集約する構造になっているため、ブレードを差し込むだけでネットワークや周辺機器への接続を行うことができる点も大きな特長だ。これによって機器背面の配線をまとめることができ、サーバーの拡張や故障時の交換なども簡単に行えるのである。

ベンダー間の開発競争で急速に進む技術革新

ブレードサーバーの市場が拡大している背景としては、これらのメリットがユーザーから高く評価されていることが挙げられるだろう。省スペース化とメンテナンス性の向上が達成できれば、サーバーシステムのTCO(Total Cost of Ownership)を削減することが可能になるからだ。また最近多くの企業ユーザーが取り組んでいる“サーバーコンソリデーション”も容易になる。

その一方で、ベンダー側の継続的な努力も見逃すことはできない。ブレードサーバーを市場投入しているベンダー各社は、激しい開発競争を繰り広げており、その結果として技術革新が急速な勢いで進んでいるのだ。

まず第1に注目したいのが、最新プロセッサ搭載による価格性能比の向上である。以前のブレードサーバーは、高密度実装に伴う熱の問題を回避するため、インテルPentium3プロセッサやインテルPentiumMプロセッサ等の、クライアントPC用プロセッサを搭載する製品が多かった。しかし最近ではインテルXeonプロセッサを2ウェイで搭載する製品が多くなっており、EM64T(Extended Memory 64 Technology)対応プロセッサや、インテルItanium2プロセッサを採用する製品も登場している。

ブレードサーバーを意識した運用管理ソフトの充実も、ブレードサーバー普及に拍車をかけているといえる。ブレードサーバーの持つ運用性の高さを最大限に引き出すツールの提供はもちろんのこと、ブレードサーバーと他のサーバーが混在した環境を統合管理できるツールも提供されるようになっている。

さらに拡張性も、以前に比べて飛躍的に向上している。ブレードサーバーは1つの筐体に多数のサーバーブレードを搭載できるため、バックプレーンに装備されたI/O(特にネットワークポート)にボトルネックが生じる可能性が高い。この問題を解決するために、ファイバチャネルやギガビットイーサネット、InfiniBand等の高速インターフェースを装備する製品も増えているのだ。

SANブートで高まるシステムの耐障害性

ブレードサーバーの普及を後押しする技術は、他にも数多く存在する。その1つがSAN(Storage Area Network)ブートだ。これはサーバーブレードが稼働するために必要となるシステム領域やデータ領域をSANストレージ上に置き、SANストレージから各サーバーブレードを起動させるという技術である。従来の一般的なブレードサーバーは、各サーバーブレードにそれぞれディスクを内蔵し、そこからブートするものが一般的だった。しかしSANブートであれば、各サーバーブレードにディスクを内蔵させる必要はない。

このSANブートの最大のメリットは、サーバーブレードの障害に対して短時間で対応できる点である。もし各サーバーブレードが個別にディスクを持っているのであれば、故障したサーバーブレードを交換する際に、新しいサーバーブレードにOSやアプリケーション、データなどをリストアする必要がある。しかしSANブートであれば必要な情報はSANストレージ上に存在するため、サーバーブレード交換時にリストアを行う必要はない(図2)

図2 サーバーブレード障害時の対応方法

図2 サーバーブレード障害時の対応方法
これまでの一般的なブレードサーバーは、各ブレードにハードディスクを搭載しているため、予備サーバーブレードにOSやアプリケーションをインストールした上で切り替えを行う必要があった。しかしSANブートに対応したブレードサーバーであれば、SANストレージ上の領域を予備サーバーブレードにアタッチするだけで切り替えが行える。

またブレードサーバーの運用方法として、予備のサーバーブレードを事前に実装しておくことで故障に備えるというアプローチもあるが、この場合には予備ブレードの数を削減できる。例えば1台のブレードサーバーに、Webサーバーとアプリケーションサーバー、データベースサーバーが実装されているとしよう。もしこれら全てのサーバーブレードの障害に対応しようとすれば、少なくとも3種類のソフトウエア構成のサーバーブレードを用意する必要がある。これに対してSANブートであれば、1枚の予備ブレードでこれら3種類のサーバーブレードに対応できる。必要なソフトウエアが格納されたSANストレージの領域に“アタッチ”するだけでいいからだ。

さらに故障率そのものが低下するというメリットもある。サーバーの中で最も故障率が高いのは、実はディスクドライブである。これは日常的にサーバー運用を行っている方であれば、身にしみて感じているはずだ。SANブートであれば、このディスクの総数を大幅に削減できる。その結果システム全体の故障率も、大幅に低下するのである。

自律運用の実現に向けた取り組みも進む

ブレードサーバーの特長を活かすことで、自律運用性を高めていこうという取り組みも進んでいる。自律運用とは、システム自身が自らの運用を自動的に実行するというものだ。

例えばサーバーブレードに障害が発生した場合、この障害を運用管理ツールが自動的に検知し、予備のサーバーブレードで故障したサーバーブレードの肩代わりをさせれば、自動的に障害対応を行える。ここで重要なポイントが、ブレードサーバーなら予備ブレードを事前に装備できるという点である。またSANブートを採用すれば、予備サーバーブレードへのソフトウエア導入も必要ない。短時間のうちに障害に対応できるのだ。

また負荷が大きく変動した場合の対応も容易になる。仮に、Webサーバーへのアクセスが急増し、レスポンスがスローダウンしたとしよう。この場合は、運用管理ツールでWebサーバーの負荷増大を検知し、予備サーバーブレードをWebサーバーにすることで、処理能力を高めることができる。その後負荷が軽減した場合には、1台のWebサーバーを切り離し、再び予備に戻せばいい。

このようにブレードサーバーは、自律運用の実現に非常に向いているのである。自律運用を実現すれば、TCOのさらなる削減も可能になる。

サーバーの仮想化技術も普及推進の原動力に

サーバーの仮想化も、今後ブレードサーバーの普及を推進する原動力になりそうだ。ここでいう仮想化とは、物理的なサーバーリソースを、論理的なリソースに変換して利用する技術のこと。これによって、1台のサーバーを複数の仮想マシンに分割して異なるOSを稼働させたり、仮想マシン間のリソース配分を柔軟に行うことが可能になる。このような仮想化は仮想化ソフトウエアによって実現できるが、最近ではプロセッサメーカーもハードウエアレベルで仮想化を支援する技術の開発を進めており、その仕様書も公開されている。その一方で複数のサーバーブレードを組み合わせて、1台のSMPマシンとして構成する技術も登場している。つまり複数のサーバーブレードをとりまとめ、それを必要に応じて複数の仮想マシンに分割するという“究極の仮想化”も実現されつつあるのだ。

このような技術を活用すれば、サーバー運用はかつてなかったほどにシンプルになる。これまでは物理サーバーごとに、どのOSを搭載させ、その上でどのアプリケーションを稼働させるかを事前に決めておく必要があり、プロセッサやメモリーといったサーバーリソースも、1台の物理サーバーの中に“閉じて”いた。これに対して仮想化されたシステムでは、物理サーバーごとのOSやアプリケーションを意識する必要はない。必要に応じて仮想サーバーを立ち上げてOSやアプリケーションを導入し、サーバーリソースを配分すればいいのである。

サーバーリソースの仮想化は、サーバーコンソリデーションの推進に大きな貢献を果たすだろう。物理的なリソースを有効に活用できるため、1台のブレードサーバーにより多くのサーバー機能を実装できるようになるからだ。またこのような形でコンソリデーションが進めば、環境変化への対応も容易になる。例えば新しいサービスを提供するために新たにサーバーを立ち上げる必要が生じた場合、リソースに余裕があれば新たにサーバーを導入することなく、ブレードサーバー上に仮想マシンを設定するだけでサービスを開始できる。またリソースに余裕がなくなった場合でも、サーバーブレードを追加するだけで対応可能だ。

自律運用の実現もさらに容易になるはずだ。物理リソースを仮想化するということは、運用対象を“抽象化できる”ということに他ならない。つまり物理的な差異が隠蔽され、扱いを単純化できるのである。リソースの扱いが単純になれば、高度な意志決定プロセスを経ることなく運用管理が行える。その結果として自律運用が行いやすくなるのだ。

このようにブレードサーバーは、単にサーバーの実装密度が高いというだけではなく、実に様々な特長とメリット、そして将来に向けての高いポテンシャルを秘めている。今後主力サーバーの地位を獲得することは、必然的な流れだといえるだろう。ブレードサーバーの特長と将来性を見極め、そのメリットを最大限に引き出していくことは、戦略的なIT活用に欠かせない要素なのだ。