金融商品取引法では従来の証券取引法に比べて、情報開示制度の整備が進んでいる。なかでも,有価証券の「性質」や「流動性」に応じて,異なる規制を設けた点に注目したい。流動性の高い有価証券に関しては,「内部統制報告書」など3種類の文書の提出を義務づけた。

 金融商品取引法制における情報開示制度のポイントは3つある。(1)有価証券の「性質」や「流動性」に着目した開示制度の整備を行っていること、(2)開示規制の適用範囲を明確化したこと、そして(3)組織再編(M&A)にかかわる開示制度を整備したこと,である。ここでは,「財務報告に係る内部統制の構築」に関して重要な規定を含んでいる,(1)有価証券の「性質」や「流動性」に着目した開示制度の整備を中心に解説していく。

有価証券の「性質」「流動性」に着目した開示制度

 有価証券といっても、その性質や流動性の程度は様々であり、開示が求められる内容もそれぞれ異なる。そのため金融商品取引法では、有価証券の性質や流動性に応じて、異なる規制を施している。

 具体的には、まず有価証券の「性質」に応じて、(1)企業としての発行体自体の信用力にその価値を置く株券や社債等の「企業金融型証券」、(2)発行体の保有する資産をその価値の裏付けとする、いわゆるABS(資産流動化証券)や投資信託証券などの「資産金融型証券」に分類。そのうえで、それぞれのタイプの証券に対して、異なる開示規制を施している。

 この2つのタイプのうち、後者の資産金融型証券を「特定有価証券」として法律上定義したうえで、開示内容については資産の内容等を中心とすることとした。これは、当該資産についての情報開示を、企業全体についての情報開示よりも重視すべき、との観点からである。開示方法についても、企業全体の開示よりも簡易で柔軟な「報告書代替書面」により提出ができる、としている。

有価証券の「流動性」に着目した開示制度

 金融商品取引法においては、証券取引所に上場され、流動性の高い有価証券については、投資家保護のために、より頻繁にかつ詳細な情報開示を求めている。具体的には、原則として(1)四半期報告書制度、(2)確認書制度、(3)内部統制報告書制度が適用されることになる(金融商品取引法第2章)。

 これに対し、ファンドにおける集団的投資スキームの持分など、有価証券とみなされる「みなし有価証券」(金融商品取引法第2条第2項各号に掲げる権利)については、一般的に流動性が低く、公衆縦覧による開示の必要性に乏しいことから、原則として上記の開示規制は適用されない。

 以下では、「有価証券」に該当する場合に求められる3つの制度について詳しくみていくことにする。

 まず、四半期報告書制度とは、当該事業年度の期間を3カ月ごとに区分したそれぞれの期間(四半期)ごとに、(1)企業集団の状況、(2)対象企業の株主や役員の状況、(3)四半期連結財務諸表、などを開示内容とする報告書の提出を義務づけるものである(金融商品取引法第24条の4第1項)。従来の証券取引法では6カ月ごとの半期報告書を提出すればよかったが、提出の頻度を2倍に高めたことになる。原則として上場会社を対象とし、四半期終了後45日以内(現行の半期報告書は90日以内)に提出が義務づけられる。

 この制度は、すでに2003年4月以降、各取引所の自主ルールによって段階的に導入されているものだが、2008年4月1日以降に開始する事業年度からは、金融商品取引法により法律上義務づけられることになった。なお、半期報告書制度は四半期報告書制度に吸収される形で廃止される。

 次に、確認書制度とは、上場会社等が有価証券報告書や四半期報告書を提出する際に、それらの記載内容が法令に基づいて適正である旨を記述した文書(確認書)を併せて提出することを義務づけるものだ(金融商品取引法第24条の4の2、同条4の8)。従来の証券取引法でも2004年3月期より任意の制度として導入されたが、これを義務づけることとしたのである。