IT全般統制に向けプロジェクト管理システム導入が相次ぐ

ユーザー企業各社が、これまで属人的だった開発・運用・保守業務を一掃するために、プロジェクト管理システム(PMS)を相次いで導入し始めた。契約プロセスや個々の業務内容、進捗状況などを把握することで、システム部門の内部統制を強化する。

 大成建設や日立キャピタル、ホンダは、独自開発のPMSを今年度末から相次いで稼働させる()。日本航空やあおぞら銀行も昨年から今年にかけ、米ITM SoftwareのPMSソフト「ITM Business Suite」を導入した。

表●プロジェクト管理システムを構築中のユーザー企業
表●プロジェクト管理システムを構築中のユーザー企業
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 各社の狙いは、システム開発・運用の案件ごとに作業内容や進捗状況、外部委託契約の内容やコストを細かく入力し、詳細を“見える化”すること。6月に成立した日本版SOX法などにより、企業は内部統制の確立を求められ始めた。IT部門には、システムを開発・運用する過程で不正な取引や作業ミスが起こらないようにする「IT全般統制」が必要とされている。

 大成建設の木内里美情報企画部長は、「これまでも案件管理は行っていたが、作業の細かいところは担当者任せの部分が多かった」と反省する。そこで同社は来年3月からPMSを稼働させる。個々の案件について、作業をWBS(ワーク・ブレークダウン・ストラクチャ)と呼ばれる階層構造に分けた上で、その作業単位であるWBSコードごとに作業内容をPMSに入力。毎日、どのWBSコードについて何を実施したかを記録する。

 記録作業が増えることで現場の負荷は高くなるが、「開発や運用の質を上げるためには仕方ない。結果的には効率化につながる」(木内部長)。委託ベンダーにも同じPMSを使ってもらう。プログラムのバグ数やバグ修正数を入力することで、貢献度評価システムとしても活用する計画だ。

 日立キャピタルは、見積もりから委託契約、検収、支払いまでの業務プロセスを棚卸しし、案件ごとに業務内容を記録する。これにより、口頭発注や事後請求といった問題を防ぐ。取引条件の変更や法改正で、同社のプログラムの改修数は年間約2400件にも上る。従来はベンダーごとの委託業務内容や、月単位のコストなどしか把握していなかった。PMSを導入し、個別案件管理に換える。その際、改修費のほか、社内人件費、ハード/ソフトの償却費用など、コストの細目も増やし、IT投資の適正化を図れるようにする。

 年間200件のシステム開発案件があるホンダは、急な仕様変更といった開発過程で明らかになった問題点などをPMSで管理する。案件の優先度や問題の大きさに応じて、人材や予算を追加投入できるようにするためだ。「個人の“頑張り”で問題を減らそうとする風潮をなくし、会社として臨機応変に対応できるようにする」と鈴木克明IT部IT戦略室開発管理ブロック ブロックリーダーは語る。2005年5月、Excelベースでプロトタイプを作成。その利用実績を基に、今年度末をめどにRDBMSを用いた仕組みに刷新する。

 ユーザー企業のPMS導入機運の高まりから、これまでインテグレータを中心に販売していたPMSベンダーも、ユーザー企業の開拓に本腰を入れ始めた。「Changepoint」を販売する日本コンピュウェアは、9月にユーザー企業向けの営業部門を組織化した。米ITM Softwareは、年内にも日本法人を設立する計画だ。