日本版SOX法(J-SOX)対応で手間がかかるのが、監査用文書を作成する「文書化」。この作業を支援する国産ツールが相次ぎ登場している。先行する海外製品に比べ、「業務フロー図を慣れたやり方で記述できる」など、国産ならではの使い勝手の良さを打ち出す。

 「日本版SOX法や日本企業の業務を徹底的に研究して開発した」。三菱電機インフォメーションシステムズ(MDIS)の中野隆雅 内部統制事業推進プロジェクト部長は、10月中旬に出荷予定の文書化ツール「TOOLMASTER/IC」について、こう説明する。

 今年6月以降、国産ベンダーが開発した文書化ツールが相次ぎ登場している。MDISのほかに、チェンジビジョンが9月、タクトシステムズが7月にそれぞれ新製品を出荷。今年1月に文書化ツールを出荷したケイ・ジー・ティー(KGT)と6月に出荷した富士ゼロックスはともに、使い勝手を改善した新版を9月に投入した()。

図●日本版SOX法対応を支援する主な国産の文書化ツール
図●日本版SOX法対応を支援する主な国産の文書化ツール
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 各社が提供する文書化ツールは、業務の処理手順を示す「業務フロー図」や、財務報告に関連するリスクとその防止・低減策(コントロール=統制)を記述した「リスク・コントロール・マトリックス(RCM)」など、内部統制の監査用文書の作成や管理を支援するもの。作成した文書に基づき、内部統制の整備状況や運用状況のテストを支援する機能を備える製品もある。

 現在、日本で入手可能な文書化ツールは15製品を超えるが、その多くは米国製。「文書化は現場の担当者が手掛けるケースが多く、ツールの使い勝手は重要。この点を海外製品との差異化ポイントとしてアピールしていく」と、チェンジビジョンの熊谷恒治セールスマーケティング部長は話す。

 その典型が、業務フロー図の作成機能。海外製品の多くは、業務フローを縦向きまたは横向きのどちらかで記述する。これに対し、KGTの「Ci-Tower」、チェンジビジョンの「JUDE/Biz」、タクトシステムズの「VisiSOX」などは、業務フロー図を縦向きでも横向きでも作成できる。KGTの井出由紀子 インターネットソリューション事業部企画グループマネージャは、「忙しい現場の担当者が使うことを考えると、どちら向きに業務フローを描くかといった細かい面まで配慮すべき」という。

 JUDE/Bizでは、業務フロー図を「産能大式」で記述できる。これも国産製品ならではの機能だ。産能大式は、日本企業が上場審査用に作成する書類で、よく利用する記述方式。「文書化の取りまとめ役を務める可能性が高い経理部門の担当者や、監査を担当する会計士は、このやり方になじんでいる」(チェンジビジョンの熊谷部長)。

 ツールの価格についても、製品によって違いはあるが、海外製品に比べると国産のほうが安いケースが多い。

 国産の文書化ツールにはメリットがある一方、まだ導入実績が少ない点に注意が必要だ。各ベンダーは、製品の機能に対して監査法人にアドバイスを受けるなどの工夫をしているが、日本版SOX法対応に十分な機能を備えているかを、ユーザー企業自身が判断する必要があるだろう。