まずはC#プログラミングの開発環境を整えましょう。その後,簡単なサンプル・プログラムの作成を通して,Visual C# 2005 Express Editionの操作やデバッグ方法を説明します。

 ここでは,C#言語の基本的な文法を解説することで,C# の簡単さや,.NETプログラミングの面白さを皆さんに味わってもらおうと思います。初めてのプログラミングをC#で始めてみようと考えている方, これまでいろいろな言語でプログラミングに挑戦してきたけれども挫折してしまった方,.NETには興味があるけれどどの言語を選択したらいいのか迷っている方はぜひC#でプログラミングに取り組んでみてください。そして,最終的には自力でC#によるプログラミングでアプリケーションを作ることができるようになってもらえればいいな,と考えています。

 文法の解説とは別に,ちょっと高度なトピックについても毎回1テーマずつ選んで紹介していきます。いずれも使いこなせば非常に有用な機能ばかりですから,文法の解説ではちょっと物足りないという人は,ぜひ実践してみてください。そのぶん,プログラミングの勉強が全く初めての方には少し難しいかも知れません。基礎が一通り出来上がってからのお楽しみに取っておいてもいいでしょう。

「標準規格」は単なるお飾りではない

 C#は,米Microsoftが.NET Framework上で動作するアプリケーション開発のために作った言語です。比較的新しい言語であるため,C/C++,Java,Visual Basic(VB),Delphiなど, 高い評価を受けている先発の開発言語から良いところをたくさん取り入れる一方,それらの言語の弱点を克服することも目指して設計されています。実際に,C#はシンプルで習得しやすく,コードの安全性が高く,しかも大規模なプログラムの開発にも対応しやすい言語に仕上がっています。

 一つのベンダーが作り出したという点では,同じMicrosoft 製言語の代表格であるVBも同じです。しかし,C#はVBと違って,Ecma International,ISO/IEC(国際標準化機構/国際電気標準会議)などの国際的な標準規格になっています。2005 年3月には,JISの制定も受け,日本の標準規格にもなりました*1。標準規格であるということは,ベンダーの都合などでむやみに言語仕様が変更されたりしないということを意味します。それは教育機関での実習教育用の言語として採用が促進されたり,企業内の開発業務で標準的な開発言語として採用される機会が増えることにつながります。つまり,C#という開発言語を知るということは,これからのスタンダードのための準備をしておくということでもあるのです。

C#プログラムの開発環境を整える

 さっそくC#プログラミングの準備をしましょう。ここでは,マイクロソフトが2005年末に出荷を開始した「Visual C# 2005 Express Edition」(以下,VC# 2005と書きます)を利用します。「Visual Studio 2005のホームページ」からExpress Editionへ進むと,オンラインでセットアップできます。

 VC# 2005のセットアップは,ウィザードに従って進めていくだけの簡単な作業で完了できます。途中,「インストールオプション」の設定で,「インストールする製品(省略可)を選択してください」と尋ねてきます(図1)。この画面では,上下に二つ並んだチェックボックスのうち,上のチェックボックス(Microsoft MSDN 2005 Express Edition 日本語版)にチェックを入れてください。下のチェックボックス(Microsoft SQL Server 2005 Express Edition x86)はデータベース・アプリケーションの開発で必要になることがありますが,以降の記事の範囲では必要ありません。なお,Express Editionに付属のMSDNドキュメントにはインストール対象の言語に関係する仕様や機能の情報のみが含まれます。.NET Framework全体の仕様および機能を調べるためには.NET Framework SDKを別途入手しインストールしてください。

図1●VC# 2005のインストール・オプション
図1●VC# 2005のインストール・オプション

 セットアップが完了すると,ウィザードは「セットアップが完了しました」という画面になります。これで,VC# 2005 のセットアップは完了しました。お疲れ様でした。

作りながらVC# 2005の操作を覚えよう

 まずはVC# 2005の使い方を確認していこうと思います。数行だけプログラムを入力してもらいますが,中身がわからなくても一向に構いません。とにかく手を動かしてみてVC# 2005の操作を体験してみてください。

 まずは[スタート]メニューから「Visual C# 2005 Express Edition」を選び,VC# 2005を起動しましょう。VC# 2005のウィンドウが表示されたら,画面一杯で利用できるように最大化してください。VC# 2005は,ソフトウエアを開発する際に便利な様々な機能を1本にまとめたツールです。そのようなツールを「統合開発環境(Integrated Development Environment)」または簡単に「IDE」と呼びます(図2)。

図2●VC# 2005のIDE。最大化しても1024×768ドットでは表示しきれない部分がある
図2●VC# 2005のIDE。最大化しても1024×768ドットでは表示しきれない部分がある
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 様々な機能を詰め込んであるため,隅から隅まで使いこなすのは大変です。しかし,取りあえずメニューバーのすぐ下に表示されている[標準]ツールバーの,それも左のほうの使い方がわかれば十分です*2図3)。他のWindowsアプリケーションでおなじみの「切り取り」「貼り付け」などのボタンもあります。その一方で,開発ツールならでは考え方に対応したボタンもあります。短いプログラムを実際に作りながらVC# 2005を操作してみましょう。

図3●[標準]ツールバーの主な機能
図3●[標準]ツールバーの主な機能