Part4からは,大型総合スーパー(GMS)の業務と情報システムについて解説していく。Part4では,どの商品を,どれだけ,いくらで店舗に投入するかという「マーチャンダイジング」から出発するGMSの基幹業務プロセスについて詳しく見ていこう。

 読者の皆さんは普段,どのようなところで買い物をしているのだろうか。弁当なら会社近くのコンビニエンスストア(CVS),衣料品なら百貨店,そして食料品なら自宅の近所のスーパーマーケットといったところが一般的かもしれない。

 このように小売業には多様な業態があるのだが,CVSよりも品揃えが多く,百貨店よりも気軽に立ち寄れる店として,イオン(旧ジャスコ)やイトーヨーカ堂,ダイエーといった「大型総合スーパーマーケット」を利用することも多いのではないか。このイオンやイトーヨーカ堂のように,衣料品や食料品,日用雑貨,住居関連商品などを総合的に品揃えする大規模総合スーパーを,「GMS(General Marchandise Store)」と呼ぶ。

 GMSはスーパーとは言っても,「百貨店」と区別がつきにくいほど大型の店舗もあるが,GMSと百貨店は販売方法の違いで区別できる(図1)。GMSは顧客が自ら商品を選んで,自分で商品を精算レジまで運ぶ「セルフ販売方式」が主体なのに対して,百貨店はいわゆる「対面販売」が中心であるという違いである。Part4とPart5では,こうしたGMSの業務と情報システムを採り上げていくことにしよう。

図1●総合スーパーを含む小売業の業態分類表<br>(経済産業省「商業統計」を基に作成)
図1●総合スーパーを含む小売業の業態分類表
(経済産業省「商業統計」を基に作成)
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異業種との競争が激化

 GMSは,GMS同士の競争に加えて,例えば衣料品なら「セレクトショップ」のような専門店と,家電なら薄利多売で急成長している専門量販店といった具合に,GMS以外の企業との間でも,生き残りをかけた激しい競争を余儀なくされている。

 では,GMSが生き残るためには何が必要なのだろうか――。それは「日々,どうすれば商品が売れるかを考え,実行する」こと以外にはない。言い換えれば,GMSの「マーチャンダイジング(MD)サイクル」をいかに効率化,高度化できるかが問われているのだ。「マーチャンダイジング」という言葉が出てきたが,これは顧客が求める商品を,「適切な時期と価格,量で提供するのに必要な活動すべて」を指す言葉である。

 そして適切なマーチャンダイジングを実施するには,商品の品揃え計画から発注,検品,値付け,棚割り・陳列,販売,そして検証という一連のプロセスをきっちりこなす必要がある。これらのプロセス全体を1つの「業務サイクル」として捉えたものが,MDサイクルなのだ(図2)。

図2●マーチャンダイジング・サイクル(MDサイクル)の概要
図2●マーチャンダイジング・サイクル(MDサイクル)の概要