この講座では,我々の日常生活に欠かせない存在になったコンビニエンス・ストア(CVS)と大型総合スーパーの業務とシステムについて解説する。Part1では,CVSの店舗と本部に分けて,それぞれが担う業務の流れと,それを支える情報システムについて概観していく。

 コンビニエンス・ストア(以下,CVS)は今や,現代人の“生活必需品”と言える存在だ。読者も通勤途中に新聞や雑誌を買ったり,帰宅の際に弁当とビール,おつまみを買うなど,「我が家の冷蔵庫代わり」として便利に使っている人が多いことだろう。

 CVSが我々の生活にこれほど定着したのは,CVSの各チェーンが常に消費者ニーズを敏感に捉えて,利便性の高い新サービスを導入してきたからだ。実際に,宅配便の取り次ぎやDPE(写真の現像・焼き付け・引き伸ばし)サービス,コピーサービス,公共料金の収納代行などはほとんどのCVSチェーンが実施しており「CVSサービスの定番」として認知されている。

 この他にも,マルチメディア端末を使ったデジタルカメラの画像印刷サービスや興行チケットの発券サービス,ATM(現金自動預け払い機)を使った入出金や振込みサービスなどを多くのCVSチェーンが提供。より多くの人に,いっそうの「便利さ」を提供すべく,最大手のセブン-イレブン・ジャパン以下,各CVSチェーンは激しい競争を繰り広げている。

 Part1では,CVSの店舗とCVSチェーン本部における,業務と情報システムの流れを見ていこう。

30坪の店舗に3000品目

 CVSの商圏,つまり各店舗がどれくらいの範囲の顧客を対象にしているかと言うと,一般に都市部で半径300メートル,住宅街で500メートル,郊外で1000メートルとされている。この商圏内から1日に1000人弱の来店があり,顧客1人当たりの購買単価が600円から700円というのが一般的な値である。

 都市部や住宅街では徒歩で来店する顧客が多く,固定客の比率が高い。そのため1人当たりの来店回数も,1週間に3回~4回と,郊外店に比べて多いという違いがある。

 これだけ多い来店客に満足して商品を購入してもらうために,CVSは平均で約30坪という狭い売り場面積の中に,3000品目弱もの商品を並べている。その主力は何といっても食品である。

 実際に,あるCVSチェーンでは「ファストフード」と呼ばれる米飯・調理パンや惣菜などが全体の3割,ソフトドリンクや菓子類といった加工食品が3割,そして牛乳や乳飲料,パンなどが1割強といった具合に,全体の7割以上を食品が占めている。残りの2割ほどが,雑誌やゲームソフト,日用品などの売り上げである。

 売り場が狭いというハンデがありながら,CVSチェーンが消費者のニーズに合った商品やサービスを提供し続けられるのは,店舗と本部が強い信頼関係を築き,互いの役割を明確にしているためだ。「個人商店」では必要な商品を必要な分だけ店舗に並べるのは到底,無理。つまりCVSはフランチャイズ・チェーン(FC)システムがあるからこそ,実現している業態なのである。

 このFCという制度は,加盟者(店舗のオーナー)と本部が,互いに独立した事業者である点が大きな特徴だ。加盟者は,本部から商品供給や経営ノウハウ,運営資金の与信といった様々なサポートを受けることで,店舗の運営に注力し,その対価として,粗利益の一定割合をロイヤリティとして本部に納める。本部はこれを店舗の運営と維持のために再投資するという関係が成り立っている。

 図1は店舗と本部が実施する主な業務について整理したものだ。店舗にとって最も重要な業務は「店舗の運営管理」である。商品の発注・受け入れや,接客・販売,店舗内外の清掃,店員(パート・アルバイト)の募集や採用,給与の支払いといった管理などが該当する。

図1●コンビニエンス・ストアにおける店舗と本部の役割分担<br>フランチャイズ・チェーン(FC)制を採るCVSは店舗と本部が役割分担することで,多様な商品を店舗に取り揃えつつ,24時間営業することを可能にしている
図1●コンビニエンス・ストアにおける店舗と本部の役割分担
フランチャイズ・チェーン(FC)制を採るCVSは店舗と本部が役割分担することで,多様な商品を店舗に取り揃えつつ,24時間営業することを可能にしている
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 一方,CVS本部は店舗をサポートし,チェーン全体の売り上げを拡大するために必要な業務を担う。具体的には,新商品の開発や商品供給体制の構築,情報システムの提供,広告宣伝,陳列棚や冷蔵庫などの販売設備の設置・改廃,簿記会計の代行サービス,定期的な実地棚卸し(商品の在庫数の確認)などを担当している。

 では店舗が担当する業務のうち,発注,検品,接客,食品の廃棄などを順に見ていこう。