ルーターは,ネットワークの要である。ただし,一般に「ルーター」と名乗って売られている製品は。それほど単純なものではない。いろいろな仕事をこなすために多彩な機能を備えている。では,ルーターに要求される仕事とは何か。Part1では,そのあたりをじっくりと探っていく。

 ルーターはネットワークの要である。ちょっとした規模の企業ネットワークならルーターが必ず使われている。

ネット間でIPパケットをやりとり

 しかし,「ルーターってどんな装置ですか」とあらためて聞かれたら,あなたはどう答えるだろうか。市販のルーターとはどんな機械で,どんな機能を持っているのか。通信事業者やプロバイダの大型ルーターと企業ネットワークで使うルーターの違いは何か。家庭で使うブロードバンド・ルーターとの共通点はどこにあるのか。

 実は「最近のルーター」の共通点を一言で正確に定義するのはかなり難しい。ルーターはさまざまなネットワークで使われているので,バリエーションが多く,ルーター機能を持っているのにルーターと名乗らないネットワーク機器も増えている。

 あえて共通点を絞り込むなら「二つ以上のネットワークを相互接続する装置」ということになるだろう。この場合の接続とはネットワーク層,平たく言えばIPパケットのレベルで通信データを中継することを指す。つまり,ルーターとは二つ以上のネットワークの間でIPパケットをやりとりできるようにする装置である。

 ただし,一般に「ルーター」と名乗って売られている製品は,それほど単純な装置ではない。いろいろな仕事をこなすために,多彩な機能を備えている。では「ルーター」に要求される仕事とは何か。このPart1では,そのあたりをじっくりと探っていく。

使われる場所は3カ所

 疑問を解くための説明に入る前に,そもそも世の中にはどんなルーターがどこで使われ,どんなネットワークを相互接続しているのかを確認しておこう。便宜上,扱える回線の速度やパケットの処理能力で三つのクラスに分けてみた。

 まずは「コア・ルーター」。インターネット・サービス・プロバイダのネットワークを相互接続したり,ほかのプロバイダのネットワークとつなぐために使われる。背丈を超えるほど大型で,ギガ・ビットを超える高速ネットワークを相互接続する能力を備えている。価格は安いものでも数千万円,高いものだと億を超える。

 次は「センター・ルーター」だ。このクラスの機器のおもな用途は,WAN回線を介して本社ネットと支店のネットワークなどを相互接続すること。通信事業者の回線サービスを使って,本社のネットワークと支店のネットワークを結んだり,プロバイダと企業ネットを結んでインターネットにつなぐ。本社を中心に,支店やプロバイダをスター型につなぐことから「センター・ルーター」と呼ばれる。

 このクラスに入る製品は幅広く,種類も多い。価格は100万円前後から数千万円あたりまで。上の方の機器はコア・ルーターとして使われることもある。

末端で使う機器は種類が豊富

 支社や営業所内のネットワークをWAN回線につなぎ,本社に置かれたセンター・ルーターへアクセスするために使われるのが「エッジ・ルーター」である。本社(センター)から見て端(エッジ)に置くルーターなのでこの名がある。1対1の接続に使われることが多いので,センター・ルーターに比べると処理能力は低い。

 このクラスの製品は安いものなら数万円,高いものでも100万円前後である。汎用の製品から特定のWANサービスに特化したものまで,いろいろなタイプがある。

 上位の機種は処理能力が高いだけでなく,センター・ルーターとの接続に使うWAN回線の種類をいろいろ選べたり,機能を追加できたりと拡張性が高い。安い製品は使えるWAN回線が決まっているなど,用途が絞られている。家庭向けのブロードバンド・ルーターは,用途を極端に絞ったエッジ・ルーターの一種と言える。

 このほか,かつてはエッジ・ルーターとセンター・ルーターの中間に当たるクラスの機器として「ローカル・ルーター」と呼ばれるものがあった。しかし,最近はレイヤー3(スリー)スイッチと呼ばれる専用機器に置き換わっている。