最新のWindows ServerであるWindows Server 2003は,サーバー専用のOSである。それまでのWindows NT 4.0およびWindows 2000は,同じ名称のOSにサーバー版とクライアント版が用意されていた。ちなみにWindows Server 2003のクライアント版は,Windows XPである。クライアント向けWindowsと異なるWindows Serverの特徴として挙げられるのがActive Directory(AD)である。ADのサービスを提供できるのは,Windows Serverのみである。

 Windows Serverの歴史は,1993年8月に出荷が開始された「Windows NT 3.1」に始まる。「NT」は「New Technology」の略で,当時MS-DOS上に実装されていたWindows 3.1とは一線を画す新しいOSとして開発された。完全な32ビットのOSで,プリエンプティブなマルチタスク機能を備える。当時のユーザー・インターフェースはWindows 3.1と同じであった。なおバージョン番号は,当時既に発売されていたWindows 3.1との整合性を保つため,Windows NTの最初のバージョンには「3.1」が付けられた。

 その後Windows NTは,開発コード名「Daytona」と呼ばれたWindows NT 3.5を経て,1996年に「Windows NT 4.0」にバージョンアップした。Windows 95と同じユーザー・インターフェースを備えた。サーバー版である「Windows NT Server 4.0」は,Windows 95と同様な操作性を備えた手軽に利用可能なサーバーOSとして,大量に導入された。

 そして2000年には,プラグ・アンド・プレイに対応した「Windows 2000」にバージョンアップ。Windows 2000は,管理性や信頼性を向上したOSで,そのサーバー版である「Windows 2000 Server」は,本格的なディレクトリ・サービスである「Active Directory」を新た備えた(図1)。さらに,暗号化ファイル・システムやディスク・クオータの機能を備え,Windows NT 4.0では別モジュールとして提供されていたターミナル・サービスやInternet Information Service(IIS)が統合された。最新のサーバーOSであるWindows Server 2003の原型となったOSである。

図1●Active Directoryの役割<br>ドメイン・コントローラにあるディレクトリ・サービスのデータベースでユーザー情報などを一元管理する。管理者には一元管理,ユーザーにはシングル・サインオン,開発者には開発効率の向上と,それぞれの立場にメリットをもたらす
図1●Active Directoryの役割
ドメイン・コントローラにあるディレクトリ・サービスのデータベースでユーザー情報などを一元管理する。管理者には一元管理,ユーザーにはシングル・サインオン,開発者には開発効率の向上と,それぞれの立場にメリットをもたらす
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 Windows Server 2003は,2003年にバージョンアップした。これまでのWindows NT 4.0およびWindows 2000は,同じ名称のOSにサーバー版とクライアント版が用意されていたのに対して,Windows Server 2003はサーバー専用OSとなった。ちなみにWindows Server 2003のクライアント版は,Windows XPである。

 Windows NT 3.1からWindows NT 4.0,Windows NT 4.0からWindows 2000へのバージョンアップと比べると,Windows 2000からWindows Server 2003へのバージョンアップの規模は小さい。その証拠に,カーネル・バージョンはWindows 2000の5.0に対してWindows Server 2003は5.2である。ちなみにWindows XPのカーネル・バージョンは5.1,Windows Vistaは6.0である。

 なお,2006年に出荷が始まった「Windows Server 2003 R2」は,Windows Server 2003のマイナー・バージョンアップ版で(マイクロソフトは「リリース・アップデート」と呼ぶ),Service Pack 1(SP1)と,フォルダ単位のクォータ機能やActive Directoryフェデレーション・サービス,分散ファイル・システムの差分圧縮転送など,いくつかの新機能を追加したOSである。

4つのエディションに加え64ビット版も用意

 Windows Server 2003 R2には,4つのエディションが用意されている。(1)「Windows Server 2003 R2, Web Edition」,(2)「Windows Server 2003 R2 Standard Edition」,(3)「Windows Server 2003 R2 Enterprise Edition」,(4)「Windows Server 2003 R2 Datacenter Edition」である。ただし,Web Editionは,日本語版には用意されていない。

 さらにこれらx86(32ビット)版に加えて,x64(64ビット)版の(5)「Windows Server 2003 R2 Standard x64 Edition」,(6)「Windows Server 2003 R2 Enterprise x64 Edition」,(7)「Windows Server 2003 R2 Datacenter x64 Edition」が用意されている。

 各エディションの違いは,対応するCPUの数やメモリー容量である。

 Standard Editionは,最大4CPU/4Gバイトのメモリー(32ビット版),最大4CPU/32Gバイトのメモリー(64ビット版)に対応する。Windows NTからの主要な用途である部門サーバー向けのエディションだ。

 Enterprise Editionは,全社サーバーなどに向けたエディションである。最大8CPU/32Gバイトのメモリー(32ビット版),最大8CPU/1Tバイトのメモリー(64ビット版)に対応する。フェイルオーバーによって耐障害性を高めるMicrosoft Cluster Service(MSCS)が利用可能であるなど,Standard Editionよりも大規模なシステムを対象としている。

 さらに大規模なシステムを対象とするのがDatacenter Editionである。最大32CPU/64Gバイトのメモリー(32ビット版),最大64CPU/1Tバイトのメモリー(64ビット版)に対応する。MSCSも利用可能である。