システム開発の工数/コストに使う見積もりの手法を解説する。見積もりの手法はいくつかあるが,複数の手法を組み合わせることで,より精度の高い見積もりを出すことができる。それぞれの特徴を踏まえ,どの工程でどの手法を使うのがよいかを理解しよう。
見積もりの手法には大きく分けて「類推」「係数モデル」「ボトムアップ」の3種類がある(表1)。係数モデルならFP法やCOCOMO/COCOMOIIなど,ボトムアップならWBS法と,それぞれよく使われる標準的な手法が確立されている。
3種類の手法は,それぞれに向き不向きがあり,開発工程や用意できる材料によって使い分けるのが現実的だ。図1に三菱電機 神戸製作所で作成した「見積もりガイドライン」を例示した。3段階に分けてどの工程でどの手法を使って見積もりを実施すべきかを定義している。
標準的な見積もり手法は使いづらいと感じて,独自に工夫して見積もり手法を開発した会社や担当者もある(表2)。帳票/画面やロバストネス図など,見積もり時に自分が用意しやすい材料を基に見積もりのロジックを定義しているのが独自手法の特徴だ。
以下,種類ごとに各手法のメリットとデメリットを見ていこう。
類推法:初期見積もり
類推法とは,過去の類似システムとの比較から,開発するシステムの規模や工数を類推する見積もり手法。予算獲得時など,超上流工程の初期見積もりで使われることが多い。要件定義以降はほとんど使われない。
● メリット
要件定義が完了していなくても,ある程度根拠のある工数やコストを算出できる。用意する材料はユーザーの業種,業務,ユーザー数,データ量など。同業種や同業務のシステムを開発した経験があれば,それとの差分を考慮して見積もれる。基幹システムなら,会社規模から売り上げの%で算出することもある。
● デメリット
そのプロジェクト特有の要件があまり加味されない。担当者の勘や経験に左右される部分が大きいため,精度的にも難がある。
類推見積もりでは実績値と50%前後,乖離することも珍しくないようだ。