Part1では,LAN機器を確認するとともに,TCP/IPとLANの違いをはっきりさせよう。

 まず最初に,身の回りにあるLANを眺めてみよう。図1は,典型的なオフィスLANまず最初に,身の回りにあるLANを基に作成したイメージ図だ。

図1●典型的なオフィスのLAN
図1●典型的なオフィスのLAN
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 最も身近なLAN機器はパソコンだ。パソコンの裏側に回ってみると,モジュラ・コネクタで接続されたLANケーブルが見えるはず。今では多くのパソコンがモジュラ型のLANコネクタを標準装備している。

 パソコンのうしろのLANケーブルをたどっていくと,コネクタがたくさん並んだ小さい箱にぶつかる。机の端に置かれているかもしれないし,机の間に隠されているかもしれない。これがリピータ・ハブ。LANケーブル上の電気信号を増幅する機械だ。

 最近ではリピータ・ハブの代わりに廉価なLANスイッチが使われるケースも増えた。リピータ・ハブもLANスイッチも,ケーブルを流れる電気信号をそのまま中継する増幅器といえる。違うのは,LANスイッチは相手がいるケーブルにだけ信号を中継すること。この機能によって,LAN全体から無駄なデータをなくすことができる。

 そのほか,オフィスで目立つ存在としてはプリンタがある。その近くには,部署単位で運用しているサーバーもあるかもしれない。これらもまた代表的なLAN機器だ。

 リピータ・ハブやLANスイッチの先にあるLANケーブルは,床下に潜り込んでいることが多い。オフィスの床下のすき間を使って,別のオフィスや別のフロアに延びている。通常,そのLANケーブルをたどっていくと「サーバー・ルーム」と呼ばれる部屋に通じている。ここはセキュリティを確保するために管理者しか入れないようになっている。「マシンルーム」とか「システム管理室」とか呼ばれることもある。

 LANケーブルがサーバー・ルームに入ると,まずLANスイッチにつながる。これは,オフィスに置かれる廉価版と違い,多数のLANポートを接続できる大型モデルであることが多い。このLANスイッチの役割は,オフィスから集まってきた何本ものLANケーブルを束ねること。LANスイッチの先にはルーターがつながっている。

 このルーターは,企業ネットワークの要となる機器だ。社内サーバーと社内LANをつないだり,社内LANとインターネットをつなぐ。

 ルーターの先はファイアウォールがある。インターネットと社内LANの間で,不正侵入を排除する機器だ。その先にはWAN(ワン)ルーターがあり,通信回線でインターネットと接続している。

LANだけでは動かない

 さて,ここまで出てきたLAN機器を整理してみよう。パソコン,プリンタ,リピータ・ハブ,LANスイッチ,ルーター,サーバー,ファイアウォール,そしてWANルーターである。

Q.1 LANとIPは一緒に開発された技術なのか?
いいえ,別々に開発されたものです。IPは1960年代に,LAN(イーサネット)は1970年代に研究開発が始まり,それぞれ80年代の初頭に仕様が固まりました。ただし,IPとイーサネットは独立に開発されましたが,相互運用については開発段階から研究されていました。ちなみに,当初TCP/IPは一つの仕様として開発されていましたが,役割を明確にするためにIPとTCPに分けられました。