Part1では,代表的なサーバー用途を例にとって,スケールアップの考え方について紹介していく。

 業務システムの維持コストを抑えるには,用途や規模に過不足なく対応するサーバー・ハードウエアを選ぶ必要がある。まず,システムの用途や目的,規模をきちんと定義する。この上で,用途に応じた適材適所の性能改善策を講じていく(図1)。

図1●性能向上のポイントは多岐にわたる<br>業務システムを構成するサーバー・ハードウエアの性能を上げる方法はたくさんある。コストに見合ったバランスの良い性能アップを図らなければならない
図1●性能向上のポイントは多岐にわたる
業務システムを構成するサーバー・ハードウエアの性能を上げる方法はたくさんある。コストに見合ったバランスの良い性能アップを図らなければならない
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 ユーザーは,利用するソフトウエアの性質やハードウエアに関する基礎知識が必要になる。そこで,本講座では,サーバーの主要な用途とハードウエア構成のヒントを中心に解説する。

用途ごとに性能を見積もる

 業務用途に応じて,最適なサーバー・ハードウエアのパターンは決まる。ここで,用途やユーザー数などから,サーバーにかかる負荷や必要なディスク容量,メモリー容量などを求める作業を「サイジング」と呼ぶ。

 サーバー機には拡張性がある。サイジングの中でも,適切な構成やより高速なデバイスへの置き換えなどでサーバーの性能を高めていく手法を,「スケールアップ」と呼ぶ。Part1では,代表的なサーバー用途を例に,スケールアップの考え方について紹介する。

ファイル・サーバーの性能向上

 ファイル・サーバーは,搭載する共有ディスクの容量決定が先決である。サイジングのコツは,ディスク容量やユーザー数に見合ったメモリーを搭載することと,ディスクのアクセス分散,ネットワークの負荷分散などを検討することである。

 メモリーの確保は最重要である。扱うディスク容量とユーザー数の増加に合わせて,メモリー容量を増やす必要がある。具体的にはディスク・キャッシュ用メモリー,ネットワーク・バッファ用メモリーを見積もる。ディスク・キャッシュのヒット率を80%以上に維持するには,経験上,ディスク容量の0.1~0.5%程度のメモリーを確保するとよい。

 次に,ネットワーク・トラフィックの緩和が重要である。最低限,スイッチング・ハブを使い,ネットワークの伝送を全2重にする。パケットの衝突がなくなり,帯域が2倍になり,最大で30%程度,伝送効率が向上する。複数のNIC(Network Interface Card)を使ってネットワークを分割することも検討する。