Part1では,パソコンから無線LANを経由して有線LANのイーサネットにデータを送る過程を追って,無線LANの仕組みを説明しよう。
ケーブル要らずで,手軽にLANを作れる無線LAN。2000年春ごろから低価格な製品が続々と登場し,あっという間に身近になった。家やオフィスですでに導入した読者も多いだろう。それでも,無線LANのアダプタ・カードを入れたパソコンがどうやってデータを無線で送っているのか,きちんと把握していない人もいるだろう。
Part1では,パソコンから無線LANを経由して有線LANのイーサネットにデータを送り出すまでの過程を追って,無線LANの仕組みを把握しよう。
つなぐには前もって準備が必要
無線LANの構成要素は二つ。一つは,クライアント。無線LAN対応のPCカードを挿したノート・パソコンであることが多い。もう一つは,アクセス・ポイント。無線LANのかなめとなる機器である。クライアント同士の無線通信を中継したり,クライアントからイーサネットへ通信を中継するブリッジの役割を果たす。
では,さっそく無線LANが通信する仕組みを見ていこう。
イーサネットでネットワークにつなぐとき,IPアドレスなどの設定をしておけば,スイッチやハブのポートにケーブルを差し込むだけですぐに使える。その一方,無線LANでは,つなぐ前にちょっとした準備をしなければならない(図1)。
必ず設定するのが「ESS-ID(イーエスエスアイディー)」という設定項目。SSID(エスエスアイディー)という場合もある。ESS-IDは,複数ある無線LANを識別するための名前。アクセス・ポイントにはあらかじめESS-IDを設定しておく。そのアクセス・ポイントと通信するには,クライアントも同じESS-IDを設定しなければならない。
もう一つ,前もって設定する項目がある。「WEP(ウェップ)」キーである。クライアントを認証したり,無線で送り出すデータを暗号化するために使う文字列のこと。これはオプションなので必須ではないが,もしアクセス・ポイントに設定していれば,クライアントにも同じ値を設定しなければつながらない。
ESS-IDで無線LANに接続
さて,これで準備は整った。クライアントが無線LAN経由で,イーサネット上の相手にデータを送り届けるまでを追ってみよう(図1)。
初めに,クライアントは,アクセス・ポイントが使っている周波数を調べる。アクセス・ポイントは常に,さまざまな制御情報を伝える「ビーコン」と呼ぶ電波を出している。その周波数をクライアントは検知する。
次に,クライアントは自分のESS-IDを使って,同じESS-IDを持つアクセス・ポイントに接続する。これで,クライアントは,その無線LANに物理的につながったことになる。ここまでは,イーサネットでいえば,LANにつながるハブやスイッチにケーブルを差し込んでつないだことに相当する。
さらに,もしWEPキーをアクセス・ポイントに設定していれば,それを使ってクライアントを認証する。