複数サーバーのバックアップで最初にポイントとなるのは,テープ装置を統合するかどうかがである。サーバーごとにテープ装置を付けて管理のみ集中する方法や,バックアップ用サーバーを用意してそこに付けたテープ装置を共同利用する方法,SANを構築する方法---がある。

 バックアップ対象のサーバーが複数台になると,サーバー1台のバックアップの場合とは別な要件が出てくる。“複数サーバーのバックアップを統合して管理したい”というニーズだ。

 もし,サーバー1台の延長で管理すればどうなるのか。各サーバーごとにバックアップ・ツールを導入し,それぞれにテープ・ドライブをつないで,テープ管理もそれぞれ実施する。バックアップ環境の構築コストの増加もさることながら,管理者の作業が増えていくことが大きな問題になる。一般に企業単位で見れば,様々な業務システムが別サーバーで運用されており,非効率な状況が発生しているはずだ。

 ここでは,バックアップ環境において複数サーバーをいかに効率的に管理するか,に焦点を当てる。複数サーバーであっても,基本的な設計方法や各サーバーでの注意点は,ここまで見てきた内容と同じである。

 複数サーバーを効率的に管理する方法は,大きく分けて3種類ある(図1)。(1)各サーバーでそれぞれテープ・ドライブを用意し,バックアップ・ツールで監視などを統合する,(2)LAN経由でバックアップ用サーバーを各サーバーから共有する,(3)各サーバーをFibre Channelを介してストレージ群と接続して通常運用のディスクも統合管理する(これを一般に「SAN(Storage Area Network)」と呼ぶ),である。

図1●複数台サーバーがある場合のバックアップ構成の選択肢<br>選択肢は大きく三つある。管理のしやすさ,サーバーの設置場所,データ量やコストによって,最適な構成が決まる
図1●複数台サーバーがある場合のバックアップ構成の選択肢
選択肢は大きく三つある。管理のしやすさ,サーバーの設置場所,データ量やコストによって,最適な構成が決まる
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 以下では,各方法を順に見ていく。

テープは各サーバー,操作は統合

 手軽な順から各方法を説明していく。まず,各サーバーには,サーバー1台の時と同様,テープ・ドライブをそれぞれ接続する方法である。各サーバーではそれぞれ独立にバックアップする。この場合のコストや管理者の作業は,単にサーバー1台の場合を台数分増やした形になる。システムを構築するコストは最も低く,管理の統合度合いも最も低い方法である。

 この構成で統合できるものは,バックアップのスケジュール設定と監視である。多くのバックアップ・ツールは,複数サーバーのスケジューリングを一つの画面で集中管理できる。また,バックアップの成否などを監視し,レポートを作成する機能も用意する。この構成では,テープの取り換えは,各サーバーごとに実施する必要がある。各サーバーを置く現場で管理者を立てられるのであれば運用は可能だが,非効率だろう。

 この構成が他の構成と比べて良いところは,サーバーの追加があっても,他のサーバーのバックアップ環境に影響しないことだ。他の構成では,テープ・ドライブを複数サーバーで共有するため,各サーバーの変更が他のバックアップ環境に影響してしまう。

ネットワークを介してバックアップ

 LANを使って,複数サーバーで一つのテープ装置を共有する方法がある。一般に,“ネットワーク・バックアップ”と呼ばれる。この方法は,バックアップ用サーバーを1台用意し(アプリケーションが動作しててもよい),そのサーバーに接続したテープ装置に,LANを介して別のサーバーからバックアップ・データを転送する,というもの。バックアップ対象となるサーバー側では,エージェントと呼ぶプログラムを動作させるだけでよい。

 LANを使う場合,バックアップ・データの転送速度が課題となる。バックアップのトラフィックと同時に,別のファイル転送のトラフィックが流れるような場合には,特に注意が必要だ。スイッチング・ハブを使って,バックアップのトラフィックをその他のトラフィックと分ける,といった対応を考えなくてはならない。仮に,バックアップを取る時間帯がトラフィックが低いから大丈夫だとしても,安心はできない。障害が発生した時間に,LANが他のトラフィックで満たされている状況であれば,リストアをすばやく実行できなくなるからだ。

 「SAN(Storage Area Network)」は,複数サーバーをFibre Channelスイッチで結び,テープ装置やディスク装置と接続する方法である。基本的には,各サーバーに付いていたディスクを巨大なディスク装置で一元化した,というものである。これにより,ディスクの有効利用を図る狙いがある。バックアップは,このディスク装置に統合したデータを,テープ装置にFibre Channelを通じてバックアップするため,LANを経由しない。ディスクも一元化されているため,バックアップの管理も比較的容易になる。