Part2,Part3ではシステム基盤に関する知識のうち,性能に焦点を当てて解説した。ここでは通信回線の利用率やシステムの稼働率などを実際に計算し,性能設計を行ってみよう。題材は,性能設計を理解するのに効果的な情報処理技術者試験(ソフトウェア開発技術者)から選んだ。

問1 データベースアクセスとネットワーク通信を含む応答時間の見積もり(平成15年午後I問1)

遠隔データベースのアクセスに関する次の記述を読んで,設問1と2に答えよ。

 D社では東京,大阪のそれぞれで社内LANを運用しており,東京には30台,大阪には20台のパソコン(以下,PCという)が接続されている。両者は,ゲートウェイと専用の通信回線(全二重)で接続されている。各PCからアクセスされる3種類のデータベース(DB-X,DB-Y,DB-Z)を東京,大阪のいずれに配置するべきか検討している。は,3種類ともすべて東京に配置した場合の例である。

図●データベースの配置例
図●データベースの配置例

 ゲートウェイ間の通信回線速度は,双方向それぞれ64kビット/秒である。PCからDBへのアクセス1件当たりのLANや通信回線を流れるデータ量は,PCからDB,DBからPC,ともに平均4kバイトである。東京,大阪のPC1台当たりの各DBへのアクセス頻度は,のとおりである。

表●PC1台当たりのアクセス頻度
表●PC1台当たりのアクセス頻度

設問1:図のようにDBを配置したとして,ゲートウェイ間の通信回線の利用率(%)を求めよ。

設問2:図のようにDBを配置したとして,通信回線の平均データ転送待ち時間(秒)を求めよ。
答えは,少数第2位を四捨五入して少数第1位まで求めよ。
ただし,東京~大阪間を転送されるデータが,通信回線が使用中のために送信側で待たされる平均時間は,待ち行列理論に従い,次の式で表されるものとする。

平均データ転送待ち時間 =(データ1件の平均転送時間)×(通信回線利用率)÷(1-通信回線利用率)