PPPoE(point-to-point protocol over Ethernet)は,ブロードバンド・インターネットの標準プロトコルといえる。PPPoEは,LAN環境でPPP(point-to-point protocol)を使うためのルールを規定したプロトコルである。Part1では,PPPの4大機能について,その概要を解説する。

 NTT東西のフレッツ・ADSLやBフレッツと契約すると,「フレッツ接続ツール」と呼ぶパソコン向けのソフトが配られる。これがないと,インターネットに接続できない。なぜなら,インターネット接続事業者(プロバイダ)のユーザー認証を受けることや,プロバイダからIPアドレスを通知してもらうことができないからだ。

 このフレッツ接続ツール,その実体はPPPoE(ピーピーピーオーイー:PPP over Ethernet)というプロトコルのクライアント・ソフトである。ユーザー認証もIPアドレス取得も,このPPPoEが実行する。

 PPPoEはブロードバンド・インターネットの標準プロトコルといえる。

PPPoEはPPPを使うためにある

 紹介したように,PPPoEクライアントの代表的な機能はユーザー認証とIPアドレスの取得である。具体的には,プロバイダが用意するアクセス・サーバーとデータをやりとりし,自分がそのプロバイダの正規ユーザーであることを承認してもらったり,プロバイダからIPアドレスを割り当ててもらったりする。

 ただしこれらの機能は,PPPoEならではの機能ではない。パソコンOSやISDNルーターもダイヤルアップ接続するために標準的に備えている。こちらはPPP(ピーピーピー:point-to-point protocol)と呼ぶプロトコルが実行する。

 では,PPPoEとPPPはどのような関係にあるのだろうか。実はPPPoEは,LAN環境でPPPを使うためのルールを規定しただけのプロトコルである。ユーザー認証などの規定はない。つまりPPPoEクライアントとは,LAN環境でPPPを実行するためのソフトなのである。

本来の役割は正確なデータ伝送

 ISDNからFTTHまで,プロバイダ接続における必須プロトコルとして広まりつつあるPPPだが,PPP本来の役割はユーザー認証やIPアドレスの取得機能ではない。

 PPP本来の役割は,電話回線やISDNといったWAN(ワン)回線で直接結ばれた機器の間で,伝え合いたいデータを正確に,かつ効率よく届けることである。このような隣り合う機器だけでやりとりされるプロトコルは,データリンク層プロトコルあるいはレイヤー2プロトコルと呼ばれる。

 データリンク層プロトコルは,自分が運ぶデータをいくつかの塊に分け,その塊を単位に送信する。塊はフレームと呼ばれる。フレームを送り始めるときは,「これからデータを送るよ」という意味の同期信号を何回か送信する。受信側にデータが届くことを前もって伝えるためである。PPPでは,「01111110」というビット列が同期信号として使われる。