PPPoEをうまく使うには,PPPoEのしくみを知っておく必要がある。Part3では,PPPoEとのしくみと実際に活用する際に知っておきたい実践情報を紹介する。

 PPPoE(PPP over Ethernet)は,パソコンやルーターがイーサネットでPPPを動かすために開発された。その用途は大変広い。NTTはADSLサービスの「フレッツADSL」や,FTTHサービスの「Bフレッツ」でもPPPoEを使う。PPPoEはブロードバンド・インターネットの標準プロトコルといえる。

 PPPoEをうまく使うには,PPPoEのしくみを知っておく必要がある。正しく理解していないと,複数ユーザーで利用できなかったり,通信そのものができなくなったりする。

 そこでPart3では,PPPoEのしくみと,実際に活用する際に知っておきたい実践情報を紹介することにしよう。

PPPをMACで運ぶ

 まず最初に,PPPoEがどのように使われるのか確認しよう(図1)。ここでは,PPPoE対応のブロードバンド・ルーターを使うケースを示した。

図1●PPPoEの基本的な役割<br>WAN回線を介してレイヤー3プロトコル(たいていはIPパケット)を正確かつ効率的に運ぶために用いる。LANにおけるMACフレームと同等の位置づけにある。
図1●PPPoEの基本的な役割
WAN回線を介してレイヤー3プロトコル(たいていはIPパケット)を正確かつ効率的に運ぶために用いる。LANにおけるMACフレームと同等の位置づけにある。
[画像のクリックで拡大表示]

 まずパソコンがIPパケットをMACフレームでルーターに送信する。ルーターはMACフレームからIPパケットを一度取り出すと,IPパケットの先頭にPPPヘッダーとPPPoEヘッダーをくっつけて,これを再びMACフレームの中に入れる。ここでPPPoEフレームができるわけだ。

 ルーターがADSLモデムに送り出したPPPoEフレームは,最終的にプロバイダのアクセス・サーバーへ届けられる。こうして,ブロードバンド・ルーターとアクセス・サーバーは,PPPをやりとりできるようになる。

 PPPoEといっても,そこで運ばれるPPPは通常のPPPと何ら違いはない。ただし一つだけ使用条件が加わる。それは,PPPのデータ部分(ペイロード)の最大長が1492バイトとなることである。これは,イーサネット・フレームが運べるパケットの最大値が1500バイトであることと,PPPoEヘッダーとPPPヘッダー(両方で8バイト)が加わるためである。

PPPoEの仕事は相手を探すこと

 では,PPPoEのセッション確立手順を見ていこう。

 動作は,PPPoEクライアントが開始メッセージを流すことから始まる。これはクライアントがPPPoEの通信を引き受けてくれるPPPoEサーバーを探すメッセージである(図2)。

図2●PPPoEの通信
図2●PPPoEの通信
PPPoEの通信は最初にPPPoEの通信を成立させるための一往復のやり取りのあとは,PPPと全く同じになる。PPPoEにはサービス名やサーバー名で通信相手を特定するオプションもあるが,国内のサービスでは今のところ使われていない。

 開始メッセージを受け取ったPPPoEサーバーは,クライアントにオファー・メッセージを返す。これはクライアントの要請に応える用意があるというメッセージである。オファーを受け取ったクライアントはセッションの開始を要求するメッセージを送り返す。このあと,サーバーがセッションIDを指定した確認メッセージを送り返して,PPPoEセッションが確立される。この直後からPPPのLCPネゴシエーションが始まる。