Part3では,CATVインターネットのスピードがそのように実現されているのか。その背後にある技術を追っていこう。
CATVインターネット(図1)の最大の特徴は,とにかくスピード。数Mビット/秒は当たり前で,最近では最大30Mビット/秒以上をうたうサービスもある。おまけに,CATV局から家までの距離が100mだろうが数km離れていようが,同じスピードでつながる。ADSLのように,電話局から遠いユーザーほどスピードが落ちるようなことはない(図2)。サービス・エリア内であれば,だれでも同じになるわけだ。
このPart3では,CATVインターネットのスピードがどのように実現されているのか――背景にある技術を追っていこう。
TV放送で空いた周波数帯を使う
CATVインターネットでは,テレビ番組放送用のインフラを使って,数十Mビット/秒ものスピードを出す。これほど高速化できる理由は,データをやりとりする信号に高い周波数までを利用しているからである。
高い周波数まで使えば,それだけ周波数帯域を広く確保できるようになる。すると一度に送れるデータ量も増える。
具体的には,0~770MHzの信号をやりとりしているのが,最近のCATVネットワークである。このうち,90M~600MHzはTV放送用である。この帯域を6MHzごとに区切って一つのチャンネルが使う(図3)。
データ通信に使うのは,TV番組放送で使っていない部分である。上り方向(ユーザーからCATV局方向)のデータ通信には,10M~55MHzの間から任意の1.6M~6.4MHzを切り出して利用している。一方,下り方向は600M~770MHzの間の6MHzを使う。
つまりデータ通信用には,周波数帯域が上りと下りで別々に割り当てられ,利用できる周波数帯域の大枠が決められている。この枠内のどの部分を実際に割り当てているかは,CATV会社ごとに違う。
CATVインターネットは,TV放送に利用していない空いている周波数帯域を使うとは言え,上りと下り別々に最大約6MHzの帯域を使う。これは電話回線を使うADSLの下りで6倍,上りだと60倍も広い帯域である。