日経BPガバメントテクノロジーでは、定額給付金に向けた自治体の対応状況について自治体の現場からの意見を聞いた(調査期間は2009年3月1日~3月16日、メールマガジン、サイトで呼びかけ、Webサイトのアンケートフォームへの記入を依頼)。多忙な時期だったためか回答9団体と少なかったが、十分な検討時間が取れないことで対応に苦慮する自治体の現場の様子が垣間見れる。また「定額給付金業務がなぜ自治事務なのか」という根本的な疑問も寄せられた。

 情報システムについても、国からの情報が遅く後手後手に回らざるを得なかったようだ。定額給付金は例外的な案件とはいえ、自治体には、制度改正などの「変化に強いシステム」が今後ますます必要となってくるだろう。以下、個別意見を紹介する。


●情報システム関連

  • 大手ベンダーのシステムがまだ来ていない。カスタマイズを行う時間が取れないため、便利な機能も追加できない。後から総務省はいろいろと制度を決めてきているので、システム対応が難しい部分が出てきた。(3万人以上~10万人未満)
  • 情報システム取り扱い事業者との調整に苦慮。また、国の決議の遅れに伴い、システム導入運用スケジュールがタイトになっており、一番の悩み事になっている。(3万人以上~10万人未満)
  • 給付に関するシステムにおいて、既存のパッケージがまだ少ない上、新規構築するには時間が足りず苦慮している。(10万人以上~30万人未満)
  • 精査不十分のまま住民情報システムを管理している業者に随契発注(3万人以上~10万人未満)
  • ベンダーのよると総務省からの資料が少ないらしく、システムの完成が遅れている。(3万人以上~10万人未満)


●庁内体制、周知広報/問い合わせ対応 、その他

  • 申請書入力のためのシステム、申請書の印刷及び封入封緘をアウトソーシングしている。(発注した事業者は)固定資産税の納付書をはじめとする年度末の通常の処理に加え、多くの自治体を受け持っているために、スケジュール調整等が厳しそうである。(3万人以上~10万人未満)
  • 申請書を発送してから第1回目の振込みまでの間は、夜間土日の電話対応は必要と思うが、実施に関しては未定。(3万人以上~10万人未満)
  • 3月号広報誌に定額給付金についての記事を載せるかどうか検討していたが、県の指導より(総務省見解)、関連法案が通過するまでは、給付に関することはしない方がよいとのことで、定額給付金については見送り。
  • 小さい自治体だと、兼務辞令が出ていると思う。これが結構厳しい。(2倍働くのも難しく)どちらも中途半端になっている。(3万人以上~10万人未満)
  • 定額給付金対策室を設置した。担当課へ兼務という形で担当職員を配置。現在、課長、1係長、2担当者で事務を行っている。2担当者は別の課と兼務しており、両課の業務遂行が大変。(3万人以上~10万人未満)
  • 人員不足を理由に専従職員による担当部門を置かなかったために、責任の所在が不明確で機能不全に陥っている。申請書を送付すれば、電話問合せや窓口への来庁等への対応を迫られるが、年度末の業務ピークに加え、人事異動による混乱の中、申請書を送付するという最悪のシナリオになりつつある。(3万人以上~10万人未満)
  • 初期体制設置の遅れもあり、寄せ集め人材となっている。(3万人以上~10万人未満)
  • 広報誌で周知予定。その他チラシを毎月作成予定。問い合わせは、こちらから電話では行わない方向。時代が変わって、振り込め詐欺対応のため、安易に電話連絡が出来ない時代である。(3万人以上~10万人未満)
  • 特に外国人に対する対応について、帰国間近の人へが給付を急がれるケースへの対応策を検討しておかなければならない。また、現金給付方法が未定であり、特に注意が必要となることから、対応策に苦慮している。(3万人以上~10万人未満)
  • 混乱を避けるため、現金支給の開始時期を、申請書発送後2カ月後とすることを考えている。(3万人以上~10万人未満)
  • 国の法案が通らず右往左往する中で、確定情報を広報できず十分な周知が行えないなどの苦労があった。(10万人以上~30万人未満)
  • 特に外国人に対して、申請書に添付する書類(外国人登録証、口座番号など)をどこまで求めるか担当者レベルでは知識不足であり、その調査から作業が必要であり、時間がかかる。(3万人以上~10万人未満)
  • 委託内容のモデルケースの提示不足(3万人以上~10万人未満)
  • まだ給付までの作業で明確でない部分が多いため、そのつど迅速にシステムの改善対応がなされることを求める。(3万人以上~10万人未満)
  • 共通システムの構築と配布が必要(3万人以上~10万人未満)
  • 国も大々的に広報してほしい。(3万人以上~10万人未満)
  • 申請書に添付する本人確認書類の写しと金融機関の預金通帳口座の写しが求められているが、中山間地の多い当市ではコピーサービスも行うところが遠いので、郵送申請は少なく窓口申請や寝たきり独居世帯への訪問受付が大部分と予想される。職員が確認すれば添付書類を省略できるようにしてほしい。(10万人以上~30万人未満)
  • いまだ定額給付金業務がなぜ自治事務か分からずにいる。所得制限を設けるかどうかだけが自治体の裁量で、その他は「技術的助言」で全国一律に事務を行わせることが地方分権から見ても不可解。経済対策を主目的に行うのであれば使途方法は自治体に任せ、地域にあった有効なものとすべきではないか。(10万人以上~30万人未満)
  • 役所は1年で1番の繁忙期を迎える。対応が厳しい。(3万人以上~10万人未満)