■「編集部だより」を始めます

 こんにちは。ITpro電子行政/日経BPガバメントテクノロジーの編集を担当している黒田隆明と申します。ここでは、取材のこぼれ話や、気になったニュースの感想などをメモ書きのような感覚で気軽に公開していこうと思います。月2回に更新してく予定です(…というゆるい感じでスタートさせていただきます)。

 何らかの形で、ごくわずかでも「編集部だより」の情報が皆様のお役に立てることがあればと思っています。ご意見、ご感想、情報のご提供など、ぜひページ下のコメント欄にいただければと思います。どうぞよろしくおねがいします。


■5月29日

 情報通信政策フォーラム(ICPF)の主催セミナー。山田肇・東洋大学経済学部教授による情報アクセシビリティに関する講演を聴講してきました。講演内容をまとめた記事では米国のアクセシビリティ基準改定の話題にフォーカスしましたが、山田教授によると、EUでも今年7月から情報アクセシビリティの標準作成に動き出す予定だそうです。3年後からはEU全域のすべての国における政府調達において、情報アクセシビリティを満足する機器、サービスを購入することが要件となるような制度に変える方向で動いている、とのことでした。「e-Inclusion」(全員参加の情報社会を作っていくこと)という考え方に基づいての情報化計画の一環だそうです。

 講演後、山田教授に別途お話をお伺いしました。日本の場合、公共系のWebアクセシビリティに関する意識は高まってきているのですが「機器のアクセシビリティについては、調達においてあまり意識されていない」「確かに国も障害者を雇用しているが、霞ヶ関に通勤している障害者の数は少ないと思う。身近に障害者がいないことも、意識の高まらない理由の一つではないか」とのことでした。


■5月30日

 東京財団の「地方行政に関するオープンフォーラム(第3回)~自治体を輝かせるための処方箋~」を聴講してきました。パネリストは福嶋浩彦氏(東京財団研究員、前我孫子市長)と菅原敏夫((財)地方自治総合研究所研究員)のお二人。テーマは「団塊の世代と地域づくり~新しい公共を目指して~」。

 リタイアした団塊のリソースを呼び寄せて地域活性化に生かしたい……といった目論見の自治体はけっこうあるのではないでしょうか。しかし、現実は難しい面もはらんでいるようです。 福嶋氏からは、我孫子市長時代の経験を踏まえて「リタイア後の男性の地域デビューには問題が多く、下手をすると地域コミュニティーをつぶしてしまいかねない」という厳しい指摘が。現役時代に「えらい人」だったときの振る舞いを改めることができず、ずっと地域でがんばってきた女性メンバーのやる気を削いでしまうということが多々あるようです。団塊世代に限らずリタイア男性の地域デビューの成否は「会社人間から地域人間への自己改革」ができるかにかかっている、という言葉が印象的でした。

 また、「自分に閉じてしまい、他人と出会わないで自己実現の道を探ろうという隘路に陥ってしまう人がけっこういる。地域の包容力は、(簡単なことではないが)他人との出会いの場を用意することにある」という菅原氏の発言も印象に残りました。


■5月31日

 29日に箕面市が、大阪高裁判決を受けての住民票コード削除について記者発表を行いました。骨子は、(1)大阪高裁判決に基づき住民票コードを削除する、(2)住基ネットでの自己情報の運用を希望しない他の住民についても、“選択制”実現に向け努力する、という2点です(箕面市の資料では選択制という言葉は使っていません)。

 箕面市住民基本台帳ネットワークシステム検討専門員が3月30日に答申を発表したときは、箕面市まで取材に行ったのですが(関連記事)、今回は行けなかったため、箕面市に依頼して発表資料をFAXで送ってもらいました(取り寄せた資料を編集部でスキャンしたpdfファイルをこちらからダウンロードできます)。また、広報課に電話で以下の点を確認しました。

  • 実施は早くても住民記録システム刷新を終えた11月以降となる予定
  • 6月議会の議案には、この件は入っていない。
  • 今回のような理由で「職権消除」を実施するのは、適法であるかどうかは不透明
  • システム改修コストが1000万円~1500万円という報道があったが、箕面市としてコメントしたものではなく、発表媒体による推定である(編集部注:専門員の答申などを参考に推定したと思われる)

 今後、具体的にどのような方法で削除するのかなど、この話題は引き続き追いかけていきたいと思います。