「e-デモ会議室」の廃止を知らせる「e-デモ・ジュニア」のトップページ
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 三重県は、同県のWebサイト上で運営を続けてきた県民参加型掲示板「e-デモ会議室」を、3月31日をもって廃止する。同会議室は、2002年5月に開設して以来、約4年で運営を終了することになる。

 廃止の理由について三重県では「電子会議室自体は、ネット上の特性などから制約が伴い、議論のツール、広聴のツールとしては限界がある。民間主体でSNS等による安全・安心なコミュニケーションの場が既に実現しており、県民どうしの意見交換の場は、民間の領域にその機会を譲っていくべきではないかと考えた」(三重県庁広聴広報室e-デモクラシー推進グループ)としている。

 4月からは、新たに「e-コメント」(仮称)という後継サービスを開始する。参加者がほぼ自由にテーマ設定し発言できたこれまでとは異なり、議論を前提としない。まず県がテーマを設定して、意見や提案を受ける形式になる。加えて、電子アンケートの機能を持つ「e-モニター」(仮称)も実施する。

 「e-デモ会議室」は、北川正恭知事(当時)が県政改革の一環として始めたもの。ITを活用した先進的な取り組みとして、全国から注目を集めた。電子会議室(BBS)を活用して、県民の地域づくりへの積極的な参画や県政への参画を進めることを目的に掲げていた。県民が自由にテーマを提案して議論を行う「県民発テーマ会議室」、行政の課題について議論する「ネットで県民参画」、青少年を対象とする自由な意見交換の場「e-デモ・ジュニア」会議室の3メニューを揃えた。

 2005年度の実績は、アクセス数が20万9037、投稿数が7604、ユーザーとして登録した人の数が1548人、会議室数28と、いずれも前年度より増えている。また「目的に沿った成果」として、住民主体の活動展開や団体の結成、行政への提言などにつながったものが、3年間で16 件あった。

 それでも廃止を決めた理由として、(1)発言者の固定化や意味不明な投稿の多発などの原因で議論を通じた結論や提案を出せなかった、(2)県からの情報提供や積極的な参画がなかった、(3)費用対効果の点から十分な成果水準に達しなかった----以上の3点が挙げられる。

 (1)では、登録者数の5分の1以下の302人の発言が全体の90%を占めており、最も独占度の低い会議室でも、上位3人の発言が50%近くに達した。(2)は、県の発言の割合が、県民発会議室では0.5%、ネットで県民参画が4.2%しかなかった。(3)は、これまで人件費を除いて合計で約1億1000万円を投じてきたが、それに見合った成果が挙がっていない。三重県では、こうした状況を打開するため、一般の県民も交えた座談会を開くなど対応策を講じたが、結局廃止という結論に達した。

 なおe-デモ会議室は、2005年7月28日に、運営しているサーバーにフィッシング詐欺用のプログラムが埋め込まれているのが見つかったため、それ以来現在まで運用を停止している。現在は、ユーザー登録が不要で携帯電話からも書き込める、青少年向けの「e-デモ・ジュニア」のみを運営している。

(本間 康裕)