「地域SNSを考えるセミナー」の様子
「地域SNSを考えるセミナー」の様子

 県や市、町など特定の地域にテーマを絞ったSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)が全国各地に広まっている。1月27日に東京・品川で開催された「地域SNSを考えるセミナー」(主催:CANフォーラム)における、国際大学GLOCOM研究員の庄司昌彦氏の発表によると、現在確認できるだけで14の地域SNSが運営されていることが分かった。

 運営主体も自治体、NPO、企業、個人と様々だ。例えば、熊本県八代市が運営する「ごろっとやっちろ」、総務省の実証実験として自治体と地域の団体が運営する「おここなごーか」(新潟県長岡市)、「千代田地域SNS」(東京都千代田区)のほか、民間企業が運営する関西ブロードバンドが運営する「こまち」(京都府)、「CLOVER」(兵庫県)、個人運営の「ふちゅうじん」(東京都府中市)、システム開発企業、Clickおきなわが運営する「YUNTAKU SNS」(沖縄県)などだ。なかには、佐賀県鳥栖市に本拠地を置くJリーグの「サガン鳥栖」が運営する「サガン鳥栖SNS」といった例もある。

   セミナー後半のパネルディスカッションでは1月に相次いで誕生した地域SNS「ドコイコSNS」(香川県)、「VARRY(ベイリー)」(福岡県)の責任者も急遽参加した。「地域情報サイトと連携させて情報を還流させるようなSNSを目指す」(ドコイコ代表取締役社長の河野大輔氏)、「おいしい店に行ったり、スポーツをするなど、現実の場に人が集まるためのSNSを志向している」(VARRYを運営するカプセルコーポレーション代表取締役の案浦澄隆氏)と、それぞれの地域SNSのコンセプトを語った。

 また、自治体初のSNSとして話題になった八代市の「ごろっとやっちろ」は12月末時点で登録会員数が1800人を超え、そのうち8割が地元市民だという。八代市行政管理部情報推進課主任の小林隆生氏は「最近ではSNS内に『ごろっと盛り上げ隊』というコミュニティが自発的に組織されたり、子育てや食べ歩き活動も活発になってきている」と状況を報告した。

 ディスカッションではそのほか、SNS同士の連携、(全国規模のサービスの1コミュニティではなく)地域に拠点を置いたSNSから個人が情報を発信する意味、地域SNSによる地域イメージ向上の可能性、携帯電話との効果的な接続、事業として成立するかなど、地域SNSの可能性や課題について積極的な意見交換が行われた。(黒田隆明)