2005 デジタルデバイド解消のための国際カンファレンス(韓国・ソウル)

「2005 デジタルデバイド解消のための国際カンファレンス」とは?

総務省情報通信政策局情報通信利用促進課課長補佐
有馬伸明

老テク研究会事務局長/
早稲田大学国際情報通信研究センター客員研究員
近藤則子

 去る2005年12月2日、ソウル・ロッテホテルにおいて、韓国・情報通信部(MIC)韓国情報文化振興院(KADO)などが主催する「デジタルデバイド解消のための国際カンファレンス(2005 International Conference for Bridging the Digital Divide)」が開催された。

■「デジタルオポチュニティ:情報活用で便利になること」をクローズアップ

基調講演を行ったジャン・A.G.M.ファンダイク博士
基調講演を行ったジャン・A.G.M.ファンダイク博士

 今回のテーマは「Paradigm Change of Digital Divide toward Digital Opportunity(「“デジタルオポチュニティ:情報活用で便利になること”の問題へと向かうデジタルデバイドのパラダイムチェンジ」)。基調講演を行ったトエンテ大学(オランダ)のジャン・A.G.M.ファンダイク博士は「デジタルデバイドは、端末の普及格差や操作能力格差の問題から、情報そのものの利活用能力の格差が広がっていることのほうが深刻だ」と、デジタルデバイドの拡大に警鐘を鳴らしていた。

 今年が第2回となるこのカンファレンスだが、昨年の第1回は同じくソウルの淑明女子大学校で行われた。昨年は、各国の政策紹介(韓国、日本、香港、台湾)に加え、情報アクセシビリティ(特にウェブ・アクセシビリティ)に関するセッションがメインセッションとなっており、日本からも日本規格協会から我が国のJIS X 8341シリーズの紹介を行った。これは、ちょうど韓国でアクセシビリティに関する基準を作ろうとしていたタイミングだったからのようだ。また、あまり日本ではデジタルデバイドの文脈で議論されることはないが、女性のIT利用も一つの話題として取り上げられていた。これが昨年のカンファレンスが女子大学で実施された理由の一つかもしれない。

 これに対して、今年のカンファレンスでは、各国の政策紹介(韓国、日本、英国)は昨年と同様であるが、それ以外は全く昨年と異なる話題となった。まず一つ目は、各国(韓国、日本、米国)のシニアネット活動など高齢者のICT利用促進に関する話題。二つ目は、KADOが実施している海外支援に関する話題。KADOの海外支援活動の紹介に続き、KADOの支援を受けたベトナム、ブルガリアの政策担当者から説明があった。

 昨年のカンファレンスでは、参加者は学生と思われる若い人たちがほとんどだったが、今年はうって変わって、韓国のシニアの人たちや、韓国IT教育プログラム(KOIL)で韓国に招へいされていると思われる東南アジアや中南米、東欧の人たちなど、バラエティに富んだ参加者であった。

■ユニークな韓国情報文化振興院(KADO)の役割

 昨年、今年の両方のカンファレンスとも、KADOという組織が主催者として名を連ねている。実は、このカンファレンスのスポンサーはKADOであり、実際の会議は概ねKADOの職員が取り仕切っていた。KADOは「国内及び国際的なデジタルデバイド解消をリードする」ことをビジョンとして掲げている、韓国・情報通信部の外郭団体であり、2002年の「デジタルデバイド解消法」改正により、これまでいくつかあった組織を再編して設立された。

 KADOの取り組みとしては、地域の情報アクセスセンター(ITプラザ)の運営や中古PCの配布、IT利用のための支援機器の研究、高齢者・障害者へのIT教育の提供や情報倫理教育などの国内向けの取り組みのほか、主に途上国の政策立案者を招く韓国IT教育プログラム(KOIL)や途上国へのITボランティアの派遣、情報アクセスセンターの設置など、海外向けの支援活動も展開している。8年前からアジア、アフリカ、中南米など87カ国の政府の情報政策担当に韓国で研修を実施。一方、約3000人の技術支援ボランティアの海外派遣や、韓国内の中古パソコンをロシアや中国、アフガニスタンなど19カ国へ6000台以上寄付するなどさまざまな情報格差解消政策を実行している。国連のボランティアプログラムと連携して優秀な大学生をボランティアとして世界に派遣している。すでに64カ国にのべ1500人もの大学生たちがパソコンボランティア活動を行った。

 KADOのようなデジタルデバイド解消に関わる専門の組織があるだけでも、韓国のデジタルデバイド解消に向けた取り組みに対する「意気込み」がうかがえる。以下では、有馬が参加した分科会1のレポート、そして、近藤が参加した分科会2のレポートをお届けする。