先進自治体リーダーによるリレートーク
住民満足度を高める電子自治体の実現(3)


横浜市総務局IT活用推進課担当課長
 齋田豊氏

■コールセンターの問い合わせが10万件を突破

齋田豊氏の写真
横浜市総務局
IT活用推進課
担当課長
齋田豊氏

 2005年11月、横浜市のコールセンターの問い合わせ件数が10万件を突破した。2004年3月の試験導入から1年8カ月目での達成ということになる(通常の問い合わせのみ。イベント対応などスポット業務は含まない)。

 2005年4月から本稼動しているコールセンターの利用は、まずは順調に進んでいるといえそうだ。2005年度の平均問い合わせ件数は1日平均324件、閉庁時間帯(土日含む)に来る問い合わせは5割を超える。「コールセンターへの問い合わせのうち、84%がコールセンター内部だけで完結している。また、電話のたらい回しが減り、開庁時間外での対応数も多い」(齋田課長)。2005年6月に利用者に対して実施したアンケートでは「応対満足度」が5点満点で平均4.9点、「今後も利用したい」と回答した割合は97%を占めた。

 横浜市では、2004年3月から約1年間、市内全18区のうち港南区、旭区、青葉区の3区を対象としたモデル事業から開始した。予算額7800万円で、オペレーター5名、スーパーバイザー2名、市民からの問い合わせに答えるマニュアルに当たるQ&A集を約2300項目用意して、モデル事業を開始した。モデル事業期間中は全市展開ではなく広報の手段にも制限があったため、利用件数は1日67件(全2万5639件)と伸び悩んが、土日をはじめ50%以上の利用者が市役所の閉庁時間帯に利用したという結果を受け、「市民サービスの向上が図られている」と判断し、2005年4月より全市展開となった。

■図表 横浜市のコールセンターの実績
図表 横浜市のコールセンターの実績

 横浜市のコールセンターでは、基本的にコールセンターのオペレーターが一元対応し、大半のものはオペレーターで応対を完結する。ここでは、「中華街のおいしい店を教えて」といった公的には判断できない問い合わせにも対応している。「『インターネットで検索した結果ですが』とひとことを加えたうえで回答している」(齋田課長)という。オペレーターでは回答できない内容の問い合わせは、スーパーバイザーが対応する。そして個人情報を含むような問い合わせや相談は業務所管課に転送し、職員が対応する。水道や粗大ゴミの受付などは、既設の水道局インフォメーションセンターや粗大ごみ受付センターへ転送する。

 コールセンターでは、集中的な問い合わせなどの電話を吸収することで、職員の電話応対業務を軽減する役割も果たす。例えば、2005年9月から10月にかけて実施した国勢調査の問い合わせ窓口はコールセンターに一本化し、約3万7000件もの問い合わせをコールセンターで受けている。このときは、アウトソーサーと通常業務とは別に1800万円で短期契約を結び、「オペレーター20人を配置して対応したが、それでもまだ足りずオペレーター5人をさらに追加した」(齋田課長)という。

■コールセンターへの業務集中化でコスト削減も

 また、昨年度は業務の集中化で約2000万円のコスト削減効果も上がっているという。具体的には、従来は外部委託してきた敬老特別乗車証の更新受付に関する対応をコールセンターに変更したことで約1000万円、2005年度に市営交通案内をコールセンターに吸収したことにより約1000万円という計算だ。

 齋田課長によると、コールセンターの今後の計画として、区役所の代表電話のコールセンターへの一元化、外国語対応なども検討しているという。また、コールセンターの応答記録やQ&A集は、庁内LANで職員が閲覧できるようになっているが、具体的な活用はこれからであり、「今後は、このデータを生かして、職員の業務知識をより向上させ、さらに施策に反映させるような仕組みを作り上げていきたい」と齋田課長は語る。

 そのほか、自治体コールセンターの番号の統一も総務省に提案している。「キャラクターの『にこりん』を使うなどして市民に親しみを覚えてもらうような施策を行っても、コールセンターの番号(045-664-2525)自体が長くて覚えにくいことにはかわりない。米国では、行政コールセンターの受付番号は『311』で統一されている。自治体コールセンターの番号を統一して欲しいと総務省には要望をしているところだ」(齋田課長)という。