■電子申請をスタートさせたものの、多くの自治体で利用実績が伸び悩んでいる。システムを共同アウトソーシングするなどしてコストを抑えたとても、使われなくては意味がない。一方で、施設予約やイベントの申し込みなど、ネット経由でも人気の高い申請メニューもある。どんな申請
を電子化すれば住民ニーズに合致するのか、とりあえずの結果が見え始めてきたといえそうだ。(塗谷隆弘、広岡延隆、黒田隆明)
※ この記事は『日経BPガバメントテクノロジー』第9号(2005年10月1日発行)に掲載されたものです。
電子申請の利用が進まない。総務省が仕様を策定した汎用受付システムに準拠した共同利用のシステムに限って見れば、そう言われても仕方ない状況だ。表1-1は今年4月までに都道府県および市区町村で電子申請システムの共同利用を開始した団体にアンケートを取ったものだ。電子申請の受付件数の伸び悩みが浮き彫りとなっている。
■表1-1 電子申請システムを共同運用している 団体と実績(件数はサービス開始時からの累計)
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都道府県名 |
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福島県 |
サービス開始年月日 |
2005/1/11 |
参加団体数 |
県(1)市・区(10)町(38)村(15) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
県(68)件 市区町村(10)件 |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
県(0)件 市区町村(48)件 |
年間運用コスト |
1億4300万円 |
茨城県 |
サービス開始年月日 |
2004/5/25 |
参加団体数 |
県(1)市・区(25)町(27)村(9) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
県(763)件 市区町村(76)件 |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
県(3)件 市区町村(91)件 |
年間運用コスト |
約1億4000万円 |
東京都 |
サービス開始年月日 |
2005/1/25 |
参加団体数 |
都(1)市・区(46)町(3)村(2) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
─ |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
─ |
年間運用コスト |
─ |
山梨県 |
サービス開始年月日 |
2004/4/21 |
参加団体数 |
県(1)市・区(12)町(16)村(10) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
県(202)件 市区町村(93)件 |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
県(0)件 市区町村(72)件 |
年間運用コスト |
約2億2801万円 |
愛知県 |
サービス開始年月日 |
2004/7/20 |
参加団体数 |
県(1)市(32)町(34)村(5) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
県(1530)件 市区町村(29)件 |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
県(0)件 市区町村(67)件 |
年間運用コスト |
約1億3800万円 |
島根県 |
サービス開始年月日 |
2004/10/1 |
参加団体数 |
県(1)市・区(8)町(18)村(3) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
県(279)件 市区町村(7)件 |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
県(0)件 市区町村(17)件 |
年間運用コスト |
約1億5399万円 |
岡山県 |
サービス開始年月日 |
2003/8/1 |
参加団体数 |
県(1)市・区(9)町(14)村(1) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
県(2308)件 市区町村(522)件 |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
県(35)件 市区町村(2)件 |
年間運用コスト |
1400万円 |
広島県 |
サービス開始年月日 |
2004/11/20 |
参加団体数 |
県(1)市・区(2) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
県(350)件 市区町村(109)件 |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
県(0)件 市区町村(0)件 |
年間運用コスト |
約2億1748万円 |
徳島県 |
サービス開始年月日 |
2004/8/2 |
参加団体数 |
県(1)市・区(7)町(25)村(3) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
県(503)件 市区町村(─)件 |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
県(手続きなし)市区町村(─)件 |
年間運用コスト |
約8000万円 |
高知県 |
サービス開始年月日 |
2002/10/1 |
参加団体数 |
県(1)市・区(2)町(25)村(10) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
県(16)件 市区町村(57)件 |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
県(手続きなし)市区町村(手続きなし) |
年間運用コスト |
約3400万円 |
香川県 |
サービス開始年月日 |
2004/7/28 |
参加団体数 |
県(1)市(7)町(27) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
─ |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
─ |
年間運用コスト |
約1億4721万円 |
熊本県 |
サービス開始年月日 |
2005/3/1 |
参加団体数 |
県(1)市(14)町(43)村(11) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
─ |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
─ |
年間運用コスト |
2億4000万円 |
大分県 |
サービス開始年月日 |
2004/10/1 |
参加団体数 |
県(1)市・区(12)町(11)村(2) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
県(1349)件 市区町村(─)件 |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
県(14)件 市区町村(─)件 |
年間運用コスト |
8762万7240円 |
鹿児島県 |
サービス開始年月日 |
2004/10/1 |
参加団体数 |
市・区(16)町(51)村(5) |
申請件数 (公的個人認証は不要) |
県(30)件 市区町村(76)件 |
申請件数 (公的個人認証が必要) |
県(0)件 市区町村(0)件 |
年間運用コスト |
─ |
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※2005年8月から9月にかけてファックスまたはメールでアンケート票を送付した。調査対象とする電子申請システムは、総務省の「申請・届出等手続に関する汎用受付システムに準拠したもの」。2005年4月以前に共同化を開始した団体についてまとめた。「─」は無回答。参加団体数と申請件数は2005年7月末時点。 |
電子申請(以下、断りのない場合「電子申請」とは汎用受付システムに準拠したシステムによるものを指す)は、少なくとも現時点では利用者ニーズに合致しているとは言い難い。利用が少ないことから、財政部門から投資対効果を問われ、苦しい立場に立たされている担当者もいるようだ。