総務省と地方自治情報センター(LASDEC)は、国内の全市町村に対して行ったシステム費用の調査結果を12月8日にLASDECのWebサイト(http://www.lasdec.nippon-net.ne.jp/rdd/kyo/k-chousa/)で公開した(関連記事)。

 「市町村の業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査」と題された調査は、2005年9月から11月にかけて、全国2172市区町村のうち、10月1日から12月31日までに合併する市町村を除く1965市区町村に対して行われた。各市区町村における住民情報関連や財務会計など28システムを対象に、システムの属性、導入形態と構築・運用の費用を調査したもの。12月7日時点で1785団体(90.8%)が回答し、年内までに全市区町村から回答を得る見込み。12月8日は集計済みの1579団体について公表する。集計が済み次第、データは随時更新する予定。

 回答の結果は28システムそれぞれについて、システムごとの各市町村の構築費用や保守・運営費用などをPDF形式のファイルで公開する。地方自治体や大学など研究機関に対しては、調査結果をExcel形式で提供し、各自治体の費用分析に使えるようにする。

 調査結果のデータを見てみると「小規模自治体ほど相対的に費用が割高になることが分かる。また人口規模や産業構成などが似たような団体でありながら、時にはベンダー(名前は伏せてあるが記号で表示)が同じでも、システム費用に大きなばらつきが見られる」(総務省自治行政局自治政策課の牧慎太郎情報政策企画官)という傾向が見られるという。一つには自治体のベンダーとの交渉能力の差が現れているといえるだろう。ただし、公開されたデータを見てみると、構築費用、運用費用のどちらかを0円としている自治体が存在する。これは、システム構築時に運用保守契約も一括して調達したものや、ハードウエア調達の契約をすべてレンタルにしたことで、システム全体の費用が運用費用に算入していることが考えられ、自治体間データは単純比較ができない側面もある。

 総務省は、複数の自治体が共同でシステムをアウトソーシングして運用することでコストダウンを図る「共同アウトソーシング事業」を推進しており、今回の調査結果が自治体間における共同アウトソーシングの検討材料になることを期待する。「自分たちのシステム費用が高いと自覚すれば、今後、自分たちより安く運営している類似自治体に問い合わせて、どうすれば良いのかを調べるだろう。そのような形で自治体同士が横のつながりを持って、システムの規模、体制などの見直しにつながれば良いと思う。類似自治体同士のコミュニケーションが図られれば、業務の見直しや標準化、さらには共同アウトソーシングが検討されるようになるだろう」(牧企画官)。総務省は今後、この調査結果を踏まえたシンポジウムを2006年1月から2月にかけて全国で展開し、また調査を来年度以降も継続的に実施したいとしている。(塗谷隆弘)