早稲田大学電子政府・自治体研究所(所長:小尾敏夫早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授)は、12月1日に2006年版の世界主要32カ国の電子政府ランキングを発表した。今回で第2回目となる調査では、1位が米国、2位がカナダ、3位がシンガポールとなった。この上位3カ国は昨年と同順位。日本は前回の7位から4位に浮上した。

■表 第2回早稲田大学電子政府ランキング 上位10カ国
順位 国名 インデックス
1 米国 1.000
2 カナダ 0.968
3 シンガポール 0.967
4 日本 0.962
5 韓国 0.958
6 ドイツ 0.956
7 台湾 0.955
8 オーストラリア 0.953
9 英国 0.946
10 フィンランド 0.916
※ 全ランキングを含む早稲田大学の発表資料はこちら

 調査は、調査対象各国の電子政府の進ちょく状況に関し、電子政府の資料やアンケート調査などから以下の6つの観点から28の指標で5段階の評価を行った。
  • ネットワーク・インフラの充実度
  • 電子申請、ユーザー対応などオンラインサービス・インタフェース
  • マネジメント最適化への行政EA(エンタープライズ・アーキテクチャ)などの導入状況
  • Webサイトの情報公開度、更新頻度や多言語対応などの状況
  • CIO(最高情報統括責任者)の導入状況
  • 国家戦略、広報、法整備など電子政府の促進状況

 さらに、現地調査や国際会議でのヒアリング、複数の調査者による評価を経て各国特有の事情をふまえた上で、総合的に点数と偏差値評価を行った。

 日本はネットワークインフラ(5位)、基幹システムの最適化や統合ネットワークサービスの構築(3位)、CIOの導入状況(2位)など、各評価項目のバランスがよく、2位のカナダや3位のシンガポールとの差は昨年の調査と比べて縮まってきている。ただし、オンラインサービスの利用状況やCIOの実質的な役割の確立などで改善の余地があると、日本の電子政府の課題も指摘している。

 日本でも利用率の低さが指摘されている電子申請については、「ランキング1位の米国、2位のカナダを除き、各国とも電子申請は始めたばかりで利用率が高いという国はあまりない。米国、カナダとも、ユーザーオリエンテッド(市民のニーズを優先)の考えが徹底しており、それが利用率の高さに反映しているのではないか。また、両国とも“小さな政府”を国家目標として、電子政府についても大胆な目標値を掲げている点も特徴と言える」と調査をまとめた小尾教授はコメントした。

 また、調査によると、全体的には下位各国でもインフラ整備、オンラインサービスの導入、行政改革、Webサイトの更新、CIOの導入、国家戦略においては進展が見られ、上位各国との格差は狭まる方向に向かいつつあるという。一方、Webサイトの多言語対応や電子投票、IT戦略や法体系・組織の整備に課題を残す国が多いとしている。

(塗谷隆弘)