東海大学政治経済学部(神奈川県平塚市)は、2005年10月23日から11月6日まで携帯電話を使った地域通貨「ポゴ」の実験を実施する。同大学政治経済学部NPO/NGO活動センターや神奈川県秦野市の小田急東海大学駅前商店会などが実験に参加する。

 10月23日(雨天の場合は30日)に集まった学生や地域自治会などのメンバー約100名が川掃除や落書き消しなどのボランティアに参加し、その対価として1000ポゴの通貨を参加者の携帯電話に提供する予定。携帯電話はインターネットに接続できるならば機種は選ばない。実験に参加するには事前登録などは必要なく、携帯電話のメールアドレスとアンケートに答えるだけで参加できる。携帯電話を使った地域通貨システムは、同大電子情報学部情報メディア学科辻研究室が開発した。

支払い側の携帯電話の画面
支払い側の携帯電話の画面
受取り側の携帯電話の画面
受取り側の携帯電話の画面

 ボランティア終了後、配布を担当する係の人が口頭でパスワードを参加者に伝える。携帯電話からポゴの特設サイトにアクセスし、教えられたパスワードとボランティア項目を入力すると一律1000ポゴが配布される。ポゴを使用する際には、利用する店で店のIDを教えてもらい、そのIDとポゴの額を入力する。

 11月6日まで(実験が30日になった場合は同13日まで)東海大学駅前商店街の加盟店舗で1ポゴ=1円のレートで買い物に利用できる。商店街の各店は、使用されたポゴを駅前商店街協会と東海大学NPO・NGOセンターで現金に精算できる。学生にはボランティアの啓蒙を、地域商店街には学生の利用促進、大学は地域通貨の利用に関するデータの収集というメリットがそれぞれもたらされる。「学生はあまり地元の商店街を利用せず、逆にゴミ出しや自転車の放置、落書きなどで地元の商店会や自治会との間でトラブルが起こっている。これらの問題を解決するために、ほとんどの学生が持っている携帯電話を活用した地域通貨がどれだけ役立つか試してみたい」(東海大学政治経済学部政治学科の小林隆講師)。

 ボランティアの促進と商店街や自治体単位での地域活性化を目指す地域通貨の取り組みは、兵庫県姫路市の「千姫」や神奈川県大和市の「ラブス」などの例がある。「千姫」「ラブス」などの地域通貨は、一般的に換金が不可能なのに対して、今回のポゴは地域通貨を受け取った商店が換金可能という点が特徴だ。「最初のうちは換金性がないと一般の人には地域通貨は信用されにくいと考える。換金ができないボランティアベースの地域通貨では、ボランティア経験がない人から協力を得るのは難しい。期間限定で換金可能な地域通貨のイベント的な利用を繰り返して、徐々に地域通貨やボランティアの考え方が浸透させることによって、地域通貨自体の信用性が高まれば、将来的に換金性を下げてもうまくいくのではないかと思う」(小林講師)。実験の結果については小林講師の研究室が年内にレポートにまとめる予定。(塗谷隆弘)