電子申請などを行うときに利用する公的個人認証サービスで、市町村役場で電子証明書の発行を受けたときに配布される「利用者クライアントソフト」に不具合があることが判明した。ソフトをインストールすると、一部のアプリケーションが動作しなくなる可能性がある。

 このソフトは、総務大臣から電子署名に係る地方公共団体の認証業務に関する法律に基づく指定認証機関に認定された自治体衛星通信機構が、公的個人認証サービスを申し込んだユーザー全員に市町村の窓口を通じて配布している。パソコンで自分の住民基本台帳カードに格納された情報の内容を見たり、電子申請で電子署名を行う場合に使われる。総務省の発表によると、2005年8月末時点で公的個人認証の電子証明書の発行枚数は9万4767枚である。

 この不具合は、既に8月末時点で個人が開設しているブログで明らかになっていた。自治体衛星通信機構でも、先週の時点で不具合を把握していたことが本誌の電話取材で明らかになった。にもかかわらず、9月15日19時時点では同機構のWebサイト(http://www.lascom.or.jp/)では不具合情報を公表していない。同機構は、情報を公表していない理由について「自治体側の対応窓口が整っていないため」としている。

 また、同機構によると既に不具合の対応方法について都道府県には通知済みだという。しかし、公的個人認証サービス都道府県協議会のサイト「公的個人認証ポータルサイト」(http://www.jpki.go.jp/)には不具合情報に関する告知はなされていない。編集部が確認した範囲では、不具合を告知している自治体の電子申請サイトは見当たらなかった。

 今回の問題で、公的個人認証関連での不具合情報を把握してから、その拡散を押さえるための告知を行うまでの、全国的な緊急体制の見直しが求められることになるだろう。(塗谷隆弘)

<追記> 9月16日に続報を追加しました。

不具合情報が開示されないまま16日まで利用者に配布--公的個人認証利用者クライアントソフト