三原氏写真

三原徹(みはら・とおる)

足立区立五反野小学校校長

1948年岡山県倉敷市生まれ。1976年ベネッセコーポレーション(旧福武書店)入社。通信教育事業、教育ソフト開発事業等の部門で従事。経営企画本部・全支社事務局長職のとき、足立区教育委員会の民間人校長に応募。2004年4月より現職。朝日新聞第2東京面で毎週土曜に「新校長日記」を連載中。

 五反野小学校は、2004年11月より地域運営学校(コミュニティ・スクール)としての指定を受けました。地域運営学校とは、地域の保護者や住人が学校の予算や人事など学校の運営に一定の範囲内で意見を述べることができる学校で、各区市町村の教育委員会が個別に指定します。2004年9月の「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」の改正で制度化されました。

 私が2004年4月に五反野小学校校長に着任する前は、児童向けの教材を開発・販売するベネッセコーポレーションに在籍していました。小学校は入学式、春の遠足、夏休み、運動会、秋の遠足に卒業式と、向こう一年の間の行事が完全に決まっていて、そのスケジュールに従って淡々と日々の業務が流れていきます。民間企業にいると3カ月先には何が起きるかはわからない場合が多く、最初はそのギャップに面食らったものです。

■学校のWebサイトをブログ形式に

 五反野小学校のWebサイトは、(多くの学校サイトもそうだと思いますが)このようにあらかじめ決まった行事があるたびにその内容を伝えるだけのものでした。運営もパソコンに詳しい先生に任せきりでした。今年の春にその先生が定年退職することになり、それを機に学校のWebサイトをブログ形式にしました。ブログにすることで、Webサイトの更新に特別なツールや知識は必要なくなりました。

 ブログは、教職員と学校管理職が投稿に必要なIDとパスワードを持ち、いつでもブログに投稿することができます。投稿された記事に対して、校長か副校長(通常の学校の教頭にあたる)が承認をするとそれが公開される形になっています。

■更新の頻度を上げて、特別でない日常を淡々と記す

 リニューアル後は、特別な行事の有無にかかわらず更新の頻度を上げるよう心がけました。例えば、授業がある普段の日には毎日給食担当の先生に今日の献立を掲載してもらうことにしました。また、今日は庭のアサガオの花が咲いた、今日は暑いです。子供たちがプールではしゃいでいます、ちょうちょがさなぎから羽化しましたなどといった、取り立てて変りのない普通の学校の一日の様子を掲載するようにしています。

 保護者は、自分の子供が学校にいる間、子供は学校で今何をしているんだろうと思っています。そのようなときにブログ形式の学校のWebサイトを会社や家から見れば、今日の学校の様子が見て取れるわけです。いつ見ても何か新しい内容があるWebサイトにすることで、保護者に常に学校に関心を持ってもらえるようになればと考えたのです。

 無論、平凡な日だけでなく行事があった時にもWebサイトは更新します。臨海学校に行ったときには、行きのバスの中でバスの中ではしゃいでいる子供たちの様子を撮った写真をアップし、臨海学校に着いたら「無事到着しました」と投稿すると言った具合に、ほぼリアルタイムに実況さながらの情報発信をしました。保護者からは「まるで私たちも一緒に臨海学校について行ったみたい」と好評でした。

■地域の人にもぜひ見てもらいたい

 また、保護者だけでなく地域の人たちにもぜひWebサイトを見ていただきたいと思っています。学校運営に保護者や地域の人たちが積極的に関わってもらうようにするためには、学校のありのままの姿を、自分たちのこととして受け止めてもらう必要があります。今までのように閉鎖的な上に、抽象的な教育理念を伝えるだけでは、保護者も地域の人たちも、学校に対して評論家のような突き放した態度でしか関わってくれません。

 「今日は雨が降って学校で雨漏りが起こっています」とブログに書いたら、地域の人が「それなら修理してあげよう」とやってきてくれるような、学校と地域住民の関係を作り出すには、いつ見ても何か新鮮な内容があり、いつでも立ち寄りたいWebサイトを作ることが重要です。その一方、校長はどこからどこまでの情報を公開するか、しっかりと最終決定権を握る必要もあります。そのさじ加減はなかなか難しい点があります。

 ちなみに、ブログではありますが、コメントやトラックバック機能は使っていません。子供が歩いて来られる距離に学校があるので、ご意見は直接学校に言いに来れば良いわけですから。(談)