■「GPMC(グループ・ポリシー管理コンソール)」は,Active Directoryのグループ・ポリシーを一元管理するツールである。Active Directoryの中でも,使い難かったグループ・ポリシーの操作が簡単に行えるようになると,リリース前から評判が高かった。
■ここでは,GPMCを実際に使ってみて評価するため,インストールから始めて,GPO(グループ・ポリシー・オブジェクト)の作成,GPOのコピーやインポート,スクリプトの実行などの使い勝手をテストしてみた。
■GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)が統合されて,使いやすくなったほか,GPOとGPOリンクが明確に区別されているので,管理者が混乱せず利用できる。一方,WMIフィルタの設定をドメインを超えて設定する場合など,高度な利用には手作業が欠かせない。

(福田真紀子=グローバル ナレッジ ネットワーク)

 グループ・ポリシーは,Active Directoryの目玉機能の1つだ。グループ・ポリシーを利用すると,Active Directoryドメインにあるユーザーやコンピュータの設定を,サイト,ドメイン,組織単位(OU)といった区分けに沿って管理者が強制的に決めることができる。大規模なWindowsシステムで,部署や事業所,役職などに合わせて設定を変えるときなどに利用される。

今まで使い難かったグループ・ポリシー
 ただし,グループ・ポリシーの使い方には気を付けなければならない。不用意に設定してしまうと管理し難い構成になり,最終的な結果が分かりづらくなってしまう。また,Windows 2000のグループ・ポリシーには,レポート機能がなくトラブル・シューティングがやりづらい,設定のバックアップとリストア機能がない,などの欠点が指摘されていた。

 他にも今までのグループ・ポリシーには,Active Directoryユーザーとコンピュータ,Active Directoryサイトとサービス,グループ・ポリシー・エディタ,ACLエディタ,制御の委任ウィザードなど,様々なツールがあって種類が多過ぎたのも欠点だった。従って,これまでのグループ・ポリシーは,システム管理のためには必要だが,必ずしも使い勝手の面では便利とはいえなかった。

5大特徴を備えたGPMC
Windows 2003だけでなくWindows 2000も管理

 こうした問題を解決するために,Windows Server 2003では,企業全体のグループ・ポリシーを集中管理する「グループ・ポリシー管理コンソール(Group Policy Management Console)」(以下,GPMC)が提供されており,インターネットから無償で入手できる。GPMCは,複数のツールに散在する既存のグループ・ポリシー機能を統合し,大幅に使いやすくするユーザー・インターフェースが提供されている。Windows Server 2003に加えて,Windows 2000のActive Directoryドメインも管理できる。

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図1●GPMCのダウンロード画面


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図2●GPMCのインストール
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図3●既存のツールの[グループポリシー]タブ
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図4●「グループ・ポリシーの管理(GPMC)」のメイン画面
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図5●ドメインの表示
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図6●[オプション]画面で信頼性の検出を無効にする

 また,GPMCでは以下のような機能が提供されている。
(1)GPO(Group Policy Object)のバックアップ/リストア/インポート/コピー/張り付け
(2)WMI(Windows Management Instrumentation)フィルタのインポート/エクスポート/コピー/張り付け
(3)グループ・ポリシー関連のセキュリティ管理の簡素化
(4)GPO設定と「ポリシーの結果セット」データのHTMLレポート機能
(5)ポリシー関連のスクリプト機能

インターネットから無償で入手可能
 ここからは,GPMCを使用してどのような作業ができるのか,実際に使い勝手を試してみよう。最初はGPMCの入手である。

 GPMCは,マイクロソフトのWebサイトで公開されており,Windows Server 2003のユーザーであれば無料でダウンロードできる(該当サイト)。また,同社ダウンロード・センターのWebページで,「GPMC」と入力して検索すると,すぐに目的のツールが見付かる(図1)。

 GPMCのダウンロード画面で,言語を選択し,[ダウンロード]リンクをクリックしてダウンロードを開始すると,「gpmc.msi」というファイルをダウンロードできる。ファイル・サイズは5Mバイト弱なので,短時間でダウンロード可能だ。

GPMCをインストールすると 既存ツールの[グループポリシー]タブが消える
 次に,ダウンロードしたGPMCをインストールしてみよう。GPMCは,Windows Server 2003またはWindows XP Professionalにインストールできる。Windows XPにインストールするときは,事前にService Pack 1と.NET Frameworkをインストールしておかなければならない。また,Windows XP Professional Service Pack 1に,GPMCをインストールするときは,パッチの「QFE 326469」も同時にインストールされる。

 gpmc.msiのアイコンをダブル・クリックするなどして実行すると,[Microsoftグループ ポリシー管理コンソール セットアップ ウィザード]が開始される。インストール自体は非常に簡単で,使用許諾契約書に同意するだけでよい(図2)。

 インストールが完了すると,[管理ツール]に[グループポリシーの管理]ツールが追加される。これがGPMCだ。GPMCをインストールしたマシンでは,以後[Active Directoryユーザーとコンピュータ]や[Active Directoryサイトとサービス]の[グループポリシー]タブは利用できなくなり,グループ・ポリシーの管理機能はGPMCから実行することになる。[グループポリシー]タブそのものがなくなるのではなく,その画面にGPMCを起動させるボタンが付いている(図3)。もちろん,GPMCをインストールしていないコンピュータでは,既存の[グループポリシー]タブを使用して管理できる。ちなみに,Windows 2000にもインストールを試みたが,エラーが表示されてインストールできなかった。

あらゆる操作が1つにまとめられたGPMCのメイン画面
 [管理ツール]-[グループポリシーの管理]から,GPMCを起動すると,現在ログオンしているフォレストおよびドメインが表示される(図4)。ここで,サイトやOUの管理,ドメインにリンクしているGPOの管理などが行える。GPMCで他のドメインを表示するには,[ドメイン]を右クリックして,現れたメニューの中の[ドメインの表示]を選択する。このようにすれば,1つの管理コンソールから複数のドメインを管理することも簡単にできる(図5)。

 複数のフォレストがある場合は,ちょっと工夫が必要だ。GPMCは,既定の設定ではログオンしているユーザーのフォレストとドメインが表示される。他のフォレストを表示するには,フォレストを追加する必要がある。

 フォレストを追加するには,フォレスト間に双方向の信頼関係がなければならない。ただし,GPMCのメイン画面から[グループポリシーの管理]を右クリックし,現れたメニューから[表示]-[オプション]を選択すると,[オプション]画面が現れる。この[全般]タブで[信頼性の検出を有効にする]チェック・ボックスをオフにすれば,一方向の信頼関係であっても追加できるようになる(図6)。GPMCでは,Windows 2000のフォレストも管理できるが,Windows 2000のフォレストを追加した場合は,[グループポリシーのモデル作成]や[グループポリシーの結果]のノードのように,Windows Server 2003になって追加された機能にはアクセスできない。