2005年1月,私は米SanDiskと米M-Systemsが推進する「U3規格」のUSBフラッシュ・ドライブ技術を紹介する記事を書いた(関連記事)。U3の目標は,USBフラッシュ・ドライブ上で各種アプリケーションを動かすための標準規格とAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を提供するとともに,ドライブ上のデータのセキュリティを確保することにある。

 上記コラムで私は,U3が広く普及したUSBフラッシュ・ドライブを最大限に活用する面白い方法を提案したと書いた。さらにU3ドライブがセキュリティを確保する方法に懸念が残ると指摘した。それからほぼ1年がたって,U3の技術にはいろいろなことが起きた。U3ドライブで「持ち運び可能なビジネス・アプリケーション」がついに開発されて,U3ドライブの安全性がますます重要になっている。

 U3のWebサイトを見ると,U3をサポートしているベンダーの数が増えていることや,U3に対応したスマート・ドライブ製品と対応アプリケーションがリリースされていることがはっきり分かる。

 半ダース以上のハードウエア・ベンダーが積極的にU3規格をサポートしており,4Gバイトまでのドライブ容量の製品を提供している。だがそれ以上に興味深いのは,最近登場し始めたソフトウエアの多彩さである。U3ドライブにプリインストールされて出荷されている場合も多い。様々なアプリケーションが利用可能になっており,これらのアプリケーションの多くが,U3のWebサイトで無償あるいは安価にダウンロードでき,評価版も入手可能である。

 もちろん,U3用のアプリケーションの数は非常に多いとはいえない。ただし,ユーザーはかなりの数のアプリケーションを,USBフラッシュ・メモリー・デバイスで使えるようになっている。代表的なものとしては,スマート・ドライブ上に保存したデータを保護するツール,電子メールの同期ツール,メディア・プレーヤ,Webブラウザ,そしてインスタント・メッセンジャーのクライアント・ソフトなどがある。どのアプリケーションもコンピュータにインストールせずに,フラッシュ・ドライブから直接実行できるということがキー・ポイントである。

アプリケーションのインストールは不要
 U3ドライブ上のデータとアプリケーションのセキュリティが確実に保たれるならば,こうしたドライブは企業の使用にも堪えるだろう。例えば,U3ドライブに,Microsoft Officeのユーザー設定とともに,ユーザーIDを管理するアプリケーションやユーザーのデータ・ファイルを保存すれば便利だ。仕事をするときは,そのデバイスをコンピュータに差し込むだけで,ドライブに格納されたアプリケーションとデータを使い,そのコンピュータを好みの状態に自動的設定できる。ホテルのビジネス・センターやインターネット・カフェでコンピュータを使う場合にもすぐ応用できる。このようなものをU3では「パーソナル・ワークスペース」と呼んでいる。

 先日,Skypeのインターネット電話が,U3で利用できるようになったという発表もあった。U3ドライブ上にSkypeをインストールすれば,コンピュータにSkypeをインストールしなくても,Skypeネットワークを介して他のSkypeユーザーと通話できる。SkypeはU3ドライブに打って付けのアプリケーションである。出張中のユーザーが必要とするアプリケーションの典型だろう。

 このほかU3ドライブに入れて役に立つものとして,電子メール・アプリケーションやVPN(仮想プライベート・ネットワーク)クライアント,データ・バックアップ・ツール,ID管理アプリケーションといったものが挙げられる。これらをユーザーが携帯型ストレージと一緒に持ち歩ければ大変便利だ。

 U3ドライブによって提供される可能性があるツールは,非常に広い範囲にわたるだろう。しかし私はまだ,そのセキュリティ・モデルに関して懸念を抱いている。私が欲しいのは,企業環境で使える,ストレージ管理と認証技術を統合したツールである。U3ドライブ向けにこのレベルのセキュリティを提供できるセキュリティ・アプリケーションは,U3のWebサイトの情報によればまもなく登場する。とはいえ,そうしたセキュリティ・ツールが現実に登場するまでは,企業ユーザーがこのようなデバイスを使ってよいとは言えないと思う。