2005年5月のことになるが,私は米MicrosoftでWindows Server部門を担当する上級副社長のBob Muglia氏に取材した。いくつかの話題について話したが,私が一番興味を持ったのは,Windows Server 2003がうまく戦えていない市場に関する話だった(関連記事)。ご想像の通り,そういう市場はほんの少ししかないが,その時点で同氏はUNIXシステムのマイグレーションと,ハイパフォーマンス・コンピューティングの2つの分野を,LinuxがMicrosoftよりも上回っている分野として,特に強調していた。

Windowsが失敗した分野
 「Windowsの歴史の中でわれわれが一番失敗したと思う分野は,ハイパフォーマンス・コンピューティングだ。しかし,われわれはその分野へ引き続き投資をしている」とMuglia氏は語った。米Microsoftは9月に「Windows Compute Cluster Server 2003」の最初のベータ版をリリースしたが,これはまさにその市場を狙ったものだ。そして11月中旬に開催された「IT Forum 2005」で同OSのベータ2を発表した。最終版は,2006年前半に出荷する予定だ。

 Compute Cluster Serverの目的は,非常にシンプルである。「ハイパフォーマンス・コンピューティングのメインストリームになる」というもののだ。「今日の主なユーザーであるアカデミックの世界について考えるなら,それはコンピューティングのすべてを支配していた白い巨塔の最後の遺物の1つだということに意義はないだろう。ハイパフォーマンス・コンピューティングは高くつくし,複雑だし,管理が難しい。Microsoftは低コストで簡単に使えて,導入と管理の簡単な企業向けシステムが専門の会社であり,ようやくはっきりと市場に打って出る機会が熟したと見ている」と同氏は語った。

HPC市場が拡大する
 同社はちょうどよい時期に動いたようだ。ギガフロップス当たりのコストは低価格だが高性能な既製のハードウエアによって常に下がり続けたおかげで,今やPCベースのサーバーのクラスタを安価に構築できる。市場の末端への販売を促進するために,MicrosoftはCompute Cluster EditionをWindowsの管理者にとって習熟しやすく,導入が簡単で,Active Directory(AD)と統合するように設計した。

 そして,こうしたシステムの大半は5万ドル以下の市場で販売される予定である。つまり,スーパーコンピューティングの世界を全く新しい,そしてより大きな市場として開拓することになる。Microsoftがそうすることで,科学者や研究者,技術者は自分の仕事に集中できるようになり,ITの管理者たちが悩まされたような時間の無駄はしなくて済む。

 私は典型的なスーパーコンピューティングのソリューションによって支援されてきた研究や,エンジニアリングや教育市場について,完璧に理解しているとは言えない,しかし,Microsoftは既にユーザーが期待するようなものと同じカスタム・アプリケーションがCompute Cluster Editionで稼働できることを示した。こうしたアプリケーションは,バーチカルな分野,例えば製造,自動車産業,航空産業,生命科学,そして石油やガスなど,産学双方の市場を狙っている。

Linuxに対抗できる価格設定
 Microsoftは,まだこのOSの価格とライセンス方法を発表していない。多分,来年までは発表しないだろうが,同氏が私に語ったところでは,既存のLinuxソリューションと競合できる価格にするという。その性能は,Linuxシステムとも十分競争できるようになるので,Microsoftは導入と管理面での優位性や,OEM,ISVとの緊密な関係がLinuxとの競合で後押しになるだろうと期待している。